INTERVIEW
2013年ベストアルバム
2013年、今年リリースされたアルバムを中心にアーティストや音楽関係者にベストアルバムを選んでいただきました。
ミノウラショウタ が選ぶ2013年 ベストアルバム
Waxahatchee
Dirty Beaches
Fla$hBackS
Sonny and the Sunsets
Kevin Morby
The Aquadollsの記事1本しか書いてないにも関わらず、年間ベスト企画に参加させていただきました。感謝しかないです。去年の夏から秋にかけて、環境の変化と未来への不安で身動きが取れなかった時期があったのですが、周りの友だちのフックアップのおかげで乗り越えることが出来ました。これにも感謝しかないです。2014年もnothing to loseの精神で頑張るのでよろしくお願いします。それでは、2013年のベストアルバム10枚を発表します。レッツ・スクロール!
1.Christpher Owens/Lysandre
平成2年生まれの僕にとってのUSインディーは、PavementでもTy Segallのことでもなく、Girlsを指し示す言葉だった。そのGirlsのソングライターだったChristpher Owensによる、ある意味USインディーシーンとはかけ離れたレコードに、多くの人は戸惑ったことと思う。でもロックンロールは父親殺しの音楽だからね。おそらくLysandreの中で唯一ファンに向けて書かれた曲、Love Is In The Ear Of The Listenerの一節にある「愛は聴く人の耳のなかにある/それが愛すべきかは聴く人次第」というラインがすべてだ。終わりのない物語なんて存在しないし、一つの物語の終焉に立ち会えたことを本当に誇りに思う。ポップ・ミュージックがまだコンテンポラリーだった時代を夢見るすべての人に聴いてほしい。
2.foxygen/We Are the 21st Century Ambassadors of Peace & Magic
まずアルバムのタイトルからしてふざてける。「21世紀の平和と魔法の大使」ってなんやねん。最高だ。一口にサイケデリアと紹介されることが多いバンドだが、グラムロックや60年代R&Bへの憧憬も伺える。それぞれAriel Pink、Junior Seniorを介して受けた印象だ。あとはThe Velvet UndergroundとThe Doorsかな。日本のバンドで言うと初期の髭ちゃんが好きな人にオススメ。きっと気に入ってもらえるはずだ。それにしてもThee Oh Seesの系譜にはMikal CroninとTy Segallがいるし、Ariel PinkにはFoxygenがいるし、アメリカって国はほんに豊かで懐がでかい。
3.King Krule/6 Feet beneath the moon
イーストロンドンの路地裏で悪巧みをする若者たちの周りに、不穏な空気が漂い始める様子を描写したかのようなEasy Easyのベースラインが秀逸だ。とても19歳とは思えない歌声だが、リリックの方では年相応の一面も覗かせている。Has This Hit?の歌詞とか、ほんと最高。The StreetsがArctic Monkeysに影響を与えたように、これからUKのインディーバンドがどう変容していくのかが気になるところ。
4.Arcade Fire/Reflektor
LCD SoundsystemのJames Murphyプロデュースと聞いて心が踊ったのは、僕がArcade Fireの熱心なファンではないからだろう。同時代性から周到に距離を取り、アルバムという単位が意味を無くしつつある時代に逆行してみせるかのような2枚組75分の大作。それでもタイミングを合わせたかのようにDavid Bowieは10年振りの新譜を出し、DFAからもFactoly FloorやHoly Ghostといった良作がリリースされるなど、結果的にArcade Fireを磁場にした何らかの共振があったことは事実で、ひとえにバンドの実力だと思いました。今1番フジロックのクロージングで見たいバンド。
5.Mikal Cronin/MCⅡ
Ty Segall、Thee Oh Sees(解散しちゃったけど)周辺のミュージシャンとして知られるMikal Croninの2作目。彼のソングライティングの特徴としてとにかく音楽的な参照点が多いこと、そして引用の仕方が非常に上手いこと。一言で例えるならグラスゴー出身のKurt Cobainとでも言おうか。音楽オタク的な意味でかなりのミュージックラバーだと思うのだけど、実際はどうなんだろう。Mikal Croninが見てきた景色や出会った人々が歌の隙間から零れ落ちる、インターネット世代によるUSインディーの金字塔。
6.Waxahatchee/Cerulean salt
「コミュニティに根ざしていた音楽を、個の表現に矮小化してしまったのがロック。あるいは、我々が日常的になんとなく感じている喪失感(ブルーズ)を、喜怒哀楽といった、ある特定のエモーションへと過剰にデフォルメしてしまったのもロック」という田中宗一郎氏の定義に倣えば、これはまさにロックンロールについてのレコードだ。それと同時にブルースについてのレコードでもあるし、パンクについてのレコードでもある。基本的なサウンドはフォーキーだが、時折り感情の起伏に呼応するようにギターはディストーションする。そこに不自然な箇所は一つもなく、歌詞もメロディも驚くほど素直で澱みない。Elliott Smithの感受性から中後期Liz PhairのフェミニズムからThe Ramonesの激情まで、すべてを内包しながら自分の表現にのみ真摯で、何も代弁していないがゆえに彼女は僕たちの代弁者だ。
7.Dirty Beaches/Drifter/Love Is the Devil
台湾生まれモントリオール育ち(現在はベルリンに住んでいるらしい)のAlex Zhang Hungtaiによるプロジェクト、Dirty Beachesによる2作目。前作のBadlandsは彼1人のソロプロジェクトだったようだが、今作ではBernardino FemminielliとShubhayan Roymの2人をメンバーに迎え入れている。Drifters/Love Is the Devilが以前にも増してアヴァンギャルドな方向に進むことができたのも、メンバーの2人に対する信頼があったからこそだと思う。引用に対する考え方とか、Alexのパーソナリティ含めて本当に好きなバンド。
8.Fla$hBackS/Fl$8ks
nahavandの宮内くん、LHW?に所属してるラッパーで、トラックメイカーとしてもdaokoちゃんの新しいアルバムに参加しているkuroyagiの両者から、立て続けに「いまFla$hBackSがヤバイよ!」と教えてもらい、聴いたら見事にハマりました。日本人によるヒップホップだったらS.L.A.C.K.以来の衝撃。友だちとFla$hBackS prod.Fla$hBackSのリリックを覚えて練習する日々です。
9.Sonny and the Sunsets/Antenna to the Afterworld
サンフランシスコ在住のSonny Smith率いるSonny and the Sunsetsの9作目(wikiを見るまで今作で4枚目だと思ってた)。まずはToo Young To Burnという曲をYouTubeでチェックしてみてほしい。そして出来ることならインタビュアーと思われる人に向けてホテルのベッドルームで演奏している映像を探してみて。とにかく素晴らしいから。Tomorrow Is Alrightに収録されているこの曲は、僕が音楽に求めるすべてのフィーリングを内包している。50、60年代のロックンロールやカントリー、ドゥーワップをボードヴィル俳優のような佇まいで演奏する姿は少しだけPeter Dohertyと被ったり。個人的には1番好きなTomorrow Is Alrightと並ぶキャリアを代表する作品だと思ってる。
10.Kevin Morby/Harlem River
Woods、The Babiesのメンバーとして知られるKevin Morbyのファースト・ソロ・アルバム。なのですが、最初に断っておかなければならないことがあります。僕まだこのCDちゃんと聴けてないんです。12月の頭にネットで注文して、支払いも済ませたはずのCDがいつまで経っても届かない。YouTubeで聴いた3曲だけで年間ベストに選出するのは無責任かとも思ったのですが、確信に近い予感があるので紹介させて下さい。上記の3曲を聴いた限りの感想ですが、Kurt Vileや潮田雄一(Quattro)のソロが好きな人にオススメです。Our House on the Hill/The Babiesに収録されているMeanという曲の方向性を推し進めて作ったレコードだと思います。現段階ではこれ以上書けないです。ごめんなさいーー。
と言うわけで、ミノウラショウタが選ぶ2013年のベストアルバムでした。レコメンダーとして純粋に好きな10枚を選んだ結果、思いっきりUSインディーに偏ったチャートになってしまいました。趣味が丸出しで少しだけ恥ずかしいです。批評家の視点から選ぶとまた違った並びになると思うのですが、そっちの方は1月の中旬にブログで発表するので良かったらチェックしてみて下さい。CDが間に合えばという条件付きですが、Kevin Morbyについてもそこでちゃんと書くつもりです。
簡単に2013年を振り返った雑感を書くと、去年は洋邦問わず本当によくライブを見に行きました。特にNOWEARMANのライブは世界で1番僕が見に行ったと自負しています。また2014年は多くの邦楽インディーバンドのアルバムリリースが期待される年です。踊ってばかりの国、NOWEARMAN、ミツメ、She Talks Silence、Klan Aileen、cero、empty page、nahavand、シャムキャッツ、Slow Beach、Jappers、The Paellas、恋する円盤、The Smith & Wesson、Sha La La Lee's、The fin.などなど。所謂97年組みと呼ばれているバンドたちのように、後の世代に語り継がれるようなすごい年になる予感があります。今からたのしみで仕方ないです。
2014年はOIDのレコメンダーとして精力的に記事を書いていくつもりなので皆さんよろしくお願いします。
ミノウラショウタ
WEB
https://twitter.com/Minononononono3
BIO
板橋区在住の大学生。アルバイトが夜勤帯のせいで、いつも具合の悪そうな顔をしていますが、割りと元気です。カロリーはグリーンラベルで取る主義。特技は徹夜。友だちと組んだバンドの名前を東洋リバティーンズにしてしまうくらい、The Libertinesが大好きです。
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