海上「ただ、エジプトの革命ソング『Sout El Horeya 自由の声』は聴いてわかるとおり、エジプト伝統音楽の要素が一つもない、本当に普通のフォークロックなんです。それがトルコやギリシャに行くと、ポップでもロックにおいても伝統音楽の要素がすごく強くなる。トルコはロックバンドにも民謡のメロディや民族音楽が入っています。それには面白い理由があるんです。トルコは1923年の建国以降、社会はヨーロッパの方向を向いていて、第二次大戦の後には欧米からの英語、フランス語、イタリア語などのポップが大量に入ってきて、そのトルコ語カヴァーばかりが流行ったんです。それを憂いた大手の新聞社が1965年から1968年にかけて『黄金のマイクロフォンコンテスト』という新人発掘の音楽コンテストを毎月開催したんです。ちょうどロック・バンドの時代です。日本ならグループサウンズですね。その参加条件は、若者の音楽であること、歌詞はトルコ語でないとダメ、トルコ民謡のロック的なアレンジも歓迎、だったんです。そしたら、日本の三味線にあたる民族楽器サズを使って民謡をロック風にアレンジしたミュージシャンが次々に現れて、毎月デビューした。その後のトルコの音楽シーンの中心となる人が出てきたんです。だから、民謡の音楽性が残ったままのロックが最初に生まれたんです」