五味岳久(LOSTAGE)
×後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)
後藤
「信頼できる人とチームになってね。そういう意味ではアジカンは恵まれてる。なぜならキューンレコードっていう会社が、スタッフが、正直いいから。社長を含め、やっぱスタッフにちゃんと血が通ってんだよね。まぁソニーってまとめられちゃうと、いろいろ言われたりもするけど」
──そうやって多くのスタッフに任せて自分は音楽に専念するというスタンスで、後藤さんは満足していますか。
後藤
「……満足してない部分もあるんだろうね。だからThe Future Times(後藤正文が編集長を務める新聞、webサイト)とか自分でやり始めたりしてて」
──満足しきってたら、五味くんの今回の動きにこれだけ食いついてないですよね。
後藤
「うん。あと単純に興味があるのは、いろんなしがらみを一身に引き受けるはずなのに、曲が前よりも開かれてる印象があって。別に誰かに媚びたわけでもないはずなのに」
五味
「そうなんすよね。それは僕も不思議なんすよ」
後藤
「別に自分でやるから売れ線の曲書かなきゃ、って思ったわけじゃないでしょ。でもなんかスッと素直に『NEVERLAND』とか『楽園』みたいな曲が出てきたりするっていう」
五味
「(苦笑)けっこう僕、昔から売れたいって気持ちはすごいあったんすよ、もともと」
後藤
「でも、いつ見てもなんか猜疑心の塊みたいな印象あるよね(笑)」
五味
「もう性格的なものなんでしょうけど。“こういう曲作ったらみんな喜んでくれるんちゃうかな?" “こうしたほうが絶対キャッチーになるやろう"、みたいなことも考えながら作るんですよ。でもそこで、やっぱ周りにいる人のことを考えてしまう。ディレクターとかマネージャーとか、そういう人たちとのやり取りの中で“これ売れると思って作ってる…と思われてるのがなんかイヤ"みたいな。変な屈折ですけど、そこに余計なエネルギー使ってて。でも今は誰もいてない。自分とメンバーしかいてない。そこで、一人でも多くの人に聴いてもらうためにどうすればいいかって考えたし、そこで開いたもんがストレートに出た感じがしますね。なんか僕、音楽でメシ食ってるレコード会社とかマネージメントとかに対して“こいつら何なんやろう?"みたいな感情がずっとあったんですよ。必要性はある程度わかったけど、たぶん今も思ってる。“この人らは音楽作ってない、作ってる人の周りにいるこいつらは一体何を考えてんのやろう?"みたいな」
後藤
「でもそれはあるよね、確かに。俺も思う」
五味
「でも、そう思うのも失礼やし、思ってる自分も嫌になるし。だったら自分でやってみて、同じ目線で話せたほうが近道なんじゃないかなって思う」
──あとは時代の変化も当然あって。昔は大勢のスタッフがいてもペイできるくらい、そしてバンドも充分食えるぐらいにCDが売れていた。それがこの10年くらいで本当にキツくなって、周りの人は給料が出てるのに音楽を作るバンドマンが食えてない、みたいな現実が出てきた。
五味
「それはありますよね。だって印税が2%とかって、今の時代のパーセンテージじゃないじゃないですか。最初のほうに決まったんがそのままズルズル来てるわけでしょ? そこ変えてくれるんやったらね、俺らも会社の人と新しい道を作るために頑張っていこうって思えるけど。未だにわかんないですもん。なんで2%とか1%なのか。誰も説明してくれないし」
後藤
「そうだよね。あとは著作権のシステムに登録することって何なんだろう? みたいな。もうずっとマネージメントと話してるんだけど、まずどうして出版社に印税の半分を取られるのか、そのパーセンテージの分け方は何なのか、って思うじゃない。なんでみんな一緒の分け方なのか、CDの値段もなんでみんな3000円なんだろうって。1枚ごとに労力も違えば中に入ってるものも違うし。全部をひとつのシステムにまとめてこうっていうのが、もう間違ってるよね」
五味
「はっきりズレが出てきてんのに、無理やり押し込めて今までやってきて。それで何とかなってた時代もあったんでしょうけど、もう無理ですよね。たぶん、僕みたいにじゃあ自分でやりますっていう人、これからめっちゃ増えてくると思いますけどね」
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