ライター/編集者。洋楽誌CROSSBEAT、音楽サイトMikikiを経て、現在はフリーランスとしてRolling Stone Japanを中心に活動。若林恵(黒鳥社)との音楽配信番組「blkswn jukebox」、後藤正文(ASIAN KING-FU GENERATION)がホストを務めるポッドキャスト番組『APPLE VINEGAR -Music+TALK-』にレギュラー出演中。編書に『Jazz The New Chapter』など。
2024年、今年リリースされたアルバムを中心にアーティストや音楽関係者にベストアルバムを選んでいただきました。
ここ10年ずっと大好きなCharli XCXの『brat』旋風にも興奮しましたが、彼女やTylaといった辺りはもはや社会現象という感じがするので、上掲のベスト10は個人的な趣味全開で選びました。日本の作品については、Qobuzマガジンに寄稿した「現代日本を語るインディー・アーティストたち」という記事をよかったらご覧ください。
秋にアメリカのシカゴとオースティンを取材旅行する機会に恵まれ、現地のライヴハウスや観光名所を渡り歩いてきたことで、以前より身近に感じられるようになったのがカントリー。帰国後すぐに『カントリー・ミュージックの地殻変動 多様な物語り』という書籍が刊行されたことも後押しとなり、新旧問わず聴き漁っていくなか、インディー・ロックで育った耳にフィットしたのがWaxahatcheeとMJ Lenderman。晴れた日の午後みたいなフィーリングが無性に沁みて、これでもかと愛聴しました(後者はぜひとも家主と対バンしてほしい)。
アメリカの音楽都市を訪れて驚かされたのは、歴史的建造物を再活用する「アダプティブ・リユース」によって生まれたライヴハウスや施設がいくつもあること。会場はゆとりがあって快適で、近所に美味しいお店もあり、ブルースやジャズの老舗に若いお客さんも集っていて、地元の伝統や文化遺産を受け継ぎながら新しい可能性を生み出している……大統領選の結果も然りで、今の時代にアメリカを美化しすぎるのも違うと思いますが、文化を軸とした環境づくりに関しては、日本の現状とギャップがありすぎたというのが正直な感想。観光としては最高にエンジョイしつつ、現実を思い知らされ複雑な気持ちになったりもしました。
そんなふうに思っていた矢先、後藤さんに藤枝市を案内していただき、滞在型スタジオに改修される築130年の蔵を見学させてもらって、自分がアメリカで見てきた「豊かさ」が生まれようとしている光景に心底感激したのでした。そう思うと、後藤さんがシカゴでソロ作のミックスをしたり、WilcoやChance The Rapperの話をずっとしてきたことも、どこかで今回のスタジオづくりと繋がっているのかなと。自分としてもFrikoの登場やSteve Albiniの訃報などシカゴについて考える機会が上半期から多く、彼らの音楽も歴史の蓄積の上に成り立っているわけで、いろいろひっくるめて2024年の大きなトピックでした。クラファン100%達成は本当におめでたいです。
せっかくなので、今年もベストライヴ10本を選んでみました。Cat Powerによるディラン名演の再現は、2025年3月に日本でも開催されるので大変おすすめ。3月に観たWilcoも出音の良さとロック・バンドとしての強度にびっくりしました。Waxahatcheeをシカゴの「Riot Fest」で観ることができたのも嬉しかったです。日本にも来てほしい。
ライター/編集者。洋楽誌CROSSBEAT、音楽サイトMikikiを経て、現在はフリーランスとしてRolling Stone Japanを中心に活動。若林恵(黒鳥社)との音楽配信番組「blkswn jukebox」、後藤正文(ASIAN KING-FU GENERATION)がホストを務めるポッドキャスト番組『APPLE VINEGAR -Music+TALK-』にレギュラー出演中。編書に『Jazz The New Chapter』など。