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メレンゲ 「ミュージックシーン」

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オフィシャルサイト(JP)マイスペース
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青野圭祐─2012.5.25─

ここのところレコメンドがご無沙汰しておりましたが。ここ最近で僕が最もレコメンドさせていただきたい、全力でプッシュさせていただきたいリリースは、このメレンゲ『ミュージックシーン』です。

海沿いの景色や甘酸っぱい時間、どこまでも切ない恋心とそれに揺れる感情を、優しく繊細な言葉と外側からは見えにくい場所にハッキリと爪痕を残すようなチクリと刺す言葉で綴り、それをヴォーカル・ギターのフロントマン、クボケンジさんの紡ぎ出す豊かなメロディ、実直なリズム隊で鳴らす日本のギターロックバンドの代表格とも言えるメレンゲ。

以前にスピッツをレコメンドさせていただきましたが、そのスピッツの草野マサムネさんにもレコメンドされてデビューされてから、10年の歳月が経ちリリースされるのが、このサード・アルバム『ミュージックシーン』です。


フロントマンのクボさんは、メレンゲでの活動の他にART-SCHOOLのフロントマンの木下理樹さんとストレイテナーなど多くのバンドで活躍されているベーシストの日向秀和さんのバンド、killing Boyのデビューアルバム『killing Boy』のエンジニアをされていたり、スピッツが先日カバーされていた初恋の嵐の再結成プロジェクトに参加されていたり、多くのアーティストに楽曲提供をされているのですが、メレンゲとしてはおよそ3年ぶりのフルアルバムです(ミニアルバムでは『アポリア』という作品が去年のこの春にリリースされていました)。

制作には、今年のメレンゲのツアーのサポートメンバーでもあった、元くるりのギタリストの大村達身さんとキーボーディストの皆川真人さんを全面的に迎えられたそうです。


早速ですが、この堂々たるタイトルの新作『ミュージックシーン』、前作の『アポリア』から朝や真昼、午後の海沿いの景色から少し離れた、夕暮れや「夜のメレンゲ」としての最高傑作だという言葉とともにレコメンドさせていただきたいです。

なぜ、そこまで絶賛するかを書く前に、まずはリードトラックでもある「まぶしい朝」のMVをご覧いただきましょう。



感傷的なピアノとストリングスの響きと寂しげな抑揚のきいたリズムとクボさんの素朴な歌声に酔いしれてしまいそうですが、そのサウンドにも増して歌詞が何より素晴らしいです。

その歌詞については後ほど詳しく書くとして、続けて、クボさんがシンガーとしても活動されている新垣結衣さんに楽曲提供された「うつし絵」のセルフカバーのオフィシャルライヴ映像をどうぞ。



切なすぎる別れを歌う名バラードです。


現時点で『ミュージックシーン』の中でMVが公開されている曲は「まぶしい朝」と「うつし絵」の2曲で、どちらも名曲ですが、新作にはメロウな曲だけでなく、アップチューンの曲やファンクっぽい横ノリな曲もあります。

長く、その繊細なメロディセンスで支持を集めてきたメレンゲですが、実はミニアルバムとしての前作『アポリア』では、それまでの繊細さだけでない新しい音楽的な挑戦をされていたのですが、その成果が早くも、それ以前から持っていた彼らの良さと融合してうまく調和しているのが、とても素敵です。

タイトルトラックの「ミュージックシーン」からゆるやかに幕を開け、2曲目「バンドワゴン」で加速し、のおどけたような曲調の本編最終曲「物持ち」まで、非常に多種多用なサウンドを聴くことができるのです。

そういった意味では、もうメレンゲはギターロックバンドと簡単に言う事はできないかも知れませんが、それでも各曲の随所から聴こえる豊かなメロディから、やはりメレンゲは賞賛としてギターロックバンドなんだなぁと改めて思わせてくれるような作品でもあります。


素晴らしいのは、サウンドだけではありません。

冒頭でも書かせていただきましたが、「優しく繊細な言葉と外側からは見えにくい場所にハッキリと爪痕を残すようなチクリと刺す言葉」を織り交ぜた歌詞もメレンゲの大きな魅力の一つですが、新作では、その明暗の幅がさらに広いのです。

一例を挙げると"いつだって精一杯笑う君に恋をしたあの夏の日"(「クラシック」)といった甘酸っぱい一節から、"君を愛したせいで嫌いになった誰かの裸ばっか覚えてる"(「hole」)なんて突き刺すような辛辣なフレーズまで出て来ていて、その優しさと惨さの共存に驚かされるばかりです。

その中でも特に、素晴らしいのが、先程の「まぶしい朝」。君を失った"僕"の抱える感情…期待やかすかな希望のようなポジティブなものと欲望、困惑のようなネガティブなものが一曲の中に凝縮されているようです。

これらの歌詞はクボさんがこれまでの作品よりさらに、自分の心の奥をより深く観察しながら綴られたように感じます。先程の「うつし絵」は、作詞はクボさんではないものの、恋人との悲哀の別れと少しの強がりという曲の持つ世界観とメレンゲのそれがとてもマッチしていて、メレンゲとしての代表曲にすらなると思えてしまいます。


またジャケットも、これまでの「午後の海」の白昼夢から帰ってきた二人を乗せたバスが都市に進んでいるようで、作品のリアリティと「夜のメレンゲ」っぽさをとても鮮やかに演出しているように感じられます。


幾つか直近のツアーからのオフィシャルライヴ映像を幾つかも引用させていただきます。
ミニアルバムとしての前作『アポリア』から「旅人」。




フルアルバムとしての前作『シンメトリー』から、シングル「underworld」。




ミニアルバム『初恋サンセット』から「タイムマシーンについて」。




『アポリア』から、陽がおちた後の景色を歌っていたメレンゲですが、改めて『ミュージックシーン』はその「夜のメレンゲ」の最頂点だと思います。それほどまでに素敵なアルバムです。

最後にオフィシャルのティーザー映像を。



流れている曲は「ミュージックシーン」と「まぶしい朝」、演奏されているのは「バンドワゴン」です。


是非、あなたも『ミュージックシーン』を聴いて、現在や過去の自分、そこにある(あった)恋と隣にいる(いた)人、その人との関係、そこで照らされていた永遠とも刹那とも思えた時間の眩しさ、優しさ、懐かしさを思いながら、初夏を迎える夜の時間を過ごしてみて下さい。きっと今までの自分や恋人、関係に新しい色を見出せるはずですよ…!!

リリースは今月30日です。

青野圭祐

Web
https://twitter.com/ath_sj3

BIO
雑誌やウェブなど各メディアで音楽の書き物をしたり、Bathroom Sketchesというインディ・ロックバンドでギター/ヴォーカル/シンセサイザーをしたり、Moles Regimeというデジタルユニットで活動したりしている、京都の郊外出身の25歳です。
US北西部(ワシントン州シアトル)と愛媛県が好きです。
アイコンはイラストレーターの岩沢由子さんに描いていただいております。