THE RENTALSが、15年ぶりのアルバム『Lost in Alphaville』をリリースした。活動再開から10年を経て完成したアルバムは、バンドのアイデンティティを100%突き詰めたような作品。その背景には、NANO-MUGEN FES.での体験も強く影響している、とか。NANO-MUGEN FES.での思い出をはじめ、アルバムの中身から今後の予定までを、マット・シャープにじっくりと語ってもらった。
(取材・文:柴 那典)
--アルバム『Lost in Alphaville』、素晴らしかったです。センチメンタルなメロディに男女のハーモニー、モーグ・シンセの音色と、レンタルズというバンドのアイデンティティが詰まっているような印象でした。15年ぶりのアルバムをリリースしたということで、今はどんな感慨がありますか?
「いきなり核心を突いてくるね(笑)。今は初めて子供に一人暮らしをさせる親の気分だよ。これまでは自分の子供のように守ってあげることができた。自分が一番いいと思う形で人にこのアルバムを聴かせることができた。あえて誰にも音源を配布せずに、自分のスタジオに足を運んでもらって僕が一番いいと思うボリュームで聴いてもらったんだ。でも今はもうそれができない。各々が好きなようにこのアルバムを聴くだろう。自分だけのものではなくなったんだ。みんなのものになった。であればこそ、できるだけ多くの人のものになってほしいと思う」
--ちなみにアルバムが完成したのはいつですか?
「マスタリングが済んだのは今年の1月だった。そこからレーベルがちゃんと時間をかけてじっくりプランを練って下準備をして、最善の形で出してくれたと思う。ただ、時間をかけたと言っても、15年という年月を考えると今年の1月はそんな昔の話でもないけどね(笑)」
--活動を再開してから10年間、ファンからは新作を渇望され続けてきたと思います。実際にアルバムの制作が本格化する大きなきっかけになったことは何かありますか?
「実際には幾つかあった。ただ、実は、今回必ず人に訊かれる質問が『なんで15年も掛かったんですか』でさ(笑)。僕自身そう訊かれても『えっと………』としか答えられないんだ。つまり、どういうことなのかというと、ちょっと禅っぽく聞こえるかもしれないけど、作るべき時に作るべき作品を作る、ということに尽きるんだ。だから今回僕はこのアルバムをこのタイミングで出すことが必然だった、という考えに行き着いたんだ。『Seven More Minutes』以降にやってきたことも全て、それぞれそのタイミングでやるべき作品だったりプロジェクトだったという」
--このタイミングが必然だったというのは?
「僕は何年もの間、散発的にではあるけど、いろんなことをやってきて、そのほとんどが商業的に賢明とは言えない道を選んできたわけだ(笑)。まあ、それも自覚してやってたわけだけど、商業的成功を念頭に何かに取り組んだことはなかった。で、そういう作品というのは、僕にとっては作る必然があったものだったんだ。でも、ほとんどの人が僕に期待するものではなかった。単純に自分が興味あるものを追求しただけだった。そういう作品を出した時の反応というのは毎回『ああ、いいんじゃない』という程度で、僕にわざわざ感想を言う人も多くはなかった。でも、今作に関しては、どういうわけか、聴いた人から送られてくる感想がどれも心の底から喜んでくれていて。『これヤバいよ!』って思わず叫んでしまうくらい、心底興奮してるのが伝わってきたんだ。そうやって熱い反応を貰うのは本当に嬉しいし、そういうのはかなり久しぶりのことで。それが欲しくてやってるわけじゃないけど、自分の作品を褒めてもらうのは嬉しいものだからね」
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