INTERVIEW
TOSHI-LOW「音楽やってる奴らもさ、音楽......音楽だけじゃなくて芝居でも何でもいいんだけど、表現で本当に心の底から何かを変えられる経験をしていたら、僕たちは無力です、何にも変える力がない、なんて思わないと思う。今って音楽があまりに普通にあるんだろうね。バンドもギターも普通にあるし、ライブハウスもいっぱいあって、行かなくてもパソコンで見れちゃうし。"ライブしょっちゅう見てます、YouTubeで"とか平気で言ってくる若い子いるからね」
後藤「ははははは」
TOSHI-LOW「"一回も行ったことないんすけどぉ、BRAHMANってこうだと思うんすよぉ"って、ベラベラ俺に喋ってくる(苦笑)。そういう奴には"一回来な?"って言うけど......でも言ったってわかんないんだろうね」
後藤「そういう奴こそ苗場(=フジロック・フェスティバル)の深夜のオアシス(フードエリア)に来て欲しいですよね」
TOSHI-LOW「そうだね、俺たちの出会いの場(笑)。これさ、この際はっきりさせたほうがいいと思うんだけど。プチ伝説化しちゃってるから、俺とゴッチの出会いの話」
後藤「全然テーマ変わるけど、しときましょうか(笑)。何年か前のフジロック。ウチのドラムの潔が、レオナさん(HUSKING BEE)と繋がってて、それで"TOSHI-LOWさんたちのチームがオアシスで飲んでて、ゴッチ来い、みたいな話になってるよ"って言われて。僕も普通に楽しく飲もうと思って行ったんですよね。だから苦い思い出は一個もないんですけど。それでTOSHI-LOWさんに"はじめまして、後藤です"って挨拶して」
TOSHI-LOW「そうだよね、なんとなく覚えてる」
後藤「それでイッキ対決をすることになって、焼酎一杯並々イッキして。そのあとなぜか腕立て、拳立て対決することになって。それはTOSHI-LOWさんじゃなくて誰かが言い出したんですけど」
TOSHI-LOW「あ、違う人だったの?」
後藤「そう、誰かわかんないけど、周りにいた、ちょっと怖っぽい人が言い出して。で、やったら俺のほうが回数多かったんですよ」
TOSHI-LOW「マジで? 負けたんだ俺(笑)」
後藤「うん。俺勝っちゃったと思って。それでTOSHI-LOWさん"お前根性ある、飲むぞ!"みたいな感じで」
TOSHI-LOW「ははは! 認められたんだ、俺に(笑)」
後藤「認められた(笑)。その、拳立てしろって言った人も"お前根性ある"みたいになって。そっから俺、この場にいてもいい、みたいな感じになったんすよ(笑)」
TOSHI-LOW「そうなんだ......俺が知ってる話と全然違う(笑)」
後藤「でもメンバーんとこ帰ってみたら、ゴッチがTOSHI-LOWさんにいじめられて大変だった、みたいな話になってて(笑)」
TOSHI-LOW「俺もそういう話を翌日メンバーから聞いたから、俺がいじめてたんだと思い込んでた(笑)。いろんな伝聞入るんだねぇ」
――でもBRAHMANとアジカンって実は接点ないですもんね。この対談だって意外だと思う人が多いかもしれない。
TOSHI-LOW「あの時しか接点ないもんね。普段かぶってないし。ただ、もともとそんな遠いバンドだとは思ってなかったけど。パンクではないけど、エモがだんだんギターロックになっていく時期に出てきたバンドっていうか。最初の頃とか叫んでたじゃん? ハスキンみたいだなってイメージがあって。これは全然悪い意味じゃなくて」
後藤「はい。HUSKING BEEとは一緒にツーマンやったり。ただ、僕らって、両サイド、ギターとベースにはパンクの血が一滴も入ってないんですよ。ブルーハーツとかは通ってるけど、基本的にはUKロックとかが好きで。"AIR JAM"世代のCDとか多分1枚も持ってない。ドラムはもうハイスタのコピーバンドやるし"AIR JAM"行くし、みたいな感じですけど」
TOSHI-LOW「そうなんだ。へぇー」
後藤「僕は、パンクはいいと思ったら聴く、ぐらいの。セックス・ピストルズはわかんなかったけど、LAUGHIN' NOSEは好きとか。あとバッド・レリジョン好きだったり。でもBRAHMANとかAIRJAMシーンの人たちって、ちょうど世代がひとつ上、って感じで。ひと世代上って上手く絡むの難しくないですか?」
TOSHI-LOW「難しいよ。中一のとき中二は嫌いだもん。いじめるし。でも中三は好きなの。可愛がってくれるから(笑)。たぶん歳が近いと意識しちゃうんだと思うよ」
後藤「そうそう、間近に見てるから、よけい意識しますよね」
――でも、そういう壁も今回の震災で全部流れて。つまらないものが全部消えて、その人が何なのかっていう本質だけが見えるようになった。
TOSHI-LOW「流れたね。っていうか、今まで何してたんだろうって思うぐらい」
後藤「その人の本質は改めて感じますね」
TOSHI-LOW「そう。その本質を見据えた上で音楽聴き直すと、聴き方も変わるしね。アジカンもさ、俺ゴッチのツイートとか見てもっかい聴き直したんだ。あぁ、この頃から嘘ついてないんだなって思った。要は売れるために体裁のいいこと言ったりしてなくて。そんなふうに自分の聴き方、感じ方が変わるから面白いよね。で、ツイッターでオッサンたちにイジラれてキレてるゴッチとかさ、覚悟できたんだな、っていうのがわかるし。もともと持ってた本質なんだろうけど、震災を経てわかりやすく見えるようになった」
後藤「最初戸惑ってましたけど、なんか清志郎さんファンのオッサンにボンクラみたいな言い方されて、だんだんカチコーン!ってきちゃって」
TOSHI-LOW「見てた見てた。ボンクラ扱いされてんの見てた(笑)」
後藤「もう、ミュージシャンだからって音楽だけに限定しないほうがいいんですよね。だってもう突き詰めていくと、俺たちは原発のことしか歌えなくなっちゃうのか? みたいな話になるので。清志郎さんだってジョン・レノンだって別に何を変えたかはわかんない。そう言いたい気持ちはあるんですよ。反原発の歌を聴いて喜んでる中年の奴らはいるけど、冷静に考えたら、俺が原発の歌を作って原発なくなんのかよ? そうじゃねぇだろ? みたいな。だからだんだんね、こんなオッサンたちに、なんで清志郎さんを盾に偉そうな顔されなきゃいけないんだって思い始めて(笑)。別にお前は清志郎さんじゃねぇだろう」
TOSHI-LOW「ほんとだよね(笑)」
後藤「なんか、まったく無反省っていうか。あとは"フォークとかロックが昔は有用だった"みたいなことを言い出すオッサンもいて。いやいやいや! その成れの果てが今でしょう? って」
TOSHI-LOW「ほんっとにそう」
後藤「なんも変わってないんだよって。こういうことがもう音楽の無力さを証明しちゃってるというか。だったらもう俺がやるしかねぇ、って思った」
TOSHI-LOW「今までがどうだったかなんて、ホントどうでもいいよ。それこそ人の繋がりだってそう。もう"ここから"どうするのか、ってことに論点を絞りたいし、そうやっていくべきだと思ってる」
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TOSHI-LOW -PROFILE-
BRAHMAN/OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのボーカル。オリジナル作としては、約3年半ぶりとなるBRAHMANのニュー・シングル『霹靂』を9/7(水)にリリース。同作を携えた『2011 TOUR 「霹靂」』を10/8(土)沖縄ミュージックタウン音市場からスタートさせる。 |
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
夢の跡発売中!! / TFCC-86353 / ¥1,600(tax in) / トイズファクトリー |
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