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(2011.06.20)
TOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU) ×後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)[前半]

3.11から3ヵ月。被災地復興に向けて、誰しもが"自分が今できることは何だろう"と考える中、いち早く被災地に駆けつけ、今も支援活動を続けるTOSHI-LOWさんの姿は、ミュージシャンはもちろん、多くの人の心を奮い立たせたに違いない。今回は、"ミュージシャンとして、ひとりの人間として、今できることは?"をテーマに行ったTOSHI-LOWさんと後藤の対談を、前半、後半に分けてお届けします。 まずは、前半を――。(取材・文:石井恵梨子  撮影:三吉ツカサ)

後藤正文「TOSHI-LOWさんは今回、すごく早い段階から被災地の支援に入られていて。びっくりしたのと同時に感心したんですよね。なんか、アーティストとして名前を出してやることに批判ってあるじゃないですか、世の中に。なんでそんなこと言う奴いるんだろうなって僕は思うけど、黙ってやるのが美徳、みたいな風潮が世の中にはあって。でもそういうのをぶち破ってTOSHI-LOWさんとBRAHMANのチームが活動を始めたことに自分が感化されたのもあるし、やっぱりここは堂々とやりゃあいいんじゃないかって気分にもなって」

TOSHI-LOW「まぁ、黙ってやってやれるレベルだったらね、名前出さなくても良かったと思うけど。やれるレベルじゃなかったから、今回は」

後藤「うん、TOSHI-LOWさんも雑誌のインタビューで言ってましたけど"俺がやって、少しでも真似してやる奴が増えていけば"っていう。それはすごく腑に落ちるというか。もうチマチマやってらんないな、って思ったんで」

TOSHI-LOW「まぁミュージシャンがこういうことやるべきかどうか、っていうのはまた別の話だと思うんだけど。ただ俺の場合、もう批判は怖くなかったから。今まで相当受け狂ってるわけだから、何をやったって。こんなことやりだす前から、それこそライブのMCで一言も喋ってなくてもずーっと批判の嵐だから(笑)。大丈夫、そこは慣れてる」

後藤「なるほど」

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TOSHI-LOW「ただ、自分でワルぶって悪いほうに誤解されるならいいんだけど、こういうボランティア的なもの、支援活動に自分の名前を出すのはやっぱり一瞬躊躇したよ。でも(被災地に)行ったのが早かったから、これはもうチマチマやってても無理だなと思って。それでメンバーに声かけたら、みんな"堂々とやれ"って言ってくれて。それがやっぱデカかった。一人でも反対したら止めようと思って、自分一人だけでやろうと思ってたし」

後藤「そっか。やっぱり地元だっていうのは大きいですか」

TOSHI-LOW「地元は大きいね。動く大義名分があるというか」

後藤「僕も、自分の静岡でこれが起きてたらって考えて。何したかわかんないですけど、まるっきり地元に帰っちゃって何かやったかもしれない」

TOSHI-LOW「わかんないよ? 沖縄に逃げたんじゃないの?」

後藤「はははは。"怖い!"つって」

TOSHI-LOW「キャーキャー言いながら、人をかき分けて逃げたかも(笑)」

後藤「羽田で人を怒鳴り散らしてね(笑)」

――今はそれぞれ活動しているお二人ですけど、改めて、3・11をどう過ごしていたのか、そこから何を考えて行動を起こすに至ったのか、教えてもらえますか。

TOSHI-LOW「地震の時って何やってたの?」

後藤「リハしてました。ツアーの。まぁそのツアーもまるごとなくなっちゃったんですけど、あと2日ぐらいやればリハも終わりで、ストリングスとかも全員入れて合わせましょうって集まってた日で」

TOSHI-LOW「俺らもリハやってた。でもそん時はね、"これでリハやめれる"ぐらいの感じだった。みんなで"やめちまおう、やる気しなくなった"つって言い訳して(笑)。地下だったから余計揺れが大きく感じたのかなぁとも思ってて。でも外出てみたらみんなキャーキャー言ってるし、家帰ったらいろんなモノとか倒れてて。ショックだったのは、俺が作ってたニンニク醤油が全部倒れてたこと」

後藤「ははははは!」

TOSHI-LOW「あと少しでできたのに。そして臭ぇの! 何がショックってすげぇ臭ぇのよ(笑)。でも最初の段階でヤバいってわかった? すぐに」

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後藤「僕は......揺れ方はちょっとマズいなと思ったんですよ。多分、これ東京じゃないどっかで地震が起きてると思ったんですよね。直下型ならもっと酷いはずだってイメージもあったし。もしかしたら地元かもしれない、東海地震かもしれん、って思いがあって。で、自宅に帰ろうと思ったけど、高速は動いてないし電車もダメで、とりあえずは待機して。で、ニュースつけたらお台場が燃えてるし、さらに津波の映像が入ってきて。そこで初めて"わ、わ、わ!"ってなって。でもその段階では俺、みんな高いところに逃げてるだろうって考えてた。東北の人たちって津波対策でデカい堤防作ってるくらいだから、もう慣れっこなんだろうって」

TOSHI-LOW「俺も同じこと考えた。名取市(宮城県)の映像見てる時に、まぁ(地震発生から津波まで)時間もあったし、その間に全員避難してると勝手に思い込んでた。無人の街が流されてるんだと思ったけど、でもカメラがズームしていったら幹線道路が見えて、車が逃げまくってて。そこで"えぇー?"って、やっと状況を理解して。東京はだいたいそんな感じだよね。最初はそこまで実感なかった」

後藤「あ、でも僕は神奈川県だから。停電で、マンションも真っ暗で、体育館に避難したんですよ。夜中の3時くらいまで。まぁ電気が復活して帰れたんですけど、ちょっと避難所の疑似体験でしたね。あれは......ちょっといただけでもしんどい。神奈川まで遊びに来て帰れなくなった人とかもいて、地元の人だけじゃないっていう状況もまた異様で」

TOSHI-LOW「自治体の人たちは来てたの? 物資とか」

後藤「自治体はもう来てました。市長とかも。それで毛布がバーッと届いて、あとはあんまり美味しくない食料が。乾パンだと思ったら乾パンじゃない、マリービスケットを硬くして味なくしたようなやつが」

TOSHI-LOW「それ絶対美味しくないね(笑)」

後藤「明らかに混ぜただけ、っていうチャーハンの冷えたやつとか。冷たい床の上でそれ食って、隣のお爺ちゃんと話とかしてて。"今日はちょっと遊びに来ただけなんだけど、全部止まっちゃって家に帰れない"とか言うんですよね。まぁ夜中に続々と知り合いが迎えに来たりして、みんな帰っていくんですけど、これ、津波で帰るところがなくなった人はどうなるんだって。もう考えただけで(ダメージ)もらっちゃって。翌日とか頭痛くなって、リハ全然行けなくて。起き上がれなくなっちゃいましたね」

TOSHI-LOW「そうなんだ。俺は地元があるじゃない? 11日の段階では電話が繋がらなかったし、でもネットとかでなんとなく情報は入ってくるじゃん。大洗(茨城県)が大変なことになってるって聞いて、ウチの婆ちゃん家もそこだから、あぁ婆ちゃんさらわれたべ、って考えたし。まぁ2日ぐらいしたら電話も繋がるようになって、実家から"婆ちゃん大丈夫、家にいるよ"ってわかったんだけど。で、俺もすぐ行きたかったけど、まだ行けない。(国道)6号っていう茨城につながってる道もダメだし、常磐道もダメっていうことで、2日か3日ぐらいモジモジモジモジしてた。それで東京で買い占めしてる人達とか見てた」

後藤「俺も。スーパーに行ったらもう人が並んでて、水はないし、普段売り切れてない売り場が何もなくて」

TOSHI-LOW「ねぇ。それも団塊の世代より上のジジイが酷くて。ババァが酷いのはいつの時代でも一緒じゃん(笑)。オイルショックの時に買い占めするとか。それは理解できたんだけど、俺、あんなにジジイたちが役に立たないことにびっくりした。孫とか連れてバーッとカゴにカップラーメンとかワンサカ入れてるわけ。よく見たら『激辛』なの。絶対あなた食えないから、って思うんだけど(笑)、もう何でもいいからって感じで焦っちゃって。一家族一個って言われてる商品でも、孫とかに無理やり持たせて、レジで"すいません、ご家族じゃないんですか?"って聞かれても"いや、家族じゃありません!"みたいな。孫は固まっちゃってるし。もうどうすんの? それ、孫は一生覚えてるよ? っていう。みんな戦争を体験したり、直接体験してなくてもギリギリ知ってる世代じゃない。そういう人たちがなんであんな焦ってるのかなって思ったけど、やっぱ知ってるからなのかね?飢えの怖さを」

後藤「あぁ、はい」

TOSHI-LOW「あともう一個聞いたのは、そういうお爺ちゃんたちって、戦後に子供だったじゃない? あの時って米兵から"ギブ・ミー・チョコレート"で優しくしてもらえたって言うけど、でもお菓子をもらった子供、後ろからガツーンって殴られて、結局はチョコレートを取られたっていう。それをやってたのが実は大人なんだって。大人の日本人」

後藤「へぇー」

TOSHI-LOW「そういう体験が少なからずあるんじゃないかなって思った。本当に怖いのは自分たちの同胞であるっていう感覚を知ってるから、あんなにパニックになるのかなって。だって一番どっしり構えてる世代だと思ったの。"まぁまぁ、みなさんやめなさい"って、水戸黄門的に言ってくれるのがジィちゃんたちだと思ってて。そしたら一番慌てふためいてて。もしかしてあの人達は、かつての大人に傷つけられた子供たちなんじゃないかなって」

後藤「なんか世代によって対応が分かれてた感じでしたね。僕は静岡に一瞬帰ったんですけど、地元でもガソリンがない、トイレットペーパーがないっていう騒ぎが起こってて。でも30代とか40代、あと俺の父ちゃんとか母ちゃんとかは早い段階から物資集めて動き出してたり。だけど例えば、東京では本気で逃げようって慌ててる上の世代の人もいて。その温度差すごいなぁって」

TOSHI-LOW -PROFILE-

BRAHMAN/OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのボーカル。オリジナル作としては、約3年半ぶりとなるBRAHMANのニュー・シングル『霹靂』を9/7(水)にリリース。同作を携えた『2011 TOUR 「霹靂」』を10/8(土)沖縄ミュージックタウン音市場からスタートさせる。
またOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND 主催『New Acoustic Camp 2011』を10/15(土)、16(日)道志の森キャンプ場(山梨県道志村)で開催。
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