愛「ありがとうございます。良いか悪いかは置いといて、面白い話があって。一緒に住んでいるときに、あるとき私が学校から帰ったら、兄ちゃんが宅録で録音した音源を聴かせてくれて。“愛、おもろいねん。今から俺と同じようにお前歌え"って言われて、歌って録音をして。“これは俺が歌ったやつね、こっちは愛が歌ったほうね。俺の歌った声の速度を速くすると愛と同じ声になるねん!"って。同じ声になるんですよ(笑)。“わー気持ち悪い!"って(笑)」
えー、面白いですね。不思議です。でも今回の曲も、ふたりの声はそれぞれにカラーを出しているのに、その色が溶け合ってひとつの色になっているような印象でした。愛「血ですね。不思議ですけどね。フェイクとかも何も打合せんでも、おなじとこを歌ったりしちゃうんですよ。歌い方とか声の発声とか、ほぼ一緒なのかなって感じますけどね」
いろいろなミュージシャンと共演されても、そういうことはなかなかないですよね?愛「そうですね。似てるなとかはあるけど」
愛「一緒に歌ったりっていうのはないですけど、同じ音楽は共有していましたね。特に一番音楽を吸収する、中学とか高校生のころに、兄ちゃんがちょうど音楽をやり始めてギターを弾いてライブハウスに出たりしていて。自分の知らない音楽をたくさん持って帰ってきていたので、それを勝手に漁って聴いたりしてましたね(笑)。あとはお母さんが音楽好きで、スティーヴィー・ワンダーとかマイケル・ジャクソンとか王道な良い音楽を聴いていたので、それを知らず知らずに聴いていました」
愛さんと慧さんは、4歳違いですよね。愛「そうです」
4つ上のお兄さんが聴いている音楽を愛さんが聴いていて、同級生とは音楽の話は合わなかったんじゃないですか?愛「全然違いましたね。同年代の子達とは、聴いている音楽はまったく合わなかったです。高校生くらいのときに、なんでか知らんけどユニコーンにはまっていて、学校の友達は奥田民生ならわかるけどって感じでしたね(笑)」
そういう意味では、音楽面ではお兄さんの影響がかなりありますよね。愛「強いと思います」
当時の愛さんにとって、慧さんはどんな存在だったのですか?愛「そうですね。小さいころからずっと仲良くて、可愛がってくれて、普通にお兄ちゃんが妹にやるだろうっていう意地悪みたいなことは、まだやるやろっていうくらいの時期にはもうなくて、可愛がってくれて。“俺は兄貴やぞ"みたいな感じを見て、“うちのお兄ちゃんは一歩先を行っていてカッコいいぜ。うちの兄ちゃんは特別だぞ"みたいなに思ってたんで、お兄ちゃんにいろんなことを教わるのが楽しかったですね。その教わったことを“知らんやろ?"みたいに、同級生にひけらかしたりして。自分より一歩先を行ってる兄ちゃんを見て“やることがカッコいい、真似しよう"って思ってましたね」
自慢の憧れのお兄さんだったんですね。愛「そうですね。恥ずかし(笑)」
いいじゃないですか(笑)。お兄さんは、中学生から音楽を始められたんですか?愛「そうですね。あの人、高校を中退なんですよ。音楽は中学からやり出して高校を辞めて、バイトしながら音楽をしてましたね」
まず、ギターを買って。愛「いとこが、ミュージシャンで高鈴っていうんですよ。その高鈴のお父さんがクラシックギターの先生をやっていて、生徒さんからアコースティックギターをもらって。“僕はアコースティックは弾かないから、慧いるか?"と。それでもらって、それを弾き出したんですよね」
愛さんは、羨ましく見ていたんですか?愛「最初は全然興味なかったんですよ。だけど、ひとりで練習するの寂しかったんでしょうね。“愛、教えてやるから来い"って言われて、“えー別にやりたないし、指が痛いから嫌や"って言いながら教わって。私も全然弾かない時期があったんですけど、何故かいつの間にかまた弾くようになって。兄ちゃんは自分のギターを買って、“これはお前にやるわ"って言われて、そのギターをもらって」
そういうエピソードを聞いても仲良し兄妹ですよね。お兄さんは、そこから本格的に音楽の道を進み出したわけですけど、愛さんはその姿をどう見ていましたか?愛「最初は、高校を辞めはったときは、大丈夫かな?って思ってたんですよね。高校行っているときもサボったりしてたから、“兄ちゃん苛められてんのかな?"って心配になったんですけど、高校辞めて自分のやりたいことが明確になって、脇目もふらずじゃないですけど、どんどんそれに時間を費やしてる姿を見てたら、やりたいことが見つかったんだな、よかったなって思いました」