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ソフトタッチ『リビルド』オフィシャル・インタビュー


(2018.08.01)

 それは不思議な衝撃だった。太く厚みのある伸びやかなバンドアンサンブルに、どこか飄々としているようでと、しかし確実に聴く者の心に言葉の楔を打ち込んでいくボーカル・佐野史紀の歌。これが10数年もの間、活動を止めていたバンドの鳴らす音なのかとまるで錆び付いていない、むしろいっそう鮮やかな躍動感でもって全身を駆け巡る音楽に目をみはると同時に、感情が逸って昂って仕方がなかった。それが9月12日、11年ぶりにリリースされるソフトタッチのニューアルバム『リビルド』だ。
 1998年に結成され、2003年に解散したソフトタッチ。当時の活動はわずか5年にも満たなかったが、根強く支持され、愛され続けた。彼らと同じ時代を生きたバンド、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文もそのひとりだったろう。今回の活動再開に際し、“一緒にやりたい”と真っ先に声を上げたのも後藤であり、その結果、彼と井上陽介(Turntable Films / Subtle Control)をプロデュースに迎えて『リビルド』が制作された。
 “再編”“再構築”の意志をタイトルに掲げた『リビルド』。インタビューの中で佐野本人も語っているように、それは狭義的にはソフトタッチの再構築を指す一方で、今の社会に対する希望であり、願いでもある。今作の歌詞に着目してもらえれば、それは充分に感じていただけるだろう。“社会”“世界”“未来”というワードが随所に散りばめられたこの『リビルド』への想いを佐野にたっぷりと語ってもらおう。

(インタビュー:本間夕子)

──実に10数年ぶりの活動再開、そして今回のアルバム『リビルド』は11年ぶりにリリースされる新作となるわけですが、まずはそこに至るまでの流れを教えていただけますか。活動を再開されたのが2016年ですよね。

佐野 はい。実は今回の前に一度、ささやかなんですけど、再結成してるんですよ。10年前ぐらいかな、ちょうど30歳のときに。僕としてはそのまま続けたい気持ちはあったんですけど、そのときはメンバーからNGが出て。でも、そのあたりから“またやれたらいいな”っていう想いは個人的に持っていたんですね。で、10年経って、ふと気が向いたというか、メンバーに会いたくなって“遊ぼうよ”ってみんなに声を掛けたんです。で、久しぶりに4人で集まったときに、“実はこう思ってるんだ”って伝えたら“いいじゃん、いいじゃん!”って。30歳のときは生活基盤を固めたいとか、それぞれに事情があって噛み合わなかったのが、そのときは偶然にも噛み合ったというか。で、とりあえず一回、スタジオに入ってみようってことで一緒に音を鳴らしたら“ああ、楽しいね!”って。まさに昔の気持ちが甦ってきたような。

──これならやれるぞ、と?

佐野 “やれるぞ”というより、“やっていくための方法をみんなで探そう”ですかね。“やろうぜ!”じゃなくて“どうやったら続けられると思う?”っていう話し合いをみんなでして、できる範囲で活動していこうよって。

──生活と音楽を両立していける形で、という。そこはあまりガツガツしていなかった?

佐野 そうですね。

──佐野さん自身、会社勤めをされながら、個人的に創作活動を続けてこられていたんですよね。曲を作ったらネット上で発表するという形で。でもバンドもやりたくなった、と。

佐野 バンドというか、ソフトタッチがやりたくなったんです。

──ああ、いいですね。では、その後、アルバム制作に繋がっていく経緯というのは? 今作のプロデューサーである後藤正文さん(ASIAN KUNG-FU GENERATION)から声が掛かったと伺っていますが。

佐野 4人で会ったときの楽しい風景をSNSとかにちょっと載せたりもしたんですけど、そうしたら結構、いろんな方がリアクションしてくれて、すごく励みになって。その中に後藤くんがいたんです。“何かあったら協力させてほしいな”ってコメントをいただいて。それをきっかけにメールで何回かやり取りさせていただきました。で、2016年の9月くらいに後藤さんのソロ、Gotchとしてのライブを観に行かせてもらったときに話をする機会があって、そのときに“レコーディングに入ろうよ”って言っていただいたんですよね。

──ソフトタッチとASIAN KUNG-FU GENERATIONは、かつてのインディーズレーベル、アンダーフラワーで同期のような間柄だったと思うのですが、当時のアジカンや後藤さんに抱いていた想いってどんなものでしたか。

佐野 “自分の周りにいるすごい人たち”って思っていましたね。ゼロ年代的な音楽を先駆けて鳴らしているっていう。今は2010年代ですけど、先駆性は今も変わらず貫いてると思います。

──アジカンがシーンを駆け上がっていく姿も見ていたわけですよね。正直、悔しいとか、そういう感情は?

佐野 素直に言うと“素晴らしいな”というのと“羨ましいな”っていうふたつがありました。でも複雑な気持ちというよりは“だったら僕たちは僕たちなりの、また次の新しい価値観を示してみたい”と思っていたので。なのでエレキギターをアコースティックギターに持ち替えて、カウンター的なやり方で何か面白いものを作ろうとベッドタウンっていう新しいバンドを始めたんです。ただ、器用な人間ではないので、ソフトタッチはそこで解散することになったんですけど。

──ちなみに今の後藤さんとの関係性ってどんな感じなんでしょう。青春時代に同じときを過ごした者同士、何か特別なものがあったりするんでしょうか。

佐野 いやぁ……(笑)。ちょっとはそういうノリも残ってますけどね。なんだろう、“ゴッチ”って呼ぶときと“後藤くん”って呼ぶときと“後藤さん”って呼ぶときが混在してますね(笑)。

──“後藤さん”はプロデューサーとして、ですよね。“後藤くん”は?

佐野 同期のバンド仲間、みたいな。“ゴッチ”は友達的な意味合いもありますけど、他の方々が“ゴッチ”って呼んでいるような場に自分が混ざっていたりするときの、自分なりのTPOですかね(笑)。

──佐野さんの心情的にいちばんしっくりくるのは?

佐野 “後藤くん”です(笑)。

──変なことを聞いてばかりですみません。スタジオでのやり取りはどんな感じだったのかなと思って。

佐野 ものすごく楽しかったですし、勉強になりました。会話的には“歌詞いいね”とか(照笑)、なんてことない話が多いですけど。

──たしかに歌詞は特に印象的でした。とても力のある言葉たちだと思いましたし、どの曲も訴えかけてくるエネルギーが強くて。

佐野 ありがとうございます。そこは後藤くんにも褒めていただきました。


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