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木幡 太郎(avengers in sci-fi)が選ぶ2015年 ベストアルバム

What Went Down─Foals

Wonderlust─Kid Wave

Get To Heaven─Everything Everything

Currents─Tame Impala

All Possible Futures─Miami Horror

Undertow─Drenge

Sound and Color ─Alabama Shakes

Born In The Echoes─The Chemical Brothers

Vitals─Mutemath

Petals─Darlia


2015年における作品の意味とか存在価値はとりあえず置いといてよく聴いたなと思う作品達です。

1.What Went Down / Foals
リリースする度に「そう来たか」と思わせてくれる貴重なバンド。表題曲は前作収録のInhalorでの90年代風クワイエット&ラウドなサウンドを継承しつつ、オルタナ/グランジを通り越してポスト・ハードコアまで接近したとかいうと言い過ぎなんだろうか。ライブでのハンドマイクと二階席から飛び降りのコンボとか絶対意識してるだろ。ちなみに初回CDにはフランスの保養地で行われたレコーディングの模様が収録されたDVDが付属しており、神経質で気難しそうな佇まいと肉感ボディを兼ね備えたフロントマン、ヤニス・フィリパキス氏が影でメンバーから「デブ」というあだ名で呼ばれていそうな空気を存分に感じる事が出来る。

2.Wonderlust / Kid Wave
歪んだギターに甘いメロディ。あまりにも80〜90年代インディーぽい音なので まさに現代のサウンド云々みたいなレビューには違和感を感じる。ダイナソーJr.とかソニックユースが引き合いに出されそうだが、そこまで尖ってはいなくて極限までシンプルなギターロックという感じ。この手のロックにはなんとも言えない青春感がある。が、しかし悲しいかな音楽的成長と共に失われてしまう種類のものでもある。やがて来るサヨナラの事を青春というんだね・・とか激臭を放つ言葉を添えて聴きたい。

3.Get To Heaven / Everything Everything
Foalsとともに人気と冒険精神を併せ持ったうらやましいバンドだ。なんとなくRadio HeadのOK Computerを感じさせるところがあったり人力ドラムンベースが飛び出したりと、実情は分からないけどメンバーの年齢的にも音楽に目覚め始めた時期に触れた種類の音楽に回帰しているのかなと思う瞬間もある。FoalsもそうだけどUKアラサーが流行に縛られずのびのびやり始めてる印象である。

4.Currents / Tame Impala
個人的に前作収録のFeel Like We Only Go Backwordsがジョン・レノンを継承、更新するような四半世紀に一度クラスのクソ名曲だったのでてっきりその道を極めるのかと思いきや、新譜はパンティー一丁に太ももまで隠れるでかいシャツを着て、死んだ恋人の幻とろくろで壷を作るときに聴きたくなるようなアダルトな雰囲気だった。昔のMTV風のモヤッとした画質の映像が頭をよぎった。

5.All Possible Futures / Miami Horror
オーストラリアからは何故か「アラサー世代にとってのアナクロ」に忠実なバンドが多く出て来る印象だ(例えばCut Copyとか)。M3のLove Like MIneとか電車の中で聴いたら一目もはばからず古ッ!とか言ってしまいそうだ。現代っ子はどういう感覚でこれを聴くのだろうか。ということで勝手に"オージー・ウェイブ"なるサブジャンルを提唱したい。

6.Undertow / Drenge
最近欧米から"Nirvanaの再来"みたいなキャッチと共に登場するバンドが増えて「あぁ自分と同世代の人がレコード会社でも活躍し始めてるんだろうな〜」と思う次第。DrengeはNIrvana候補生というよりはジャンク系ガレージバンドという位置づけが妥当だろうが、1st収録のBloodsportあたりにBleach魂を感じとった当方は勝手に現代のNirvanaに覚醒するのを待っている。2ndにあたる今作ではのっけからギターにコーラスが掛かっていたので「むむ、これはCome As You Areだ。Nevermind魂を感じる。」と大いに錯乱した。

7.Sound & Colors / Alabama Shakes
古典風のバンドサウンドと現代的な録音/ミックスがいい感じにコラボレーションしたスタイルは新音響系とか言いたくなる。私的視聴感はバンドサウンドというよりヒップホップとか打ち込みメインのR&Bを聴く時のそれに近い。凄く生々しい弦楽器の録音に打ち込みの低音レイヤーも交えたキックはクラブミュージックとして機能しそうなほどモダンだが、全体的にくぐもったEQとかリバーブの処理がされていてビンテージ感が良い感じに演出されている。

8.Born In The Echoes / The Chemical Brothers
リード曲Goは初期曲に流行のファンク感を落とし込んだ感じで流石のかっこよさ。それ以外はサイケ感やらブレイクビーツをフィーチャーした曲に初期っぽさがあるのかなくらいで、特別なモチベーションとかも感じなかったが終盤のRadiateで泣いた。この人達はいつからかアルバムに泣きを用意するようになってそれが毎度琴線にはまってしまう。

9.Vitals / Mutemath
ベストオブ器用貧乏アルバム賞と同バンド賞をあげたい。前作の無骨な古典ロック路線から急転直下の売れ線(?)ファンキーエレクトロポップだが別に違和感は無い。むしろ最初からこっちのが世間的には人気出るんではないかというくらいにはやりこなしてるし普通に音楽の才能がある人達(ちなみにバンドやっているからといって音楽的な才能が特別あるとは限らない。)だろうから当然と言えば当然かもしれない。それにしてもこのバンドから漂う損するタイプの人達感はなんなんだろうか。

10.Petals / Darlia
カート・コバーン風のルックスにオルタナ/グランジのいいとこ取りしたあまりにも優等生な90年代マナー。狙い過ぎ感やらハイプ感満載ながらやっぱりこういうの好きだわ〜と結構愛聴してしまった。おまけにサビはちょっとスタジアムロックを引きずったようなビッグなコーラスで音楽ビジネスに取り込まれて商業化したカート・コバーン没後のオルタナという感じ。ちなみにこの作品はフルアルバムではなく日本限定?の企画盤のようだ。


Profile
木幡 太郎(avengers in sci-fi)
kohata

WEB
<オフィシャルサイト>http://www.avengers.jp/
<オフィシャルツイッター>http://twitter.com/avengers_info
<オフィシャルフェイスブック>http://www.facebook.com/avengers.japan

BIO
ギター、ベース、ドラムスという最小限の3ピース編成でありながら、シンセサイザー/エフェクト類を駆使したコズミックで電撃的なロックを響かせるavengers in sci-fi。“ロックの宇宙船"とも称されるこのバンドは、高校の同級生であった木幡と稲見によって02年にスタート、大学で長谷川と出会い現在の編成に。メロディック・パンクのカヴァーに始まりテクノ/ダンス・ミュージックへの傾倒を経て、数々のエフェクターを導入し独自の近未来的ロック・サウンドを展開。09年12月にメジャー・デビュー。それまでのロック、パンク、テクノ、エレクトロに加え、クラシック、オペラ、ゴスペルの要素も自由に操り更にパワーアップ。その高い音楽的IQが評価され、同年には木村カエラのシングル『BANZAI』をプロデュースや、CM曲の書き下ろしも手掛けている。2014年6月に5枚目のフルアルバム「Unknown Tokyo Blues」をリリース。昨年2月より新たな主催イベント"Unknown Tokyo"をスタートさせた。そして2016年3月に約1年半ぶりとなるツアー"Departure Tour"を開催する。


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