8otto アルバム『Dawn On』オフィシャルインタビュー
10組のロール・モデルから紐解く、8ottoが思い描くロック・バンドの理想形
具体的に次のアルバムの準備を始めたのがいつごろなんですか。
マエノソノ「曲を作り始めたのが……5年前ぐらい?」
TORA「それぐらいですね。4人が全員集まることがなかなかできなかったので、その都度集まれるメンバーで少しずつ作業を進めていって」
アルバムのテーマとかコンセプト、全体像がまとまってきたのはいつごろですか。
マエノソノ「テーマが固まってきたのは最後の方ですね。曲数だけでいったら30曲ぐらい作ったと思うんですけど、そこから絞られていって」
じゃあ曲を書き始める時点では考えてない。
マエノソノ「うん、全然考えてないですね。何がかっこいいんかなあ、とノリで」
6年もたつと自分の好みや感覚も、周りの状況も変わってきますよね。
マエノソノ「うんうん。6年前にかっこいいと思って、今もかっこいいと思う曲が残ってるんかなあ、というか」
TORA「うんうん」
マエノソノ「アレンジもけっこう……普遍的、でもないけど」
TORA「自分らがかっこいい思ってるものが残ってる」
その間にいろいろ音楽は聴いてらっしゃったんですよね。
TORA「そのつどブーム的なものはあったと思うんですけど、結局好きなものだけが残ってんのかなあ、という」
今回インタビューにあたって「8ottoにとってのロール・モデルとなる10組のアーティスト」を選んでもらったわけですが、それが「6年前と変わらずかっこいいと思うアーティスト」ということでしょうか。
TORA「そうですね。そうかもしれないです」
【8ottoを形作ったロール・モデル10組】
- Nirvana
- !!!
- Jimi Hendrix
- The Stone Roses
- Metallica
- Led Zeppelin
- Gang of Four
- DeathSurf2000
- Snoop Lion (Snoop Dog)
- Bob Marley
すごく王道と言えば王道な選出ですね。
マエノソノ「そうですね、はい」
TORA「バンドやってきたうえでポイントになるバンドというか」
TORAさんが選んだのはストーン・ローゼズですか?
TORA「はい、それに関しては8ottoの、というか僕の基本ですね。自分のバンドをやって、ベース・ラインを考えるにあたって核になってます」
そういえば今作の“Mr.David”で、ピーター・フックみたいなベース弾いてましたね。
TORA「ありがとうございます!クソパクリました(笑)。モロバレなぐらいやりたいなと思って」
あっさり認めましたね。とぼけられるかと思ったけど(笑)。
TORA「いえいえ! 超大好きなんで」
マエノソノ「ニュー・オーダーみたいな感じやな」
TORA「もうそれにしてくれって感じで(笑)。ローゼズもそうですけど、決して派手ではないけど、ずっとループで続いていく気持ちいいグルーヴみたいな。そこは意識してやってますね」
!!!(chk chk chk)もダンスですね。
マエノソノ「これはみんな好きですね」
TORA「前身バンドから8ottoになった時に、キーになったバンドですね。記号をバンド名にしたいというところから、グルーヴのあるダンス・バンドという意味でも」
ジミヘンはMaenosonoさんですか。
マエノソノ「好きですね。みんな好きですよ。もともとXとかLUNA SEAとかすごい好きやったんですけど。めっちゃ速いイコールかっこいいと思ってたんですよ。それでメタリカ聴いてブルータル・トゥルース聴いて、どんどん速くなっていって。それで速くなくてもかっこいい人おるやんって教えてくれたのが、たぶんジミヘンやったんですよね。めっちゃ遅いけどかっこいい、みたいな。そう思い始めたころにちょうど自分の髪も天然パーマになってうねりだしたんですよ」
TORA「ははははは!」
マエノソノ「で、ジミヘンとレニー・クラヴィッツとベン・ハーパーとボブ・マーリーの4人が僕にとっての憧れの四天王みたいになって(笑)。白人と黒人のごちゃ混ぜの音楽をやってるのがすげえかっこいいなって。そこからちゃんと洋楽を聴きだしたんで」
レッド・ツェッペリンは白人のバンドですけど、グルーヴがあって、黒人音楽の影響も大きい。
マエノソノ「めっちゃブルースですからね」
ギャング・オブ・フォーは白人のパンク・ファンク・バンドですね。
TORA「そのへんも前身バンドから8ottoになるときに、隙間の感じとかかっこいいよねっていって聴いてたんです」
初期のギャング・オブ・フォーぐらい隙間だらけのサウンドって、やる側からしたら相当勇気がいるものなんですか。
TORA「僕らができてるかどうかわからないですけど、新しいアルバムでも、弦楽器が一切なかったりするところとか、自然にやってるつもりなんですよ。でもゴッチとかに言わせたら「結構勇気いるよね」とは言われましたけど(笑)」
Deathsurf2000は、地元大阪のバンドですね。
TORA「メンバー全員が好きなローカルのヒーローみたいな先輩バンドですね。今はもう活動してないですけど」
どういうバンドだったんですか?
マエノソノ「最初どこかのバーで聴いた時は、オアシスの影響を受けたどっかのバンドかなと思ってたら、大阪のバンドやと聴いてすごい衝撃を受けたんですよ。それでライヴを見に行ったんですけど、ウィーザーとかオアシスとかをハードコアに混ぜたような感じの。すごくポップやけど大阪っぽい、オリジナルな音だなと思ったんです。ライヴ中にドラムセットにビーチパラソル刺してライヴを始めて。ビーチパラソルがデカすぎてドラマーとか全然見えへん」
TORA「ふはははは!」
マエノソノ「ベースレスでキーボードがシンセベースとか弾いて、ギターは3人おって編成もワケわからんし、急に竪笛吹く曲もあって。でも全部ポップでひねくれてて」
TORA「でも不良で(笑)」
マエノソノ「すごいかっこいいなと思って。初めてライヴ見たときは全曲ロボットボイスで『ワレワレハデスサーフ2000……』とか言ってて。そのうち本番中にヴォーカルのUE神(ウエシン)さんの携帯電話が鳴ったんですよ。普通本番中に携帯鳴らないようにするじゃないですか。そうしたら普通に電話に出て『お前誰や』みたいな感じで喋り出して『しばくぞー』とか言ってブチッと切って。もうお客はワーッと盛り上がって。『なんなんこのバンド、めっちゃかっこいい!』と思って。そこから自分の憧れでしたね。20歳ぐらいですかね」
話だけ聞いてるとむっちゃ関西っぽいですね。
TORA「(笑)そうですね」
マエノソノ「音はすごくかっこいいんですよ。洋楽バンドを初めて見たときみたいなテンションで」
そこから、得たものは「何をやってもいいんだ」という自由な感覚でしょうか。
マエノソノ「みんながやってないこと、みんなが驚くことをやったら楽しい、という」
人と同じことをやるのがいやだ、という関西人の気質もあるかも。
TORA「見に来る人は、ちょっと非現実的なものを求めてるというのはあるかもしれないですね。もちろん、いい演奏でいい歌で、というのも好きですけど、ふだん見ない感じを心のどこかで求めているのかな、と」
Deathsurf2000を見ることで、自分たちのバンドも変わってきた?
TORA「僕はけっこう変わったんじゃないかと思います。デスサーフのポップな感じというか。ベースがなくてスカスカなんだけどかっこよくてガツンとくるようなアンバランスな感じとか」
なるほど。そうして自分にとって「6年前と変わらぬかっこいい音楽」を再確認したわけですね。
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