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超越的漫画
曽我部恵一

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後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)─2013.11.30─


曽我部さんの新譜『超越的漫画』が素晴らしい。

シングルになった “6月の歌” を聴いたときには、アルバムの作風はサニーデイサービスを思わせるようにメロウで、プライベート=私的なものになるのだろうなと勝手に想像していたんだけれども、2枚目のシングルは世の中に対するありったけの皮肉と、それと反転したような愛情を感じるロックンロール。



この “バカばっかり” を聴いて、僕はこのアルバムは買わないといけないなと思ったわけ。なぜかっていうことをちゃんと言葉にして説明してこそのレコメンドなんだろうけれど、それは直感としか言いようがない。笑。でもね、ポップミュージックを愛するひとりのリスナーとしての俺、ロックンロールに恋い焦がれて何年も詩や曲を書き続けているミュージシャンとしての俺がビンビンに反応してしまったの。

で、届いたアルバムを聴いて、僕は曽我部恵一(敬称略、すみません)は最高だ!と興奮しているのだ。

日常生活の中では、夕飯のカレーライスが美味しく出来たってだけで鼻歌を歌うほど気分が良くなることもあれば、その次の日の朝刊の見出しに憤りや違和感を覚えて現政権に皮肉のひとつも言いたくなることだってある。本当はそれだけのことで、そんなことは誰が口にしたって良いわけだし、あるいは歌にしたっていいわけ。

このアルバムには『NOT LEFT OR RIGHT』というステッカーが封入されていた。そして、モノラルでミックスされている。そういうことの源泉は音楽的な理由だけではないはず。

で、そんなことを意識しなければしないでも聴ける風通しの良さもある。とてもプライベートなアルバムだと受け取る人もいるかもしれない。実際、そうだとも言えるけれど、日々のことを書きながら時代を映す叙事性がある。そういうアンビバレントな性質が混ざり合っているようにも感じる。LOVEもHATEも。それも無理なく。そういうアルバムがロックの名盤なんじゃないかと俺は思う。

財布に2500円あったら、是非買って聴いて欲しい。

と言うことで、大先輩の音源のレコメンドは緊張しますな。笑。こちとら『東京』『愛と笑いの夜』以来のファンですから。「8cmのCDはなくなる」とか「将来はみんなiTunesで音楽を聴くようになる」とか誰も言わない時期から言っていたり、リリースする作品しかり、昔から何歩も先を歩いている曽我部さん。いやいや、必死で追いかけます。

今年のベスト候補ッス。

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  • 後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)(2013.11.30)