「この前もThe TalkhouseってサイトでTV オン・ザ・レディオのアルバムレヴューを書いたりもしたよ(笑)。でもそうだなあ、ジャーナリズムを学んだって経験からは、音楽的にというよりは人間として視野や世界観がよりワイドになったのが一番大きいかな。音楽関係だけじゃなくっていろんな人と接しなければいけなかったし、いろんな人と出会って話せて考え方をいろいろ聞けたのはほんと良かったと思うよ」
現在の音楽シーンでシンパシーを感じるアーティストはいますか?「コートニー・バーネットだね。オーストラリアのシンガーでツアーも一緒にまわったりして友達になったんだけど、彼女にはやってること含めて親近感を感じてるよ。あとは…オーストラリアのフェスのバックステージで、そのコートニーや、マック・デマルコやエンジェル・オルセンなんかが一緒だったんだけど、みんな同じくらいの年齢のシンガーソングライターで、彼らには仲間意識はあるかな。エレクトロニックなものが流行ってる中で、みんなギター・ミュージックをやってるってところも含めてね」
では最後の質問です。今後いろんなイベントやフェスに出ると思いますが、もし自分が音楽イベントやフェスをキュレートするとしたら、誰をブッキングしたいですか?「そうだね…まずはTV オン・ザ・レディオ。彼らはソウルとエレクトロニック・ミュージックを結びつけた素晴らしい音楽をやってると思う。『リターン・トゥ・クッキー・マウンテン』は僕のオールタイム・フェイヴァリット・アルバムでもあるしね。それから…(しばらく考えて)…あとは友達ばっかりになりそうだなあ(笑)…さっき挙げたコートニー・バーネットと、パーケイ・コーツ。彼らはパンクバンドとしてもかっこいいんだけど、コートニーと同じで、すごくいい歌詞を書いてる作詞家でもあると思う。フランスで一緒にプレイしたし、レーベルも一緒なんだよね。それから、マック・デマルコ。マックは単純に楽しいヤツだから(笑)。これ見てよ(と言ってふたりで女装してる写真を嬉しそうに見せる)。最後は…自分かな…いや、やっぱりやめて…ディアハンターかな。彼らのギター・サウンドがすごく好きなんだ。実験的な曲でありつつポップであることにいつも成功してるし、『マイクロキャッスル』はすごく好きなアルバムなんだ」
このラインナップってレーベル繋がりでもあったりしますね。「マック以外はベガーズ・グループのレーベルのアーティストばっかりだね(笑)。僕もそうなんだけど(ラフ・トレード所属)、いかにいいバンドばっか出してるレーベルかっていう証明だよね(笑)」
インタヴュー後に行われたライヴでは、その言葉を裏付けるかのように、コートニー・バーネットのTシャツを着て登場し、嗄れたブルージーでヴィンテージな声を聴かせつつ、歪んだファズの音や時折カート・コバーンを思い起こさせるようなヴォーカルで、グランジ/オルタナの空虚感や切なさもモダンな形で鳴らしていた。そういった今時のアーティストな一面も見せ、荒削りで生々しい演奏な一方で、ヴァイオリンとマンドリンでカントリー・ブルースを奏でるというしなやかさも見せていて、奥行きの広さとこれからの展開も期待させるようなライヴだった。「近いうちにまた日本に来るよ」とそのとき彼は言っていたが、その言葉通り、フジロックに出演という形で早くも日本に戻ってくる。その音に触れるのは、今からでもまだまだ遅くはないと思う。