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Cat Power

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nerisuke─2012.9. 2─


今月、米田達郎という漫画家の『リーチマン』という作品がコミックスとして発売される。

2010年に『リーチマン』のプロトタイプと言うべき『主に主夫』という読み切りが『ちばてつや賞』を獲った時に、自分は完全にやられてしまった。絵柄、内容ともに自分ど真ん中。寡作なのでかなりヤキモキしながらも、モーニングに掲載されるたびに噛み締めるように読んでいた。ぶっちゃけ、強力な漫画揃いのモーニングの中でも一番好きな作品だ。

それから短期集中連載とか月一(ほぼ)連載とかを経て、ようやくコミックスが出る。

この漫画に惹かれた一番の理由は、ぶっちゃけあまりにも自分と似た境遇だったからだ。
詳しくは読めばわかるけど、まさにそんな感じだった。

それから2年、境遇がまったく変わった状態でコミックスのリリースを迎える。ホントに感情がからまりまくってて、読むのが怖いくらいだ。


自分は漫画の新刊が出るたびに、その次の刊が出た時の自分を想像する。その度合いが一番強い漫画が日本橋ヨヲコの「少女ファイト」だ。好きな漫画家を聞かれたら、まずこの漫画家の名前が出ると思う(その後、かぶせ気味で5人くらい追加すると思うけど笑)。

先日第9巻が出たこの連載。第1巻が出たのが6年前。 

その頃は月収10万くらいのCD屋で働き、昨日も今日も明日もダラダラしていて、毎年フジロックに行ってた。そして、毎年フジロックの帰りに「来年の今日が、今年と同じ状態なのが一番嫌だ」と同僚と不毛な会話をしていた。でも、みんな心の中では一生このままでいたいと思っていたはずなのだ。

町田のもう潰れてしまった本屋で「少女ファイト」第1巻を持ってレジに向かう時、「2巻が出るまでには、この生活を抜け出そう」と何度目かの不毛な決意をしたのを鮮明に覚えている。

同じ6年前、Cat Powerの前作「The Greatest」(ベスト盤ではない)がリリースされた。それまでオルタナの御姫様のような立ち位置だった小動物のような彼女。そんな彼女が南部のソウルフルなバンドを従え、その暑苦しい演奏に煽られつつも低血圧っぷりを貫いた(ライブで観ると彼女もめっちゃ熱いが)傑作だった。丁度同じ時期に中島美嘉の ”CRY NO MORE” (こちらもそれまでにないソウルフルな曲)が出てたので隣に置いたら、洋楽あんま聴かない邦楽担当に変な眼で見られつつ片づけられた記憶がある。


それから6年。

新作のタイトルはなんと「Sun」。→NPRにて無料視聴できます。



ピアノがちょっとナンバーガールの ”URBAN GUITAR SAYONARA ”っぽい。


「Moon Pix」というタイトルの作品を出していた初期とは真逆ですね。当時、自分の突出したセンスに自信が追いついていなく、いつも居心地の悪そうな様はまさしくオルタナ界のアイドルという様相でした。が、今はそんな姿はみじんも感じられません。

「Sun」ほぼ完全無欠なポップスアルバムです。今年のベスト級と言っても過言ではないでしょう。でも、それは自分だけのベストというわけではなく、みんなのベストになったのです。

初期にあった”何か”はここには無いし、初期になかった”何か”がここにある。そして、やはりその様に自分を重ね合わせずにはいられないのです。

音楽を長く聴き続けるというのはそういう事なんだと思います。

Cat Powerの次作が出る頃、自分はどうなってるのだろう。



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  • nerisuke(2012.9. 2)