後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)─2012.8.14─
前回の来日公演がバッキバキに素晴らしかったDirty Projectorsの新譜。まずはトレーラーを。
リズムの構成がとても複雑で、王道の8ビートや詰まるところ“踊らせる”ということに主眼が置かれているダンスビートを好んで聴くひとには、若干とっつきにくい部分があるかもしれません。このあたりは、恐らくアフリカ音楽の影響を受けているのかと思います。
で、このバンドの特徴でもある、ちょっと捻ったリズムの組み立てと、——私のボキャブラリーではどこの地域までは正確に言い当てられませんが、西洋以外からの引用と思わしき旋律の意識的な導入と、いわゆる西洋のオーセンティックなロック用の旋律とが交通事故を起こしまして、例えば、今回のアルバムはビートルズ中期を思わせる瞬間が沢山あるのです。
ここまで地球規模でいろいろな地域の音楽が流通するようになると、いろいろな地域の音楽同士が衝突して、例えばブルーズやロックンロールやジャズやスカやHIP HOPというような新しい音楽/文化を生み出しそうなものですが、どっこい、何の分野でも便利過ぎて均質化してしまうことが増えました。どこか一部の地域で流行したものは、あまり時間をかけずに世界的な潮流になるような時代です。
ですが、こうやって、ちゃんと衝突させている人たちがいるから音楽は面白い。衝突という大袈裟なものではなくて、ちゃんと引用して、自分たちの印を付けて新しい布に編み直しているだけなのかもしれませんが。文化までは拡大せずとも、新しいフィーリングを確実に感じます。この布で服を作りたい!と思います。
歌詞は読み忘れたままアナログ棚に突っ込んで手元にないので、こういう音楽で何が歌われているのか分りません。こういう音楽でアメリカ人が何を歌っているのか、すごく興味があります。和訳した人がいたら教えて下さい。笑。私も時間が出来たら読み解いてみたいと思います。
歌モノと思わしきくらいメロディが全面に出た曲も数曲ありますが、ポップになったなんてとんでもないと思います。前作でのビョークとのコラボレーションも素晴らしかった彼ら。『Bitte Orca』の“声”から“肉体”へとでも言うか、人間性への回帰とでも言うか、一連の流れから期待していたそれの、遥か上を行くアルバムです。
もう一回言います。素晴らしい。オススメです。
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