--アルバムには女性ボーカルとしてLuciusのJess Wolfe と Holly Laessigが参加しています。彼女たちの歌声にはどんな魅力を感じたんでしょうか。
「まず言えることは、彼女達はこの地球上で僕が最も敬愛するシンガーだっていうこと。それに尽きるね。彼女達は二人で一人のシンガーだと思っている。二人の違う歌声が合わさって初めて一つの声が完成する。その声が僕にとってこの世で一番好きな歌声なんだ。彼女達のデビュー・アルバム『Wildewoman』は僕がこれまで聞いた中で最も完璧に近いデビュー・アルバムだ。これまでも多くの素晴らしい女性シンガー達と共演してきた。でも、Luciusの二人は僕がこれまで共演した誰よりも声の相性がいいと思っている。別のマイクを使って、二人向き合って同時に歌うんだけど、必ず2人が一人の声として歌う。バラバラに歌うことはない。非常にユニークで、ライヴも見ていて凄く面白い。だから次にTHE RENTALSが日本に行く時は絶対にLuciusを連れていきたいと思っている。彼らの直後に出たら絶対に食われてしまうだろうね(笑)。それくらい素晴らしい歌声なんだ」
--そもそもTHE RENTALSのポップソングにとって男女コーラスが大きな要素になっているのはどういう理由からなんでしょう?
「そうなったのには幾つか要因があるんだけど、Weezerがまだ駆け出しでロスのライヴハウスでライヴをやっていた頃、個人的に一番共感できたバンドがThat Dogというバンドだった。彼らはドラマー以外3人女性のバンドで、3人のハーモニーがまた素晴らしかったんだ。で、THE RENTALSを始めた時、そのままWeezerのPatがドラムで参加してくれたのに、That Dogの女性ボーカルを迎えるという参加メンバーだった。それが始まりだったことがまず大きいね。ただ、男女ボーカルでやることで、商業的なヒットを望むのが難しくなるのも確かなんだ。聴き手はどっちに共感すればいいかわからないからね。ただ、僕の場合はニナ・シモーンやエラ・フィッツジェラルドやLuciusのような女性シンガーに『彼女達のように歌いたい』って憧れることのほうが多いし、男女のボーカルを上手く絡ませるか考えるのが面白いんだよね。参加してくれる女性ボーカルの声はどれも存在感が大きい。単なるバック・コーラスではないし、だからといってリード・シンガーというわけでもなくて。男女のボーカルがお互い不思議な空間を共有し、共存している。片方だけが一方的に物語を伝えているわけでもない。そういう部分が挑戦しがいがあるし、今となってはTHE RENTALSに必要不可欠な要素だと思う。もしシンセとドラムとヘヴィーなギターに僕の声だけでアルバムを作ったとしたらそれはTHE RENTALSではなくなってしまう」
--The Black Keysの Patrick Carneyのドラムもアルバムにおける大きな要素になっていると思います。彼はどんな貢献を果たした印象がありますか?
「彼が参加する前までは、全てを自分の自宅スタジオで作るつもりだった。そこで、無機質なSF映画的なドラムの音を思い描いたんだ。映画『BLADERUNNER』の世界観を彷彿とさせるような未来的で無機質なドラムの音を思い描いた。で、自分なりに70年代や80年代の古いドラム・マシーンを使ったりしてそれを形にしようとした。変なサウンドを上乗せしたりしてね。でも、それだと上手くいかない曲が数曲あって、僕は完全に煮詰まってしまった。その時にCarneyに連絡をして何曲か手伝ってくれないかってお願いしたんだ。彼が何年も前に『何か一緒にやりたい』と言ってくれたことがあったから。で、彼は『明日飛行機に乗って僕の家に来い』と言ってくれたんだ。で、言われた通り僕はナッシュヴィルの彼の自宅に行って、彼と初めて会って、2分後には二人でスタジオに入っていた。彼はためらうことなく思い切って曲に向かっていく姿勢がある。マイクを立てる前から『こんな感じでどうだ』『こんなのはどう』とガンガン叩いてくる。その時は彼が叩くビートを幾つか録音して持って帰って、それまで出来たものに当てはめてみた。で、彼に電話して、『いい知らせと悪い知らせがある』と伝えたんだ。『良い知らせは、君と録った音源はどれも素晴らしいよ。正に曲に命を吹き込むビートだ。悪い知らせは、その分、残りの曲がクソにしか聞こえないことだ』と言った。『だからナッシュヴィルにもう一度行って、アルバムの他の曲にもドラム・パートを入れてもらわないといけない』と伝えた。アルバムとして統一感を持たせるために、彼には全曲叩いてもらわないといけないと思った。だからThe Black Keysのアリーナ・ツアーが終わるのを待って、ドラム・パートを完成させたんだ」
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