logo
Gotch『Good New Times』インタビュー



──“Good New Times”は日本語詞ですが、“The Sun Is Not Down”は英語だからこそ書けた歌詞だと思ったし、素晴らしい曲だと思いました。この曲の着想はどこから生まれたのでしょうか?

Gotch最初は音楽的なことからはじめて、どうやって韻を踏むのかってことが主題でした。行の頭の言葉の語尾で韻を踏んで、それを説明するように歌詞を書いていこうと書きはじめたんですけれど、「borders」「soldiers」「Consumers」って、書いてるうちに普段から自分が考えている社会的なことが溢れ出てきてしまって。「Obama」や「Damascus」も。

──日本語だとそういう固有名詞がピックアップされちゃって、書くのが難しいと思うんですよね。

Gotchそれは言語的な文化の違いかもしれないですね。日本人は言葉を受け止めすぎるというか、意味を追っかけて捕まえる。サウンドとして聞き流さないように思います。だから、英語じゃないと書けないっていうのはホントにそうだと思います。

──前作はこういう社会的なテーマって、意図的に排除されてたと思うんです。

Gotch“Wonderland / 不思議の国”とかでも書いたつもりでしたけれど。

Wonderland / 不思議の国


──直接的な表現は避けられていたというか。

Gotchそれこそ日本語でやるのは難しいってい想いもあったし、ソロではもう少しリラックスしたものを作りたいってモードだったかもしれない。アジカンとか、『The Future Times』とか、いろいろ張りつめてやってたから、箱庭的というか、好きなものをリラックスしてやりたいって気持ちがあったけど、今回は英語で世界中の人に向けて歌いたいことって何だろうって気持ちもあったし、今の自分がどんなことを書けるのかっていう興味もあって、そういう中でこういう曲も書きたくなって……。でも、自分でコントロールできてたのかもわからないですけどね。英語の時点で日本語のようにはコントロールが効かないわけで、韻にも縛られるし、そもそもボキャブラリーが少ないから、ディクショナリーの力をすごく借りたしね。ライブで辞書のこともメンバー紹介した方がいいんじゃないかと思いますもん(笑)。

──それくらい欠かせないメンバーだったと(笑)。じゃあ、“The Sun Is Not Down”は自分が思っていた以上にメッセージ色の強い曲になった?

Gotch「こんなこと歌っていいのかな?」って悩みながら書きました。オバマのこともシリアのことも歌っていて、なおかつ、自分の娘を殺された人のことを歌ってるわけで、すごい曲だなって思うけど、でも出てきちゃったからしょうがないんだよね。当事者でもないし、ある種の不謹慎さはあると思うけど、でも「当事者じゃない」って言い切るのも違う気がする。まあ、英語圏の人が読んでどう受け止めるのかは全然想像がつかないから、ここで巻き起こる反響も自分にとって勉強になる気がする。「こういうことをこういう風に歌っちゃいけない」ってなるかもしれないし、「よく歌った」ってなるかもしれないし、そこはわかんないんだよね。

──クリスであったり、マシューだったりからは何か反応がありましたか?

Gotchクールだって言ってた。クリスは「社会的な作品だ」みたいなことをポロッと言ってたから、いろいろ感じてくれたんだと思う。マシューも1曲書いてくれて、僕が歌いやすいように平易な言葉を選んでくれたと思うけど、テーマ的には逸れてないし、普段俺が歌ってることも意識して書いてくれたんじゃないかなって思います。でも、いつも翻訳をしてくれる松田さんにマシューの歌詞を送ったら、「この言い回しはおかしくないですか?」っていう返信が来て、「僕が書いたんじゃないです」っていう(笑)。だから、詩を書くっていうのは、ちょっとした失敗を恐れないってことなんじゃないですかね。「てにをは」が違うだけで日本語は意味が変わるけど、それが合ってるかどうかよりも、新しいフィーリングを喚起できればよくて。レッチリの有名な曲名の「Californication」なんて言葉も、本来はないわけだし。自由なのがいいなって思いますね。

写真

──マシュー以外にも、2曲目の“Paper Moon”は井上さんの作詞作曲ですね。

Gotchこれは陽ちゃんが勝手に作ってきたっていうか(笑)、俺に「これやりたい」って言わせるかのように、スタジオでiPhoneで曲を流して。「いい曲じゃん、歌わせてよ」って言ったら、「ホンマですか?」って(笑)。自分のバンドでもやるのも違うし、ソロでやるのも違うしって感じだったみたいです。

──僕最初この曲聴いて歌も井上さんなのかなって思ったんですけど、そうではないんですよね?

Gotchそれは陽ちゃんの縛りがすごかったからだと思う。「めちゃめちゃ縛りきついな。がんじがらめやな」っていじりながら録っていたので(笑)。彼の中で、自分がこのバンドでやりたいことのビジョンがはっきりあったんでしょうね。他の曲でも、アルバム全編で彼は大活躍してくれました。


──あとは“Baby Don’t Cry”のことも訊いておきたくて、前回のツアーですでに披露されていた曲ですが、このバンドのテーマソングだなって思いました。

Gotchこの曲はCSN&Yの“Helpless”とか、ザ・バンドとか、その辺を思い浮かべながら作った曲で。意外とクリスにも伝わってるなって思ったのが、普通に歌ってる音の下にめちゃめちゃ低い声でユニゾンを重ねたんですけれど、それが最近のジジイになったボブ・ディランの声みたいな音色でミックスされていて(笑)。テーマソングっぽいですかね?

──ボヘミアンのテーマソングっていうか、ツアーを意識して書かれたからっていうのもあると思うんですけど、〈君の日々はどうだい 僕は今でも相変わらずだよ〉っていう歌詞が、「僕はこれからも旅を続けるよ」っていう、それこそ『On The Road』の感覚っていうか、「魂の解放」とか「自由」を感じさせる曲だなって。

Gotch僕の最初のイメージは、日本中の女の子たちのことを歌おうと思って。AKBになれなかった子たちの歌だと思って作ってたんです。今、多くの女の子たちはアイドルになりたがっていて、そういう子たちのそれぞれの生活を祝福するような曲であればいいなって。でも、そういう受け取り方もあるんですね。

──いろんな受け取り方ができると思うけど、文句なく名曲だと思います。そして、このインタビューが掲載される頃には、「The Good New Times」とのライブ活動も始まっています。「再現性は重要視しない」という話でしたが、どんなライブになりそうでしょうか?

Gotchまあ、まったく違うわけじゃないんだけど、まったく違ってなくても、俺たちにとっては違うんだっていうのは大事ですよね。キーがAの曲をDにして初めて違うわけじゃなくて、ちょっとした違いもまったく違うことなんだっていうか、毎回場所が違えば違うし、ほんのちょっとの違いを楽しめれば、それはすごいいいことだと思います。最初に「フェスがマスゲームみたいで気持ち悪い」って言っちゃったけど、でもあれも同じように見えて本当は一人ずつ違うんですよね。それはわかってる。一人一人のことを言ってるんじゃなくて、妙に同調的な秩序を感じて、なんか嫌なんだっていうね(笑)。

──やっぱりオーディエンスはある種ステージの映し鏡だと思うから、まずはステージ上が自由であることが、オーディエンスも自由になる条件だと思います。

Gotchもちろん、俺たちが自由にやってるっていうことがありきで、それを自由に楽しんでもらって、そういう自由なやり取りがループしていけばいいなって思います。まあ、あんまり構えずに、「楽しみに来てよ」って感じなんですけれど。俺たちのライブがある人生とない人生を考えたときに、あった方が豊かなんじゃないかっていう、そういう性質のものではありたいと思うし、みんなにとってもそういう時間になると思うから、まずはおいでよって感じかな。
BACK

INTERVIEW TOP
MAGAZINE TOP
[MENU]
NEWS
DISC
ARTIST
MAGAZINE
MAILING LIST
CONTACT
HOME

Copyright(C) Spectrum Management Co.,Ltd. All rights reserved.