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Turntable Films オフィシャルインタビュー(前編)

まずは具体的に聞かせて下さい。以前だったら、それぞれが書いてきた曲をスタジオに持ち込んで、ある程度セッションしながらプロダクションのイメージを固めていくっていう作業が出来たと思うんです。でも、今現在のTurntable Filmsの場合、レコーディングの途中に太鼓の田村くんが休止という形になり、今では谷君と井上君が物理的に離れた場所にいる。実際、今回は、ソングライティングから、プリプロダクションを経て、実際のレコーディングに至るまで、どういう形でアルバムを組み立てていったんでしょうか?

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井上「レコーディング当初はちょうど僕が上京するタイミングだったから、共通のセッション・ファイルを使って作業することが多くて。谷もPro Toolsは使えてたから、田村君に使い方を教えたりして、システムを組んでデモをやり取りして、みたいな。僕が京都に帰ったタイミングで詰めて行こうと考えていたんですけど、それは全く上手いこと行かなくて。結局、田村君から返ってきたのは“Hollywood”(2018年9月にリリースされたonly in dreamsのコンピレーション・アルバム『Gifted』に収録/『Herbier』のボーナス・トラックとしても収録)っていう1曲だけだったんですよ。サポート・メンバーの人たちとも同じような感じでやったんですけど、やっぱりちょっとハードルが高くて。だから、結構早い段階で、それぞれが自分の曲を自分で作業していく感じになりましたね。ドラムも気にせず打ち込んでっていう。」

当初のアイデアから頭を切り替えて、それぞれがある程度まで固めていくっていう方向になった?

井上「うん、そうです。」

今回、すごく印象的だった曲は、“Disegno”、“A Day of Vacation”、“Stein & Burg”の3曲なんです。この3曲に共通するのは、二拍、四拍単位でループするブレイクビーツ的なドラム。それと、コーラス含め、深いエコーがかかったアンビエンスがあまりグリッドを気にせずに組み合わさっている。ひとつにはそんな特徴があると思うんですけど。こうした音楽性と、制作環境とは何かしら関わっているんでしょうか?

井上「関わっています。“Disegno”とか“A Day of Vacation”はわりとリズムから作っていて。まずは自分でドラム・パターンを打ち込んで、そこにコードを当てていったり。ちょっとズラした、全体でシンコペーションするみたいなアイデアで少しずつ作っていく感じでしたね。」

この辺りの曲が軸になるアルバムと考えていいですか? あるいは、どのタイミングでアルバム全体としてのコンセプトが固まったのか?

井上「その辺りのリズムから組み立てていった曲が中心なのかな? やっぱりリズム期が多いですね。リズムとアンビエントが軸っていう。僕にとっては新しいことにトライするっていうのがコンセプトだったんですけど、それって特にアルバムのコンセプトっていう感じではなかったんですよ。当初は取りあえず一人4曲ずつ書いたら、すごいスピードでアルバムが出来ると思ってたから(笑)。だから、僕が4曲書いて4曲歌って、谷が4曲書いて4曲歌って、田村もインストとかやればいいかな、くらいだったんです。ただ、僕自身は、自分がやったことがない実験的なこと、自分にとっての新しさ、学んだこととかをそこに入れていくような作業だったんで。でも、全体的な作業が終わって、プレイリストみたいに順番を入れ替えてみたときに、このアルバムはこの9曲で世界観が完結してるなと感じ始めて。だから、レコーディングが終わってミックスする段階で、なんとなくアルバムの全体像が見えてきたのかもしれないですね。」

先ほども挙げた“Disegno”、“A Day of Vacation”、“Stein & Burg”辺りに共通するのはシンコペーションの効いたブレイクビーツ的な太鼓だけでなく、深いエコーがかかった奥行きのあるアンビエンスも特徴的だと思うんですね。コーラスがそうだし、ヴィブラフォンもそうだし、サスティーンが効いたアタック感を感じさせないギターもそうだし。この辺りの方向性はかなりコンセプチュアルだったのかなっていう気がしていたんですが。

井上「その通りです。僕はその頃はあんまり歌モノを聴いていなくて。アンビエントとか、ニュー・エイジばっかり聴いてたんですよ。あと、ジャズと、昔の古いアメリカの音楽。ただ、アンビエントとかニュー・エイジっぽ過ぎるものを僕がやるのはそんなに面白くないと思っていて。ジョン・ケージみたいにコンセプトがないのをコンセプトにしてやるのとか、あんまり自分に向いてないなと。だからと言って、ただ気持ちいいアンビエントを作るのも、あんまり興味なかったんですよ。でも、テクスチャーとしては入れたいし、面白い使い方が出来ると思っていたので。そもそも僕はシンセでもサイン波の方が好きなんです。ギラギラしているアタック音が強いものより、アタックが遅くて丸っこいサウンドの方が。だから、だんだんと遠くなっていく上モノがありつつ、ドラムは点でしっかりリズムがあるけど、読めるような展開ではない感じ。ループしてるのはわかるけど、どこかでズレていく、みたいなものが全体のリズムを作っているときのコンセプトですね。各曲で違いますけど。」

「ちょっとトータスとか、90年代シカゴ音響派とかにも近いところあるじゃないですか。その辺りのサウンドは僕もすごい好きだったし、すごく自然に受け取ったというか、出来るなという感じでした。」

井上「あ、そう聴こえるのか、面白い。それよりはもっとシンプルな発想だったんで。二拍目と四拍目にスネアが来ないパターンを奇数で切って考えて、どこにやったらこの曲は面白いかなとか。本当に音符しか見ていないというか、MIDIデータで見ている感じで。あ、ここ跳ねた方がおもろいなとか、ここ2回つついた方がおもろいなとか、パズルみたいな感じですね。」

「ただ、ドラムスが大変そうやなとは思いましたけどね。実際、苦労してはったんで。」

実際、太鼓って全部演奏しているの? それとも、ある程度は録ったものを切り貼っていったんですか?

井上「取りあえず打ち込んでたものはフィル以外はそのままで。デモのまま叩いてくれって言ったわけじゃないんですけど、最終的にそういう感じになったんですよ。で、そこからは鬼の編集を(笑)。」

32とか64単位で調整していった?

井上「そうです。自分が思っているところにしっかりとズラして。だから、貼り付けるというよりはグルーヴをまとめるという感じでしたね。弱いものはトリガーして変えたりもしてますし。これまでみたいに、田村君が叩いているから、ここまで変えちゃうと、みたいなのも気にせず。曲のためというか、グルーヴをふわーっとしたまま出しても何も面白くなかったから、心を鬼にしたわけじゃないけど、自然と整えていく感じにはしましたね。」

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『Taxi Driver』Music Video / Gotch