INTERVIEW
───できる限りで大丈夫ですので、よろしくお願いします。では、まず1曲目から。
01. THE LOVE I'M SEARCHING FOR / YEAH YEAH YEAHS
マット : ことの経緯はさっきもちらっと話したけど、僕は時々曲作りに専念できるよう普段の日常とは離れた場所に行くんだ。それでスペインに向かうところで友達から電話があって、彼等がこの曲をやったと聞いたんだ。彼等の音楽は好きだったから、まずびっくりした。非常に嬉しかったよ。
彼等とはスペインのフェスで一緒になったことが実はあって、確か僕らが彼等の前にプレイしたんだったと思う。彼等のライヴはとにかく凄いからね。彼女のパフォーマンスは本当に目を見張るものがある。でも、その時は話をするなんてこともなかったんだ。だから彼等がカヴァーをしたってのを聞いてびっくりした。フェスで一緒になったばかりだったからね。
この曲は、(曲作りで行っていた)スペインから戻ってから聞いたんだけど、直ぐに気に入ったよ。まず彼女の声が凄くいい。そして、歌詞も違っていて最高。今回のアルバムを聞き直すと、中には歌詞が違っているのが幾つかあるんだけど、思わずこっちのほうがいいのかも、って思ってしまうんだ。歌詞に忠実に歌うことが一番大事じゃないってことを再認識させられたよ。書き手にとって細かい言い回しまでとことんこだわるのは大事かもしれないけど、他の人がそれを全く無視した形で彼等なりの歌い方で歌っているのを聞くと、まるでシャワーで歌を口ずさむ感覚で「いちいち気にしたってしょうがない」って思うんだよね(笑)。そのほうが良く聞こえたりすることだってあるしね。ということで、このヴァージョンは凄く気に入っているよ。そして彼等のようにもともと好きで聞いていて、尊敬もしていたバンドが自分の曲を取り上げてくれたってことだけでも光栄だったよ。
02. FRIENDS OF P. / TOKYO POLICE CLUB
マット : まず、この曲で歌っている女性ボーカルのサラはレンタルズでも歌っている人なんだ。
彼等には女性ボーカルがいないバンドだから、レコーディングしていた時、女性コーラス・パートができる人を探していて、だったら本家に聞いたらいいじゃないかってことになったらしく、僕らに連絡してきたんだ。良かったんじゃないかな。
彼等のヴァージョンの何が気に入っているかって、リード・シンガーがベースも弾くんだけど、この曲の彼のベースが正に僕のツボにハマって、「このベース・ラインめちゃくちゃいいね」って思ったんだ。こうやってくれて本当にありがとうってね。
彼等はロスにライヴをしに来たんだけど、これは彼等のライヴでの定番だっていうんで、僕に一緒に飛び入りで出てくれないかって依頼があったんだ。彼等は本当に自分達らしいアレンジで自然に曲を演奏するから、彼等のファンにとっては僕が出ようと出まいとあまり関係ないと思ったんだけど、キーボードとタンバリン担当ということでステージに一緒に出て、バッキング・ボーカルも歌った。で、やっぱり彼等のファンにとっては「何???誰???」って感じだったと思うんだ(笑)。
実は同じようなことが前にもこの曲であってね。ブラーがこの曲を凄く昔にカヴァーしたんだ。で、一緒にツアーを回っていた時、彼等はフランスのテレビ用にこの「Friends Of P」のカヴァーをやって、そこに僕もバック・コーラスで参加したんだ。その時のことを思い出したよ。
03. WAITING / MOTION CITY SOUNDTRACK
マット : 彼等とはツアー中に知り合ったんだ。僕達のNYのショウを彼等が見に来てくれた時に雑誌用の対談を一緒にやって、彼等が僕の携わった『ピンカートン』の曲をカヴァーしたことがあるとか、レンタルズのキーボードに凄く影響されているという話をしたんだ。
彼等もレンタルズと同じ悩みを抱えているっていう話もした。つまり、どれだけキーボードをたくさん使っていようと、人から必ず「もっとキーボードを使ってほしい」と言われるっていう(笑)。
1曲丸々キーボードでプレイしている曲だろうと、5000台のキーボードを駆使した曲だろうと、絶対に「いやぁ、もう少しキーボードがあったらいいね」って言われるんだ。そういう話で彼等とは意気投合した。その直ぐ後くらいにこのカヴァーを彼等がやったんだ。めちゃくちゃいい連中だったよ。本当にいい奴らだった。
04. HE CRUISE / MORNINGWOOD
マット : 実はモーニングウッドとは面識が全くないんだけど、この曲をプロデュースしたのがスマパンのジェームス・イハだったんだ。ミックスまでやったかは定かではないけど、レコーディングを手がけ、プロデュースを彼がやっている。彼とこの曲の話は特にしていないんだけど、彼とはもう何年も昔に知り合って、彼も本当にいい人だよね。って、みんないい人って言ってるみたいだけど(笑)。
彼もかなりいい人で、彼がこの曲のプロデュースをしている。バンドに関しては彼等がアメリカで凄く人気があるってこと以外はあまり知らなかったんだ。
で、彼等がやってくれたヴァージョンだけど、僕はツアーに出る時、ライヴでアルバムの曲を全部そのままのアレンジでやるのはあまり好きじゃないんだ。少なくとも半分はオリジナルに忠実にやって、残りは楽しく全く違う形で想像力を膨らませながらやりたいと思っている。で、この曲のこのヴァージョンを最初に聞いた時、オリジナルよりも彼等のヴァージョンのほうが断然いいと思った。
だから、ライヴでこの曲をやった時は、彼等のアレンジをみんなで覚えて、彼等のヴァージョンでやったんだ。女性ボーカルの歌い方から楽器のパートまで、全て彼等のヴァージョンを参考にした。だから正にアジカンが「GETTING BY」を覚えた時のように、僕らもみんなでこのモーニングウッドのヴァージョンを聞いて懸命に覚えたんだ。「キーボードは何を弾いてる?ベースは?」って具合にね。オリジナルとは全く違うから。でもこっちのほうが僕は好きだから、ライヴではいつも必ずこっちのヴァージョンで演奏するんだよ。
05. MY HEAD IS IN THE SUN / ABERFELDY
マット : 彼等のことはそこまで良く知らないんだけど、彼等がやったカヴァー・ヴァージョンは気に入っているよ。ストリングスのピチカートな感じに奏でられている箇所なんかは凄く陶酔的で面白いと思う。
で、この曲も歌詞を少し変えていると思うんだけど、何でそれに気付いたかっていうと、日本盤用に歌詞を提出しなきゃいけなくて「オリジナルの歌詞を送ってくれればいいから」って言われたんだけど、聞いた感じ、中には絶対に歌詞を変えているのがあるってわかっていたから、全曲聞き返してみたんだ。ヤー・ヤー・ヤーズのヴァージョンなんかは完全に違っていたし、この曲も、「あ、変わってる!」てその時に思ったんだ。
もともと自分で書いた歌詞なのに、他の人が歌うのを聞き取りしながら「なるほど。こういうことを歌っているのか」って思うのは不思議な感じだったよ。でも、彼等がカヴァーしてくれて光栄だったし、凄くいいカヴァーだと思う。
06. THE MAN WITH TWO BRAINS / TEGAN & SARA
マット : ティーガン&サラはカナダ出身の双子の姉妹で、既に5、6枚のアルバムを世界的にリリースしている。彼女達のアルバムを友人から貰ったのをきっかけに彼女達の大ファンになったんだ。で、ある時彼女達の歌をチャリティー・コンサート用に覚えたいと思ったんだけど、よくわからなかったんで、サラにお願いして歌を教えてもらったんだ。
それ以来ずっと友達で、一緒にレコーディングも何度かしたし、ライヴで共演したことも何度もある。彼女達の「So Jealous」という作品で僕はキーボードを弾いていて、「The Con」というアルバムでは僕が半分ベースを弾いていて、AFIのベーシストが残り半分を弾いている。つまり、僕がサラの曲で弾いて、彼がティーガンの曲で弾いたんだ。
彼女達は非常にユニークなグループで、姉妹であるというだけではなく、2人とも同じくらいソングライターとしての才能に恵まれている。そのこと自体非常に希なことだと思うんだ。同じくらい作品には貢献していて、ソングライティングのスタイルは全く違うんだけど、その質の高さという点では共通しているという。もう何年も友達で、今回参加してくれた人達の中では最も親しい間柄なんだ。僕にとっては妹達であり、精神科医のような存在でもある。(笑)そして今回僕から話を聞いて友達だから「是非参加したい」と言ってくれたって例でもある。お互いの活動をできる限り応援し合おうとしているから、きっと僕のことを応援する意味で参加してくれたんだと思う。
07. GETTING BY / COPELAND
マット : コープランドとはアメリカのツアーを一緒にやったことがあるんだけど、これはそのツアーの前にレコーディングされたんだ。原曲とは随分違うものに仕上がったヴァージョンの一つだよ。
歌詞を若干変えているっていうのと、ピアノ基調の曲に仕上がっているってのが大きい。彼等はもともとピアノを核としてるバンドだからね。僕はそういうバンドを経験したことはないけど、ツアーを一緒に回っていても、ステージの真ん中にピアノがあって、他の楽器がそれを支えているっていう。
で、このカヴァーも自分達のスタイルに忠実に、ピアノが中心にある。だからオリジナルのロック調の曲よりも色彩豊かだし、技術的な話をするとコードにバリエーションを利かせていたりして曲の雰囲気や質感を変えている。歪んだギターの音ではなくピアノならではのものにね。
08. PLEASE LET THAT BE YOU / ASH
マット : アッシュとはもう本当に昔からの付き合いで、僕がまだウィーザーにいて『ピンカートン』の時に一緒にツアーをした時に友達になった。彼等はまだ本当に若くてね。ティムなんかはきっとまだ17歳とかだったんじゃないかな。親同伴ではなかったはずだけど(笑)、いてもおかしくない歳だった。ティムだけでなく、バンド全員と仲良くなったんだけど、僕がレンタルズのセカンド・アルバムをロンドンでレコーディングしていた時、ティムがスタジオに立ち寄ってくれて「Hello Hello」で歌ってくれたんだ。それと「Overly」という曲でアコースティック・ギターを弾いてくれた。彼は最高だった。
あれをきっかけに、近所にいそうなミュージシャンに連絡して、気軽にアルバムに参加してもらうようになったんだ。彼のお陰でもある。アッシュはちょうどヨーロッパで大成功をしていた頃だったのに、スタジオにふらっと来て「何をやって欲しいから言ってくれればやるよ」と言う感じだった。 本当に気前が良いいんだ。曲について話をして、いくつか試しに弾いてくれてね。彼と仕事をしたことがある人だったら彼がどれだけ仕事がやりやすい楽な相手か知っているよ。
で、彼等がアルバム『Meltdown』を初めてカリフォルニアでレコーディングした時、僕達が「ピンカートン」をレコーディングしたのと同じスタジオでレコーディングしたんだ。で、ベースのマークがある曲で「ピンカートン」と同じベース・サウンドが欲しいと言ったんで、僕は当時使った機材を全部持ってきてその曲に使ってもらった。凄くクールだったよ。彼等とはこれまでそういう様々な交流があるんだ。
09. MOVE ON / HELIO SEQUENCE
マット : 彼等のカヴァーがおそらく最もオリジナルからかけ離れているんじゃないかな。オリジナルにはないパートを書き加えているしね。最後のヴァースの歌詞は歌い手が思いついたままに歌っているんだと思う。それも含めて気に入っているよ。アコースティックな浮遊感がある。映画のサントラのような雰囲気で、凄く癒されるサウンドだしね。
レンタルズ僕もソロ・ツアーをやる時は、アコースティックに、こういう感じで曲を演奏するんだ。ここまで上手くできていないんだけど、彼等のように心が落ち着く、アンビエントなサウンドを出していたと思ってやっている。彼等のことはあまりよく知らないんだけど、きっとこの曲が彼等の音楽を表しているわけではない気がする。他のバンドのように、自分達のスタイルでカヴァーするんじゃなくて、「せっかくだから何か面白いことをやってみようか」といってやったんだと思う。でも美しい曲に仕上がったと思う。
10. CALIFORNIA / OZMA
マット : 彼等はこれを僕達と一緒にツアーに出る準備をしている最中にレコーディングしたんだと思う。オズマのメインのギタリストのライアン・スレイガーがツアーでは僕達のギタリストも兼任してくれたんだ。だからNANO-MUGENの時にギターを弾いていたのも彼なんだ。オズマのクリエイティヴの多くを担っているメンバーだよ。
で、彼等のこのヴァージョンは「ぶっ飛んでるな」と聞く度に思う。変なことをいろいろやってるよ。予期しない展開だったり、凄く抽象的だったり、途中壮大に盛り上がる箇所もあったりして、気に入っているよ。彼が活動を始めたのはちょうどレンタルズと同じ時期で、当時まだ13歳か14歳でバンドを結成したんだ。で、何年か経ってから仲良くなって、ツアーを一緒にやったり、NANO-MUGENにも一緒に出たりした。ちょうどその頃、このカヴァーを彼等はレコーディングしたんだ。
11. HELLO HELLO / ASIAN KUNG-FU GENERATION
マット : この「HELLO HELLO」のカヴァーで面白いのは、レイチェル・ヘイデンが参加していることかな。彼女は僕が初めて一緒にレコーディングした人でもある。
レンタルズで核となっているものの一つは、男女のボーカルの掛け合いなんだ。どんな曲であろうと、その男子と女子の間の掛け合いが上手くできていなければ、僕にとってはレンタルズの作品ではなくなるっていうくらい、凄くこだわっているんだ。
その理由がレイチェルなんだよね。ソングライターとしてまだ駆け出しだった頃、レイチェルはThat Dogというバンドにいたんだけれど、僕はそのバンド、特に彼女の歌声が大好きだったんだ。凄くピュアな歌声だった。で、恥ずかしいのを承知で僕は彼女のところにいって、「何曲か曲を書いたんだけど、手伝ってもらえないかな」と聞いたら彼女は「もちろん、喜んで」と言ってくれた。このことが僕にとってもの凄い自信に繋がったんだよね。なんてったって彼女のバンドが大好きだったわけだから、「やったー!もしかしたら僕もやっていけるかも知れない」って思わせてくれたんだ。
それからいろんな曲を彼女とレコーディングし、彼女の妹ともレコーディングをしたりしたんだけど、つまりは、彼女が最初に「貴方が書いたこれらの曲を一緒にレコーディングしたいわ」と言ってくれたことが大きかった。
それまでは男女の掛け合いじゃなきゃいけないなんて考えていなくて、単純に彼女の歌声が好きでお願いしたんだけども、そこから男女の掛け合いが生まれたんだよ。
このカヴァーを聞くと、彼女独特の声が直ぐに耳に入ってくる。そしてまた、レイチェルみたいな、自分が音楽を作り始めた頃の友達と、ゴッチのような新しい友達が共演しているってことがまた嬉しい。違う時代に知り合った2人が、生まれ育った背景も全く違う2人なのに、一つの曲で一緒に歌っているってことが感慨深いな、って思うんだ。
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INFORMATION
レンタルズトリビュート
LOST OUT IN THE MACHINERY2010.6.23 ON SALE!! / KSCP-936 / ¥2,520(tax in) / only in dreams / Ki/oon Records 元ウィーザーの元祖泣き顔男、マット・シャープ率いるレンタルズ。彼らの楽曲を愛するバンド達によって、今極上ソングが蘇る!日本盤のみレンタルズ最新シングル"A ROSE IS A ROSE"の日本語ヴァージョン(THE RENTALS & MASAFUMI GOTOH)をボーナストラックとして収録! |
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