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DJ保坂 壮彦 が選ぶ2012年 ベストアルバム

1.坩堝の電圧─くるり

2.対音楽─中村一義

3.曽我部恵一BAND─曽我部恵一BAND

4.リトルメロディ─七尾旅人

5.Dear Rockers─SNAKE ON THE BEACH

6.Modanica─LAMA

7.Dinosaur─Czecho No Republic

8.uminecosounds─uminecosounds

9.POETICS IN FAST-PULSING ISLAND─DUB STRUCTURE #9

10.hometown─木箱



今年も色んな音楽が産まれましたね。そして色んな音楽を聴きましたが、敢えて洋楽アーティストは外しました。さらに基本、ロックという括りで選びました。その理由は、“ここ数年、日本の音楽はガラパゴス化している”とか、“日本のロックがマイノリティになってしまった”とか、そういうメディア論的な風潮に逆らいたかったからです。そうやって、結果論的に音楽に御託を並べる輩達に、“そんなことないよ。日本にもこんなにいい音楽があるよ”って、純粋に伝えたかったからです。“ガラパゴス化”なんて全く関係無く。むしろ、“洋楽アーティストと対等に音楽を鳴らせるバンドは沢山いる”っていうことと、“ロックがマイノリティになったからこそ産まれた名盤が沢山あるよ”っていうのを、今年リリースされたディスクで証明したいと思って。そんな偏屈な縛りを課して10枚を選びました。

そんな、根っからの天の邪鬼的な性分で総括してみたら、なんとも、あら、不思議な10枚に。くるり、中村一義、 曽我部恵一BAND、七尾旅人、SNAKE ON THE BEACH、LAMA。この6アーティスト。ロックがマイノリティとなる以前の、1990年代の後半にデビューしたアーティストなのです。日本のロックが洋楽と同時代性を伴っていたあの時代から、ずっと、紆余曲折、浮き沈み。分裂、離散。融合、邂逅を経て辿り着いた2012年に、キャリア史上最強の作品をドロップしていたという事実。ようは、“ガラパゴス化”という事象を取っ払う力を持っていたのは、歴史の生き証人である彼等だったのかもと。そう実感させられました。 そして、それ以外のアーティスト。Czecho No Republic、uminecosounds、DUB STRUCTURE #9、木箱。この4アーティストは、全く持って“ガラパゴス化”なんてものとは無関係の地で音を鳴らしていますし、ロックがマイノリティ化したからこそ、自らの音楽というものを自らの感性に正直に純粋に向き合えて。外界と化したと言われてしまっている、同時代の洋楽との架け橋をも担えるほどのクオリティを備えているのです。

ぱっと見、なんとなく、メジャー級と新人アーティストが二極化されているだけに感じられるかも知れませんが。いや、ほんとそのままそうなのかも知れませんが、年間ベストを考えてこういう結果になるとは自分でも思っていなかったので。自分で選んでおきながら吃驚しています。なんとなくですが、来年以降。00年代に頭角を現したアーティスト達が、何かをしでかしてくれそうな感じがしますし。ニューカマーに関しては、業界の不況とは相反するように、生きのいいバラエティに富んだアーティストが沢山現れるような気がします。そんな、予兆を感じさせる、そんな、土壌が創られたのが今年だったと、勝手ながら解釈させていただきます。

まあ、結局のところ、僕も、独断と偏見でご託を並べる輩の1人ですから。だからまあこんなことになったということですかね。お粗末ながら。失礼致しました。


Profile
DJ保坂 壮彦
山田
1971年生まれ。1999年頃から本格的なDJ 活動をスタート。
ロッキングオン主催の「ROCK IN JAPAN FES. 2001」、「COUNTDOWNJAPAN 03/04」にRESIDENT DJ として出演以降、現在に至るまで毎年連続出演を続けている。
他にも、2004年から、オフィシャルサイト「ALL IS LOVE IS ALL」を立ち上げて、音楽ライターを中心とした様々な活動を行う。主な活動として、音楽専門誌「MUSICA」創刊号から現在に至るまで、ディスクレビューを執筆中。
DJ としては、類い稀なるビート感を駆使して、選曲した楽曲に込められたメッセージ性やクオリティを損なうこと無く、心や魂にまで響かせるプレイをもとに、フロアに歓喜の渦を巻き起こすテクニックで、様々なリスナーやオーディエンスに人気を博し続けている。
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