後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)─2012.1.24─
NADA SURFの新しいアルバムがリリースされた。
タイトルは「
THE STARS ARE INDIFFERENT TO ASTRONOMY」。
哲学者であるマシュー(Vo&G)の父親の言葉から引用されたこのタイトル、直訳すれば “星達は天文学に無関心である”という意味になる。 “夜空に輝く星達は、自分たちが一体どのような名前で呼ばれているかなんてどうでもいい”とも意訳できるのかもしれない。
円熟期を迎えている彼らの新しい作品には驚くような斬新さもなければ、昨今のUSインディのトレンドと共振するようなところもない。だけれど、ファッション=流行に流されない確かな温度がある。じわりと確かに伝わるパッションがあり、美しいメロディがある。10年も経たない間に跡形もなく消費され尽くされて、ガラクタに変わり果てない芯がある。
(海外のTVプログラムに出演した映像)
聴けば聴くほど、良いアルバムだと思う。最初に聴いたときよりも、10回目に聴いた今、さらにその良さが伝わってくるように思う。
“星たちは天文学などどうでもいい
そして僕らが知っていることすべても
火星はきみの自主性に敬意を表するだろう
でも知る必要などないのだ”
(CLEAR EYE CLOUDED MIND)
この一節が表すとおりの音楽だと思う。ただ、真っ直ぐに鳴り響くパワーポップ。いや、パワーポップという名前もどうでもいい。これは彼らの音楽だ。ワールドワイドウェブの上に、あるいはなんらかの紙に、そこに書き記される音楽を批評する言葉には決して追いつけないスピードで、全ての音楽は鳴るのだ。
僕はこのアルバムが好きだ。批評でもレビューでもない、身も蓋もないこの言葉が、このレコメンド原稿のすべてだ。そう書いたら、なんだかおかしくて笑ってしまった。
ボーナストラックには、去年のNANO-MUGENサーキットのライブ音源を収録。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのギタリスト、喜多建介が参加した「ムスタング」も。かなり貴重な音源なので、アジカンファンの皆さんも是非!
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