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岩崎 愛『It's Me』インタビュー

──6曲目には、26歳のときに作ったという「26」が入っています。とてもパーソナルな楽曲で、耳元で歌ってくれているような臨場感がありますね。ペダルスティールとアコースティック・ギターのみのシンプルなアレンジが、パーソナルな歌の世界をより深めています。

「これは、歌も含めて一発録りだったんです。ペダルスティールのミヤシー(宮下広輔)が、何度も付き合ってくれたんですけど、彼のプレイが素晴らしくて。パーソナルな曲だし、ふたりでできてよかったと思います」

──7曲目「darling darling」では、愛さんがコーラスを何層も重ねていて温かみのある1曲になりました。

「イメージを壊すかもしれないですけど、『徹子の部屋』のテーマ曲の“ルールル〜"みたいなコーラスをしたかったんです。それをこの曲に入れ込みたいと思って(笑)」

──まったく想像できませんでした(笑)。

「(笑)。ノークリックで録ったので、同じパターンを貼り付けたりできないので、全部歌ってます(笑)。コーラス録りで7本くらい録りました。終わったあと、めちゃ疲れましたもん(笑)。コーラスワークにかなり凝りだしたというか、他の曲でも結構コーラスをやりました。デモを作るときもギターしか楽器を弾けないので、他の楽器の音は全部自分の声で重ねていて、“パーパパパパ"って歌ってるのはフルートみたいな感じとか。そのせいか、だいぶ鍛えられています(笑)」

──8曲目は、金の鯱の歌「どっぴんしゃーらー」。だいぶ前から、ライブでも披露されていますけど、タブラやビオラ、効果音が入って、異国情緒あふれる感じになりましたね。

「U-zhaanさんのタブラはもちろんなんですけど、藤井(寿光)さんの効果音というか、“ポーン"だったり“シャカチ?ン"っていう音が、素晴らしく活きてるっていうか。隙間を縫って、こういう音を入れたらいいんじゃないかって考えてくれて嬉しかったですね。ビオラの(角谷)奈緒子ちゃんにも、“金色鱗が落ちてきた"って歌詞のところでは、“鱗が落ちてきた感じの音にして"ってお願いして、何度もやってもらいました」

──そして9曲目は、「汽笛を鳴らせ」。ペダルスティールも入り、カントリー的なアレンジの曲になっています。

「御馴染みのライブメンバーとのレコーディングだったので、サクサクとレコーディングできました」

──10曲目には、またしても女性メンバーによる「全然ロマンティックじゃない」。

「みなさんに弾き語りのデモ音源を送ったんです。そうしたら、いろいろ考えてきてくれて。アッコさんが“愛ちゃん、合うかどうかがわからないけど、こういうフレーズを考えてきた"って、ベースラインを考えてきてくれて、“この人、天才や!"って思いました。自分が思い描いていた曲のイメージをいい意味で超えました。実はこの曲は、『東京ラブストーリー』のDVDを借りて、初めて最初から最後まで見たときに書いたんです。“何で赤名リカは、あんなにカンチのことが好きなん?"って思いながら(笑)。それをあっこさんにも伝えたら、“わかった。そう思ってベース考えてきたから"って(笑)」

──11曲目「サマーデイ」は、「全然ロマンティックじゃない」にも参加しているファンファン(くるり)さんのトランペットの音色が、夏の晴れ渡る空をイメージさせます。

「夏のパーンっていう空をイメージしたくて、ファンファーレのような音をファンファンさんにお願いしました。この曲も前に住んでいた家で書いた曲です。木造で日当たり抜群で、真夏になるとすごく暑くて、汗だくで起きるんです(笑)。前までは夏がすごく嫌いだったんですけど、だんだん夏が好きになってきて、汗でビショビショになるのは気持ち悪いんですけど、同時になんかいいかもって思ったりして(笑)。最初に話しましたけど、嫌いなものが好きになってくるんですよね、歳を重ねると。走るのも大嫌いだったけど、今は趣味みたいになってるし。インドアだったけどだいぶ外に出るようになったし、性格が明るくなったんでしょうね(笑)」

──(笑)。最後は、シングルでもリリースされた「哀しい予感」です。

「これは、弾き語り以外自分でどうしたらいいかわからなくて。ゴッチさんに相談したら、いろいろ案をくれて。“必要最低限のカッコいい打ち込みを入れるのはどうだ"って、リミックスを作ってくれたんですけど、自分がそういう音に慣れていないのでよくわからなくて。“それが嫌だったら、スティールパンとタブラを入れるのはどうだ?"ってアイデアをいただいて。“そこで、その2つの楽器が出るなんて天才!それがいいです!"って、お願いしました。ゴッチさんは“せっかくリミックスを俺が作ったのに"って言ってましたけど(笑)」

──スティールパンもタブラのさじ加減も絶妙ですね。

「必要最低限な感じで音を鳴らしてくれていて。この曲から自分の曲が好きになりました」

──というと?

「まだまだですけど、この頃からやっと自分の歌いたい感じで歌えるようになって、自分の思っていることがやっと歌に出来た初めての曲のような気がします」

──今回のアルバムは、音像が特徴的だと思うのですが、MIXエンジニアは、イギリスの「The Park Studios」にて、アイスランドのシンガー・ソングライター、エミリアナ・トリーニらを手掛けるジェイミー・クリセイがされていますね。

「そうなんです。『アイライクユー』(2008年)って曲をクラムボンのミトさんにプロデュースしてもらったときに、レコーディング現場でミトさんがエミリアナ・トリーニの音源をかけてくれて。“めちゃいい!誰ですか?"って教えてもらって、その後すぐエミリアナ・トリーニのアルバムを買ってずっと聴いていて。“好きやな、この音"って思って、『哀しい予感』のときも、こんな音にしたいって参考に持っていったりしていました。今回のアルバム作るときに、社長から“今回のミックスを、エミリアナ・トリーニをやっているジェイミー・クリセイに頼もうと思うんだよ"って聞いたときは、“えー! マジすか? やったー!!"って、めちゃ興奮して(笑)。音源を送ったら聴いてくれて、“是非、やりたい"と言ってくれたようで」

──音源を聴いて、そういう判断してくれるなんて、嬉しい限りですね。

「奇跡みたいですよね(笑)。しかも、彼自身がいろんな楽器も弾けるプレイヤーでもあるし、アレンジャーでもありエンジニアでもあるみたいで。送った音源を素直にミックスするだけでなく、“このほうがいいと思う。この音は邪魔だと思って切った"って言ったり、“ここにこの音を入れたほうがいい"って言ったり。すごい自信を持って勧めてくるんです。こんな人は初めてって思いました(笑)」

──今回のアルバムはもちろん岩崎愛の作品ではありますが、岩崎愛の歌、声に惹かれて集まった方々の出会いの連鎖から出来ている作品でもありますね。

「そうですね。自分ひとりでは絶対出来なかった作品ですね。がんばらなあかんな、って思いますね」

──改めて、『It's Me』はどんなアルバムになったと感じていますか?

「みんなに聴いてもらったら“おうっ!"って思ってもらえるだろう曲を選びました。エミリアの作品の様に、他で聴いたことがないくらい耳のそばで歌ってくれるような、近い声のバランスで作りたかったんですけど、自分の歌は声を張る歌が多いから難しいかな、と思っていて。でも今回、ジェイミーにミックスをお願いすることができて音像も理想に近づいて、いろいろな方がゲストで参加してくれて曲も想像以上のものになって。なにより、聴いてくれる人のすぐそばで歌っているようなアルバムが完成して本当に満足しています」
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