INTERVIEW
2013年ベストアルバム
2013年、今年リリースされたアルバムを中心にアーティストや音楽関係者にベストアルバムを選んでいただきました。
古渓一道(フォトグラファー) が選ぶ2013年 ベストアルバム
今年はいいアルバムが本当に多くて、10枚に絞るのはいつもより本気で悩みました。Vampire Weekend、Arcade Fire、Blood Orange、Nick Cave & The Bad Seeds、Daughter、Arctic Monkeys、The National、Foals、Daft Punk、Okkervil River、Wavves、Cheatahs、Travis、King Krule、David Bowie、等々…これらのアーティストの作品は10枚の中に入っていてもおかしくないほど好きです。
1.The 1975 / The 1975
今年一番聴いたアルバムです。こちらのレコメンドで懐古趣味丸出しなバカみたいな文章を書いたのですが(的確な言葉を求めるならこちらのレヴューがおススメです)、とにかくこの無邪気なポップ・ワールドには引き込まれました。「最高です」と胸を張って公言するのもどこか憚れるほどの、MTV全盛時代を思い起こすような超絶ポップ。一方でどこか陰影もあって(だからこそアートワークのほとんどはモノクロだった)、すごく好きなんだけど、彼らの本質はどんなバンドなんだろうという疑問というか不思議さも感じた(だからより惹かれた)アルバムでした。早くも2ndが楽しみです。
2.大友良英 / 連続テレビ小説「あまちゃん」オリジナル・サウンドトラック
こんなにハマッたTVドラマは後にも先にもないと思います(ついさっきも録画したのをまた観てました)。その大きな理由のひとつとして大友さんの音楽を挙げない訳にはいきません。『あまちゃん』は無音になる演出がかなり効果的なドラマでもあったんですが、この劇伴音楽が素晴らしいというのもその理由だったと思います。今年の一番の後悔は、あまちゃんスペシャルビッグバンドの演奏を生で観れなかったことです。
3.Savages / Silence Yourself
声、リズム、ギターサウンド、ルックス、映像含めたアートワーク、バンドが持っている美学。全部ツボです。こういう、引き攣ったようなゴス~ポストパンクは大好きです。
4.Deafheaven / Sunbather
ナカコーくんのツイートで知りました。こういった絶叫するヴィーカルスタイルの音楽には普段はあまり馴染みがないんですが、このアルバムは別でした。陶酔とか恍惚感が味わえます。シューゲイズ好きにも勧めたい。「ぎゃー!」っと叫びたい気分のときに車でよく聴いてました。自分にとっては去年のMETZ的な位置ですね。このライヴ映像 https://www.youtube.com/watch?v=uC4374TkNYo での前列の男子たち(特に眼鏡の彼)の気持ち、すごくわかるなあ。
5.California Wives / Art History
作品自体は去年のものなんですが、買ったのが今年で上半期に一番よく聴いたアルバムということで。これ聴いてると無くしてしまったいろんなものを思い出します。甘酸っぱさとか。青い春とか。
6.Jagwar Ma / Howlin
セカンド・サマー・オブ・ラヴ、マッドチェスター、『Screamadelica』の興奮再び、です。
7.Haim / Days Are Gone
The 1975と対しての感覚と似たところもあって、ベストヒットUSAのおいしい部分のアップデート感があります。アメリカのポップ・ミュージックの歴史も感じます。三姉妹が並び立つライヴでの佇まいにもシビれました。
8.Disclosure / Settle
何かが新しいというわけではない音だけど、ハウス、ガラージ、2ステップ、ドラムンベース等のポップな成分を上品にまとめたらめちゃめちゃ破壊力のある新鮮な音になった…という印象です。クラブ・ミュージックをディープには知らないけど興味大…という自分みたいな人にはお勧めだと思います。中毒性高し。
9.Son Lux / Lanterns
Sufjan Stevensとプロジェクトをやってたというきっかけで手にしましたが、やっぱり通じるものがありました。Animal Collectiveとか好きな人にもぜひ。
10.曽我部恵一 / 超越的漫画
日常のなんでもない独り言や呟き(SNS的な意味ではなくて)がこんなにも力強いメッセージになるなんて。大名盤。
ちなみに、ベストライヴはフジロックでのHURTS。ライヴに関しては、記憶に残ったものはアルバムほど多くはなかった気がします。
ベストMVは、Arcade Fire「Afterlife」。オフィシャル もよいですが、Spike Jonzeが撮ったYouTube Music Awards用の映像が素晴らしいです。切なさとファンタジーとユーモアが、ライヴ演奏と同化した瞬間のカタルシス! 曲自体も、今年のベストソングなくらい好きです。
Bob Dylanの「Like a Rolling Stone」も面白かった。
蛇足ながら、おバカMV大賞はFIDLARの「Cocaine」。
スペイン、カナダ、シリア、イギリス、アルゼンチン、アメリカと、いろんな国のアーティストが集まったHostess Club Weekenderに参加してて改めて感じたんですが、これからはもっと世界中の面白い音楽を知りたいな、と。で、特に日本の音楽をもっと知りたい。日本のバンドやアーティストももっとストリーミング試聴とかやってくれればと願います。今回挙げた作品の多くは、試聴して「いいな」と思って買ったものだし。聴く機会の多さっていうのも自分の中での評価と無縁ではないと思うし。いろんな点でまだまだ難しいとは思いますが。自分のアンテナももっと磨かなければいけないし。
社会全体も自分の半径1メートルの世界もかなり混沌としてきた感覚があって、来年はどうなっちゃうんだろう、誰かにまた「It’s All Right」と歌ってもらいたくなりそうな気もする…と思う今日この頃。Dylanがどうして今年あの曲でMVを作ったのか、そしてアジカンの新曲の意味を改めてゆっくり考えてみたい。同時に来年は、FIDLARみたいにバカバカくて笑えることもやっていけたらいいなあと思ってます。あと、婚活。
古渓一道(フォトグラファー)
WEB
http://kazumichikokei.tumblr.com/
BIO
主に音楽関係の写真を撮っているフォトグラファーをやっています。音楽と同じくらいフットボールも大好きです。Twitterアカウントはhttp://twitter.com/k_kokeiです。
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