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TALKING ABOUT THE X
関和亮 ×後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)
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──今回の対談は、“同世代"がテーマになっています。アジカンには、『さよならロストジェネレイション』という楽曲もありますが、ロストジェネレイションと言われる世代の後藤さんが“同世代"の方々に会って話してみたいと思ってことは何だったんでしょう?

後藤「僕らは、いろんなシステムのドン突きを体験させられちゃったわけでしょ。就職もちょっと前までは、青田買いで大学2、3年から決まっていて、入社したらロボットのように戦士みたいに育てあげて歯車にしていたような社会が、僕らの時代には氷河期を迎えて。就職にしたとしても終身雇用が終わっていて。なんか変だぞと思いながら大人になって、いまだに変だぞと思っている部分はあって。あのころから社会のシステムは据え置かれている感じで。政権も交代し民主党になって変化の兆しが見えるかなって思ったけど、そっくりそのままシステムを維持して、象徴となっている人たちが入れ代わっただけっていうか。世代に対する見え方の話をするならば、今の時代は学生運動していた人たちが社会を回しているわけでしょ。その人たちが世代としては社会の矢面に立っているわけで、だけど何か良くなったのかなって思うところがあって。僕らの世代って、徹底的に教育とかで矯正させられているから何かに怒ったりすることはまずない、人と同じであることが美徳とされているから、そこからはみ出すなってところで生きていて。だから今の時代に対してまずいんじゃないかなって危機感があって。社会自体が方向転換をしていかないとまずいなっていう気持ちがあるんだけど、それをあなたは具体的に言い当てられますか?って言われたら、言い当てられないんだけど、その雰囲気を感じているだけだから。自分たちの世代って、夢や希望みたいなものが何もなかったから。何もなかった言うか、あると思っていたのになかったっていう感じになっちゃって。僕はそこが焼け野原なのかなって思ったわけです。じゃあ、そこに何かを建て直せばいいんじゃないのかなって思って。東京が大空襲や震災の焼け野原から立ち直ったように、新しいものをもう一回作ればいいんじゃないかと思ったんだけど。もちろん、面倒くさいものがうごめいているだろうけど。だから、同世代の人が今の時代をどう感じているんだろうって興味があったんですね」

「僕は、親が公務員で祖父は警察官だったんですよ。父親も学生闘争の時代に大学で、母親と手をつないで東大の構内を歩いたって話を聞かせてくれたんです。そんなことをしていたのかって思ったけど、でも公務員をやっているっていうことに子どものころからちょっと矛盾を感じていたんです。そういうことをしてた人が、国のお仕事をしているなんて、すごいなって。そこで自分の中で出した答えがダメだったんだ、無理だったんだってことで。父親たちがダメだったんなら、自分も無理だろうっていう思いもあって。政治を変えたいとかは思いませんけど、であれば自分は自分だけの道をとにかく行くしかないのかなって思いますね。さっき、後藤さんがおっしゃっていた焼け野原に家を建てるんじゃなくて、未開の地を探しに行くっていうか」

後藤「その気持ちはわからんでもないですね」

「そういう意味では、僕が若い頃に思っていた、この場所を出て行きたいとか思っていた時期のキーワードのひとつが音楽だったりするんですよ。日本が就職難だって言ったりしても、イギリスなんてもっと酷いわけじゃないですか。そこでやっている音楽がめちゃくちゃカッコイイっていうことにも憧れたし、音楽で浄化していくのっていいなって思って」



後藤「割とめちゃくちゃじゃない側の国ですからね、日本は。恵まれているとは思う。いろんな格差はあるだろうけど。でも、国ごとを相対的に比べるのはすごく難しいと思うし、国の中でも相対的な格差はあるから。でも、そういう問題意識じゃないですけど、ひとつ音楽作ってみよう映像作ってみようと言っても、いつのまにかできたシステムがあるじゃないですか? そこにも矛盾を感じる部分はあって。この企画は、いろんなクリエーターやスポーツ選手にも会って話をしてみたいって思っているんですけど、どうやって今の時代を捉えていて、何をどうやって作ろうとか表そうとか、どう生きようって思っているのかを、単純に聞いてみたいなって思っていて。何かのヒントになるかもしれないし」

「そういう意味では、今まである既存のものに乗っかろうって気分はまったくなくて。何かないかなっていうのは常に探していて、特に映像なんて手法としては、出きっているんですよ。ある種、全部出た感はあって、今は3Dなんていうのもありますけど、それも80年代にはあったものなんで。そんな中で、これは新しいんじゃないかってものは探しているところですね。特にミュージック・ビデオは探していて。引かれたレールに乗っかっちゃうと、コレはアレですよね?って、なっちゃうんで」

後藤「それはすごくわかります。レールに乗っかるのでもなくレールから降りるっていう選択じゃなくて、3を探している感じっていうか、完全に別な発想。レールに乗っからないって選択をしても、結局別のところにレールを引いているって可能性もありますからね。さっきから、関さんの考えは一貫していますね。焼け野原じゃなくて、違う土地を探すっていうね。それが関さんの個性っていうか考え方なんでしょうね」

「どうなんでしょうね(笑)。人と一緒じゃ嫌だって、天邪鬼的に中学とか高校のときもあったので(笑)。中学とか高校のときって、みんなボンタン(太い学生パンツ)を履いていたんですけど、“それ、かっこいいの?"って思って、僕は一貫してストレートみたいな(笑)」

後藤「いいですね、そういう考え(笑)。僕は、ボンタンを履いていたからな」

「えっ!? 後藤さんボンタン履いていたんですか? 意外(笑)」

後藤「中学のときに(笑)。ボンタン・ムーブメントみたいなのあったじゃないですか? どの位太いのがいいみたいな。親も厳しかったんで、そんなに太いのではないですよ。極めてストレートに近いやつ。でも高校になってからは、人と一緒なのは嫌だって思うようになって。僕は野球部だったんですけど、野球部が途中から坊主から長髪OKになったんですよ。その瞬間に、僕は坊主にしました、その後もずっと(笑)。なんか捻くれてたんです」

「(笑)。僕も野球部だったんですよ!」

後藤「共通点ですね(笑)」

──意外な共通点がありましたね。野球部の経験が、今の現場で役に立っていることってありますか?

「僕、返事だけはいいなってどこ行っても言われて(笑)。“こいつできるんじゃないか?"って思わせるっていう。それは、野球部の経験が役に立っているのかなって思います。挨拶できないやつはダメだなみたいな(笑)」

後藤「日本の社会にある体育会系のノリは、僕はあんまりよくないと思う。野球部を通して、自分はスポ根みたいな悪しき伝統に触れたおかげで、そういうことは流せるっていうか。そういう体制が苦手なんですよね」

──いろいろお話を聞かせていただきましたが、そろそろ締めさせていただきます。今後、関さんはどんな形で作品を作っていきたいっていうプランはありますか?

「結構前から思っているんですけど、今僕がやっている仕事って、音楽が先にあって映像を作っている部分があるんですけど、例えば映像を先に作って音楽を後から付けるっていうか、映像を作る人が音楽を発注するっていうミュージック・ビデオがあっても面白いのかなと。ちょっと映画に近いのかもしれないですけど、そういうことを作品としてやってみたいなって思いますね。映像も注目され始めていて、音楽と密接な関係になっているっていうのも含めて」

後藤「僕らの世代はこれからですからね、矢面に立っていくのは。20代のときは、20代にしかできないことがあるって思ってたけど。60歳くらいまでは、まだまだやりたいことも勉強することもたくさんありますよね」

「ありますね。この仕事を十数年やってきて思うのは、途中で辞めていく人が多いんですよね。気付いたらいないみたいな感じで。2、3年やったところでわからないですから」

後藤「続けることって難しいですからね」

「続けていくことで見えていくこともあるので」

後藤「関さんは、これから思うように仕事ができるんじゃないですか? 『アルクアラウンド』の評価もあるから。量が増えるっていうよりは、やりたいことができるって方向にシフトできるといいですよね」

「そうですね。そういう意味では、今まではとりあえず何でもやっていこうっていうのはあって、仕事がくるのはありがたいですし、きたからには頑張りたいっていうのはあったのでそれで無理してきた部分はあるので」

後藤「おもしろくなっていくといいですね。クライアント仕事でも制限があるからこそ、できることももしかしたらあるかもしれないし」

「本当にそうですね。最近、僕のキーワードは“手枷足枷"で。いろいろできちゃう中で、ひとつ制限を付けちゃうっていうのは、なんか面白いと思って。例えば、CGは使わないとかはひとつの手枷だし、3時間で終わらせるとかも足枷になるかもしれないし。それだけで、ちょっと違うものができる気がしてます。そういうことを逆に楽しもうって」

後藤「反動になりそうですよね。今後の関さんの活躍を楽しみにしています。今日は、ありがとうございました!」

「お話できて楽しかったです。ありがとうございました!」



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