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後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)─2011.1.18─

出会ってからこれまで、二度に渡る大きなトランスフォームがあった。それは言うまでもなくメンバーの加入が引き起こしたことなのだけど、それでも、ここまでしなやかに化学反応が起きる例を僕は他に知らない。

大山純の帰還はとても嬉しい出来事だった。同世代のミュージシャンの中で、一番好きなギタリストだった。だから、彼がほぼ音楽をせずに引きこもっていることを、とても残念に思っていた。彼がストレイテナーに加入することを聞いたときには本当に嬉しかった。

で、だ。
見事にハマった。
初めからマスターピースだったのかもしれない。
ホリエアツシに羽が生えた。「再現」ということに重点的な注意を払わなくて良くなった。ボーカル中心とした己の役割に没頭できるようになったのだと思う。ライブを観ていて、常々、そう感じる。以前より開放されている、と。そして、そういう感触はバンド全体に波及していると思う。屋台骨として強固な立ち位置だったベースのヒナッチにもウワモノ的に動くスペースが増えたように感じるし(変幻自在。とにかく凄い)、バンド全体で一本の太い硬質な柱だったのは以前からだけど、それでいてグニャリと形を変える半固形液体のような、そんな印象になった。繰り返しになるけれど、自由で太く、しなやかだ。

絶頂期だと思う。

VANISH

ストレイテナー | Myspace Music Videos

(なんだ、このコスプレPV。笑。)

そして、そんなバンドが自分たちの曲をセルフカヴァーしたのが今作。新曲も収録。
オリジナルヴァージョンと比較してみるのも面白いし、ベストアルバムとしても楽しめる選曲、内容。本当に素晴らしい。で、ちょっと悔しい。

毎年、世の中には聴いても聴いても聴ききれないほどの新曲たちがリリースされている。
と、同時に、ネットによって楽曲のアーカイブ化が進んで、とにかく膨大な楽曲を記録しておくことが可能になった。だからもう、「新曲」のアドヴァンテージとは、現在性という一点に置いて突出していることのみだと思う。どこからでも、既に発表された楽曲に辿り着けるのだから、過去の名曲と新曲は最早、リスナーの選択肢としては同列に並んでいる。
そういう中で、こうして自分たちの楽曲を再アレンジで再録音することは、とても意味のある行為だと思う。バンドの現在が色濃く現れるのが面白いし、なにより新譜(楽曲)を馬車馬のようにリリースする音楽産業のあり方にも、ベスト盤ばかりがもてはやされるマーケットにも批評的な行為だと思う。

今後、セルフカヴァーに取り組むバンドが増えそうな予感。
事実、僕もこういうようなアルバムを作ってみたいと思っていたので、先を越されてしまって素直に悔しい。彼らのバンドとしての機能やそれぞれの音楽的才能にも嫉妬しているので、二重の意味で悔しい一枚。

傑作。
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  • 後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)(2011.1.18)