梶原綾乃─2014.6. 9─
彼の試みは驚きと成功で溢れている。サニー・ムーアによるプロジェクト、スクリレックスのファースト・アルバム『Recess』は、リリースの1週間前に突如その存在が公表され話題を集めた。昨年より海外で人気を博しているEDM (Electric Dance Music) のカリスマである彼は、ハイブリッドな電子音とダブステップの使い手だ。そのオタクっぽい文系ルックスとは正反対のイケイケなサウンドは、デビューEPで早くも注目を集め、2年連続でグラミー賞を受賞。豪雨にも関わらず入場規制がかけられた昨年のフジロックでのステージも記憶に新しい。
そんな中で放たれた今作は、彼お得意の意外性でいっぱい。ドラム・ロールからサビへと突入というわかりやすい展開なのがクラブ・ミュージックの持ち味といえるが、その中で最大限あがくのが彼らしさ。展開によって180度変わる音の鳴りが面白いし、もはやダブステップを放棄したかのようにジャンルレスだ。パッション・ピットのマイケル・アンジェラコスを迎えた表題曲 ” Recess” はポップな歌メロイントロから一気にフロア音楽へと変化。ジャジーな冒頭のピアノとチャンス・ザ・ラッパーの土着的な早口リリックが魅力的な”Coast Is Clear”など、1度で何度も美味しい曲ばかり。
ところで私はtofubeatsに「日本のスクリレックス」を感じるのだ。早くも人気な上に文系なルックス、ライヴでは ”Don’t Stop The Music” の濃厚なダブ・ミックスで客を焦らしまくり、最終的には森高千里の音源とデュエットしてしまうお茶目感も、まさにそっくり。スクリレックスもtofubeatsも決して派手な存在ではないと思うが、持ち得た才能をフル活用し最高のおもてなしを展開する姿に、エンターティナーたる由縁を感じさせる。
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