はじめまして。あけましておめでとう。佐々木中と申します。さて、自己紹介代わりに。
ヘイターのみんな、見てる? おかげさまでどんどん本が書けます。念願のグロイター版『ツァラトゥストラ』翻訳もできましたし、安吾論『戦争と一人の作家』も書けましたし、小説もまたまた一本書いてもうすぐ出ます。書きすぎなんで、来年は控えてゆっくりまた勉強しようと思う。本当に、心からありがとうを言うよ。
さて、もちろん「アルバム」って単位で動いてない音楽ジャンルのほうがもはや多いわけで、そのなかで「ベストアルバム」を選ぶとなると、クラブ・ヒットとか漏れてしまう。ヒップホップにかぎらず、ダンスホールとかも。コリアンR&Bとかも選びたいのはシングルばかりで、そこはゴメン。楽曲単位で出していくとリストアップしきれなくなるし。
涙ながらにリストから削ったものもふくめて、素晴らしい音楽が鳴り響いていた一年でした。2016年は悲しい、うんざりすることばかりだったけど、本当にまだまだ人間やれるな、この世界ってまだ行けるな、と思わせてくれる音楽っていっぱいあった。危機の時代だからこそ、ということかもしれない。やれる方に賭けるかやれない方に賭けるかならやれる方に賭けるしかないわけで、やはりそれは好きな曲を鼻歌で歌いながら、口笛でも吹きながらやりたい、不格好でも愉しくダンスしながらやりたいな、と。
Bruno Marsが1位で、他はみな同じく2位です。彼のことはJBやMJと並んでもはやBMと呼ぶべきかもしれない。ブレイクしたときには、Cee LoやSnoopのあの曲もこの曲も無名時代の彼の作曲だったの?と後から驚いたものでした。
前述の理由で、特にマニアックなものは入ってない。説明が必要なのはCerroneくらいかなあ。彼は御年65歳になられるフレンチ・ディスコのレジェンド。1曲目の”Therapy”から”Move Me”を経て”Illuminate Me”にかけての流れなんてもう、完璧。坐ってないで、踊ってよ。坐って聞く音楽ではないと思うよ。Nile RodgersやAloe Blaccをフィーチャー。
あと、アルバムだけじゃ取りこぼすアーティストについて一言。Mayer Howthorneは安定の一枚。なぜか日本では発売されていない10月末にリリースされた最新EP ”Party of One EP”の三曲もとても良くて、あわせ技でチャート入り。J.Coleもアルバムの前に出てアルバム入りしてない二枚のシングル”False Prophets”,”everybody dies”もとともにあわせ技一本。
そして夏の終わりにクセになっていちばん繰り返し聞いていた曲は他にあって、underslowjamsのPhonetic Codeってアルバムに入ってる「酩酊」。これはSEX山口さんから教えてもらった、本当にエモーショナルな、いい曲。ぜひお試しあれ。
ゴッチのソロとアジカンの新録は、ここであらためて勧めなくても良いよね? でも今年もソロ・アルバムから一曲、講義でかけたなあ。
それでは!今年もいい音楽がたくさん生まれる世界でありますように!その音楽ほどにも美しい世界でありますように!
BIO
作家、哲学者。京都精華大学准教授。著書に『夜戦と永遠ーフーコー・ラカン・ルジャンドル』(河出文庫)、『切りとれ、あの祈る手を ー〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話』(河出書房新社)、『晰子の君の諸問題』(河出書房新社)、『夜を吸って夜より昏い』(河出書房新社)など多数。いとうせいこう氏と「小説チャリティ・セッション」を試み、七尾旅人氏の「百人組手」にも出場。2017年1月7日に最新小説「私を海に投げてから」が『文藝』に掲載される。