岩崎愛『TSUBOMI』ｵﾌｨｼｬﾙ･ｲﾝﾀﾋﾞｭｰ
蕾が解けるように自分が変化した感覚がある
前作『It's Me』の時って､これまでやってきたことの総決算にして自己紹介みたいな作品だったと思うんです｡でも､今作はもっと前に行こうっていう想いが歌われているｱﾙﾊﾞﾑだなと思うんです｡
岩崎前のｱﾙﾊﾞﾑの時みたいに歌とｷﾞﾀｰだけだと飽きてきた自分もいるんですよね｡ちょっとだけ｡歌うことはずっと好きだけど､何か新しいことがしたいなと思っていて｡その音楽的な興味が広がったのはありますね｡
だからこそ､もっと自由に､もっといろんなことに挑戦する必要があった｡
岩崎食わず嫌いにしていた打ち込みやもやってみたら面白くて､自分の歌には生音しか合わへんって思ってたけど､全然そんなことないし……っていうのを自分でやってみてはじめてわかったんです｡
そういうﾓｰﾄﾞが出てきたんですかね｡歌詞ももっと抽象的で普遍的なﾃｰﾏをｽﾄﾚｰﾄに歌うものになってきていますよね｡
岩崎『It’s Me』では感情丸出しで｢これが私なのよ！｣みたいな感じで描いてたんですけど､『TSUBOMI』は気持ちがいい音の言葉を選んで､中身の意味はないみたいな感じにしてもいいのかなって思って｡そういう変化がありましたね｡
今回､具体的に中身のある歌詞というか……中身はあると思うんですけど､わかりやすくｽﾄｰﾘｰﾃﾘﾝｸﾞされているのは｢Happy Friday Night｣ぐらいですよね｡
岩崎そうですね｡この曲に関しては｢ﾊﾊﾊ｣って笑える曲になればいいと思って(笑)｡働く人たちにとっての応援歌になればいいなって｡
｢遊覧船｣なんかは歌謡的な世界観もあって､日本的な情感がありますね｡
岩崎今作に関しては情景が浮かぶことを大事にしたかったんです｡綺麗だなとか､夜かな？昼かな？とか､こういう光の感じかな､とか｡情景が音と混じり合ったら気持ちいいっていうところにたどり着きたかったんです｡
でも､前作だと｢Woman's Rib｣とかに顕著でしたけど､世界そのものに対する憤りや想いみたいなものも岩崎さんは書けるわけで｡それがより普遍化された形で楽曲として結実したのが｢HAGANE｣だと思うんですよね｡これ本当に大名曲で｡大ﾋｯﾄする曲って歌詞の強度が時代を超えるじゃないですか｡この普遍性の高さはすごい｡
岩崎意識的にそうしているのか､どうかはわからないんですけど｡今は､そういうﾓｰﾄﾞなんだと思います｡説明じゃないことをしたいんだと思う｡でも､もっといい歌詞を書きたいって思ってるんですよね……｡こういうことを書きたいなっていうﾃｰﾏがあっても､うまく曲とﾏｯﾁしないことが多くて｡音にﾉる言葉を紡いでいくのが難しいなって｡
音と言葉の関係は､特に世界をｽﾀﾝﾀﾞｰﾄﾞに見据えると日本語でﾎﾟｯﾌﾟｿﾝｸﾞは書けるのかっていうずｰっと先人たちが葛藤してきた悩みとも重なってきますよね｡
岩崎英語ってやっぱり耳障りがいいんですよね｡今作でも英語を結構使ってるんですけど､今､ここで同じ意味を日本語で歌うより英語で歌った方が音馴染みがいいなって思うようになったことが多くて｡意味なんてなくても別にいいなって思えたんです｡
日本語の方が意味や感情はしっかりと伝えられるけど､英語だと音との馴染みがいい｡ｼﾞﾚﾝﾏですね｡
岩崎もしかしたら､抑えたいのかもしれないです｡高まっている感情みたいなものを曲の中で出したくないんです｡わざと英語で濁らせて､音と馴染ませたい｡気持ちの大きさばっかりではなくて､歌詞を読んだ時に｢何いうてるかわからへんけど､ここまでの流れで考えるとこういうことかな｣ぐらいに抑えたい｡
あくまでも､音重視で､意味やﾃｰﾏはその中で聴いた人にほのかに見えるぐらいでいいと｡でも､やはり『TSUBOMI』を聴くと､そんな風に抑えられているからこそ､より強く込めた想いが伝わってくる気がするんです｡
岩崎基本的にいつも孤独ではあるんです｡でも､今までやってきたことが絶対に間違ってないなってﾊｯと想った時があって､それが｢HAGANE｣になったんです｡久しぶりにすごくﾎﾟｼﾞﾃｨｳﾞになれたんです｡その元からあるﾈｶﾞﾃｨｳﾞなところと､確信を覚えたﾎﾟｼﾞﾃｨｳﾞな感情を情景で表したいなって想ったんです｡
ﾀｲﾄﾙの『TSUBOMI』も､まさにそういう想いが込められているのかな､と｡不安と希望がないまぜになっている､まだ花開く前の蕾(つぼみ)をｱﾙﾊﾞﾑに冠した｡
岩崎自分の中ですごく変わった感じがあるんです｡音に関してのこだわりが強くなり始めて､まだ咲いていない蕾のような解け始めたばかりの､自分が作った曲たちっていう｡新しくいろんなものに感化されてやり出した時の曲を集めたので『TSUBOMI』って名付けたんです｡
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