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クリス・ウォラ インタビュー

そんな風にひとつひとつにたっぷり意味を込めた曲のタイトルに対し、アルバム・タイトルは素っ気ないほどシンプルですよね。これは意図的な選択なんですか?

「そういう部分もあるよ。ジブリ美術館にも通ずることだけど、驚きや美といったものが、ある意味で、非常にメカニカルで説明的なものの中にも存在し得るという考えに、基づいているのさ。僕はそういうセオリーに惹かれるんだ」

この先は何かほかにもプロジェクトが控えているんですか?

「『North』という映画のサウンドトラックを手掛けていて(注:来年公開予定)、映画音楽はずっと前からぜひともやりたかったことなんだ。でもこうして携わってみて、いかに難しいことだか思い知らされたよ(笑)。映画音楽っぽい作品を作ったからといって、映画音楽そのものを作れるわけじゃない。少なくとも僕の場合はね(笑)。音を映像に合わせて作るという作業は、普段の音楽作りとは全く異なる。ひとつのサウンドスケープを構築して、そこから何らかの映像を想起するのはすごく簡単なんだけど、その逆は本当に難しい。最近になってようやく、形になりつつあるけどね。どうやらコツが分かったらしくて。それにしても、自分が想像していたものとは全然違っていて、大きなチャレンジだったよ。それからプロデューサーとしでは、近々とある日本人のミュージシャンのアルバムに関わるかもしれない。僕は長年、彼のバンドのファンだし、過去にデス・キャブ〜のツアーで日本に行った時に2度くらい会って意気投合したし、ぜひ実現させたいと思っているんだ」

そして、今後どんな音楽を作るにしても、こういうテープ・ループを何らかの形で用いてゆくんでしょうね。

「そう思うよ。だって、放っておいても勝手に僕の中から流れ出るものだからね(笑)。とにかく自然なんだ。実際、過去数年間に僕が関与した作品にはどれも、色んな形でテープ・ループが織り込まれている。『金継ぎ』にもテープ・ループを使ったし、僕がプロデュースしたロッキー・ヴォトラート(注:以前からクリスがコラボしているシアトル在住のシンガー・ソングライター)のニュー・アルバム『Hospital Handshakes』にも使ったしね。テープ・ループは、その出自と全く関係のない音楽を、実に美しく照らし出してくれる。光彩を添えてくれる。毎回そのパワーに驚かされるよ」

最後に、こうしてバンドを離れて最初のアルバムを作り上げてみて、クリス・ウォラというひとりのアーティストについて何か新たに学んだことはありましたか?

「そうだな……これまでの僕はずっと自分を、“何かを組み立てる人(builder)"と見做してきた。“何かを作る人"というか、まあ、音楽の建設作業員みたいなものだね。それがここにきて、『Tape Loops』というアルバムは、自分が“何かを育てる人(grower)"としての能力も備えていることを、教えてくれたような気がする。つまり、設計者であると同時に、同じくらい有能な庭師でもあるーーそんな感じかな。そして何かを組み立てるべき時と、何かを育てるべき時の違いを見極める感覚みたいなものが、アルバム制作を通じて、少しばかり身についたように思う。それは非常にパワフルで有意義な能力なんじゃないかな」


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Tape Loops

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