石井光太
×後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)
石井
「ミュージシャンも作家もそうですが、書いたり作ったりする人ってただの人間じゃないですか。先生ではない。むしろ社会的不適合者かもしれない。僕はスーツを着て会社勤めをしたら、数日以内で辞めてしまうかもしれない。でも、聴く人とか読む人って、その作者をある種の神様だと思っていないと、聴けないし読めない部分がありますよね。そのギャップを感じませんか? 例えば、本は買ったら1500円、CDだったら2000〜3000円くらいしますよね。それ以外のエンターテインメントもたくさんあるし、ただで読めるものも聴けるものある。なのに、わざわざそれを毎回買って、読んだり聴いたりできるっていうのは、一種神格化していないと買うまでに至らないと思うんです。それで成り立っているのが、文化的なビジネスだったりするわけじゃないですか。だけど中にいる人間からすると、そうじゃないと抗いたい気持ちってあるじゃないですか? 勝手に自分像が作り上げられている。僕なんか、会うたびに“石井さん、意外と声高いね。もっと低いかと思った"って言われたり(笑)」
後藤
「(笑)。僕も、テレビでお見かけして、意外と声が高い方なんだと思いました(笑)」
石井
「(笑)。声だけじゃなくて、どこまで本当の自分でいていいのか? あるところでは、神様と言われる期待に応えなくてはいけない部分が、どうしても出てくるわけですよね。“震災のときに何をやってるのあなたは?"っていうのは、神様として期待されている声じゃないですか。現実としては、自宅にいて連載をこなしていたほうがお金になるけど、“神様、震災地に行ってくれよ"って声もあるわけです。そのバランスは非常に難しいですよね。その辺はどうですか? そのバランスを決断しなきゃいけない場面ってありませんか?」
後藤
「アイドルって言葉があるように、偶像崇拝に近い部分はあるんで、その距離感は難しいですよね。でも、自分自身が見失わないようにしたいとは思ってますね。僕は、車を持ってないしスタッフが車で迎えに来てくれるとき以外は、普段は電車で移動するんですね。そうじゃないと曲も書けなくなると思うし、普通の人間として書かないと。そういう怖さはありますね。イメージが作られていってしまうというか」
石井
「それって、さっきの社会の文脈が作られていく話と似ているかもしれないですね。社会の一時的な見方で、世界がどんどん成り立っていくっていう」
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