--2006年にはNANO-MUGEN FES.で活動再開後初の来日を果たしています。その時の経験はどんな風に印象に残っていますか?
「あのライヴで一番笑えた話をしよう。NANO-MUGEN FES.はこれまで3回出演して、10周年記念ライヴにも出て、毎回様々な思い出がある。バンド・メンバーのライナップも毎回違う。その時々でお気に入りのミュージシャンに声を掛けて日本に連れてくるんだ。2006年の時は、とにかくリハーサルを何度も重ねて、曲のアレンジを変えてみたり、担当の楽器を入れ替えてみたり、思いつくアイディアを片っ端から試してみたんだ。『逆立ちしてやったらどうなるだろうか』とかね(笑)。で、そのリハ中にマネージャーがやってきて『フェスの主催者から連絡があって、ライヴ中に1つだけ特効を使ってもいいというから、花火がいいか、火柱がいいか、紙吹雪がいいか、言ってくれ』と言われたんだ。で、確か『紙吹雪がいい』と言ったんだけど、後になって『紙吹雪は他にとられた。他にしなきゃいけない』と言われて、結局『火』ってことになったんだ」
--どんな感じでした?
「すごくドラマチックなものにしようと思ってたんだよね。ライヴの中で、ルー・リードのカヴァーの「Walk On The Wild Side」から、そのまま「Friends of P」に流れるという場面があった。静かで落ち着いた感じから、「Friends of P」のサビのところでいきなりヘヴィーな音になる、という。そこに火柱を持ってこようということになった。ただ、バンドにはステージで特効の火を経験した人は誰もいなかった。で、いざ本番になって、「Walk On The Wild Side」をアコギだけでしっとり演奏して、「Friends of P」に入ってからも気持ち良く歌ってたんだ。『♪oh yeah, oh yeah, what's that she sees, tell me….what's up with me…….find out more of what's going to be…♪』で、いきなり『ドッカーン!!!』と来たんだ。みんなで飛び上がったよ。メンバー7人中6人が心臓マヒを起こしたくらいさ(笑)。ステージは揺れるし、もうわけが分からないくらいの衝撃だった。前の曲からの対比があまりに凄くてとにかく笑える瞬間だった。ルー・リードが見ていたらなんて思ったかな。終わった後みんなで『すごい衝撃だったな』って話していたら、特効のスタッフに『あれで火力は1/4ですよ』って言われてさ。あれが僕らにとってNANO-MUGEN FES.への洗礼だった。あれ以来ライヴで特効は使っていないけどね(笑)」
--その後のNANO-MUGEN FES.への出演で印象的だったエピソードは?
「NANO-MUGEN FES.は毎回出る度にどんどん良くなっていると実感している。その中でも特に印象的だったのが2011年だね。震災の直後だったから、何か特別なことをしたいと思ったし、他の日本の出演者とも連携してアーティスト間の強い結束を示したいと思った。ゴッチやAKGに対しても強い連帯感を感じているし、それをお客さんとも共有できればと思った。この辛い時期に少しでも励みになればと思ったし、いつも応援してくれることへの感謝の気持ちを伝えたかった。だからすごく記憶に残っている。あの時のライヴで、THE RENTALSの曲を日本語の歌詞にして歌ったんだけど、ゴッチが日本語詞をわざわざ書いてくれて、日本語を話さない僕にどう発音すればいいか教えてくれたんだ。AKGも、We Are ScientistやASHのTim Wheelerやアイルランド人のドラマーもみんな一緒になって演奏した。で、何がすごかったかって、日本に行ってからたった1度のリハーサルしかやらなかったことだよね。あの規模のライヴにも関わらず、ほんの3時間程のリハーサルだった。2006の時はとにかくリハーサルをとことんやっていろいろなアレンジを試したけど、この時はそれぞれが曲を覚えてきて、東京で初めてみんなと合流して2〜3時間合わせただけだった。でも、そのほとんどぶっつけ本番のライヴのほうが、その前の何度もリハーサルを重ねたのよりも断然いいライヴだった。遥かに楽しかったし、ステージ上のエネルギーも凄かった。その体験が実は『Lost In Alphaville』への大きな刺激になった。あの時に感じた興奮をそのままアルバム作りに生かしたんだ」
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