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TOSHI-LOW(BRAHMAN/OQU) ×後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)

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後藤「一概には言えないですけどね。でもそれって親の世代にも問題がある気がして。コミュニティ自体をおざなりにしてきたっていうか、親の世代から近所付き合いもそんなにない。でも携帯はあるからとりあえず繋がれる、仲間はいるわけじゃないですか。でもそのコミュニティは地域に根ざしたものじゃなくて、職業とか趣味とかで形成されたコミュニティで。僕の田舎とか、本当に近所付き合いが凄いんですよ。何かあったらみんながワッと集まってきて」

TOSHI-LOW「じゃないと生きていけないからね、田舎とか自然の中では。でも地方都市に行くとそうじゃないでしょ。もう地方が都会化していって、その結果コミュニティがなくなっていって。結局は豊かな暮らしじゃない? 別に茨城だって東京と遜色なくいろんなもの買えるし、大型のショッピングモールもあるわけで。だったら助け合うことを第一に教育するよりは、自分が何になりたいか、自分がどうなりたいか、ってことを優先する風潮になるじゃん。それで自我が発達するのは悪いことじゃないと思うんだけど……結局この震災では役に立たないよね。自分のことばっかり、他人のことに干渉しませんっていう感覚は」

後藤「そうですよね」

TOSHI-LOW「今の日本って、戦前・戦後があったみたいに、ここからは震災前・震災後になってしまった。もちろん“普通"の暮らしをしましょうっていうのはいいんだけど、震災後の“普通"っていう新しいスタンダードができなければ、それは普通じゃないと思う。だって東北はざっくりやられてて、日本は半分死にかけてるわけで。今までの、震災前の普通を語ることは決して普通じゃないんですよっていうことが、若い世代の子たち、いまいちまだわかってない」

後藤「ツイッターでも、原発の話なんかすると若い子のほうが割とネガティヴに食ってかかってきますね。“脱原発できんのかよ?"みたいな。それはすごく不思議で。30代くらいだと、変えようよ、って気分がある人が多いんだけど」

TOSHI-LOW「変わった経験がないし、変えるっていうことを実感してない世代なんだと思う。俺らも別にないけどさ、なんとなく肌で感じてきたっていうか、まず昭和っていう、いろんなことが変わっていった激動の時代を知っていて。だってソビエトがロシアになるなんて思った? 俺ちっちゃい時、世界地図が変わるなんて思ってなかったもん」

後藤「思ってないですね」

TOSHI-LOW「あとドルが100円になるとか。俺ちっちゃい頃360円だったもん。そうやってすべてのものは変わっていくっていうのを、なんとなく見てたし感じてたと思う。それが今、ここ10年とか考えるとあんまり動いてない。世界的にはもちろん動いてるんだけど、日本からは見えづらくて。大きく変わるっていうの、わかんないんじゃないかなぁ。だから“言ったってしょうがないでしょ?"ってなっちゃう。根底には、今のことが変わるのが怖いって感覚があるのかな。今ここでこうしていたい、それを変えないで欲しい、ここが安心なんだ、っていう」

後藤「わかります。そういう論調ですよね、真ん中にあるものは。なんか、“今"っていうものにしがみついてる感じ。」

──前に10代のバンドに取材した時、社会に出たくないし、社会に夢を持つという感覚がわからない、って言われて驚いたことがある。不満を言ったってしょうがない、社会に順応するしかないんでしょう、みたいなことを話してて。

TOSHI-LOW「それで、パンクだ、ファックオフ!みたいなのもないの?」

──たぶん。ものすごい諦めが前提にあるというか、音楽が人生を変える、みたいな感覚すらないような感じだった。

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