後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)─2011.7.21─
Dr.DOWNERは横須賀/横浜を中心に活動するバンド。ジャンルはパンクとロックンロールとJ-POPにUSオルタナをまぶしてグッチャグチャに練り上げたら良くわからない音楽になりました系。要はジャンルに捕われていない。自分たちの鳴らしたい音に、自分たちの言葉を載せて放っている、とても真っ当な音楽だと思います。
“どうしてDr.DOWNERの音源をリリースすることになったのか”ということを聞きたいひとが多いと思うので、ここに書きます。理由はいくつかあって、ひとつはライブに比べて音源が良くないと思ったことです。“どうしてあんなに格好良いライブをするバンドの音源が、こんなにも良くないのか”という、大変失礼な気持ちを僕はずっと抱いていて、彼らが「スーサイドソルジャーマン〜』を録音に出かける場面にも遭遇して、いろいろハッパはかけていたのですが、イマイチ音源だと煮え切らないような印象を持っていたのです。
そんなある日、ボーカルの猪股と偶然会って、地元の練習スタジオで一発録音したデモを貰いました。マイク7本の荒いデモ音源でした。それが、凄く良かったのです。衝動という使い古された言葉を使うのは気が引けますが、それだけで埋め尽くされたようなメチャクチャな音源でした。バスドラムに立てたマイクでベースの音を録音しているような音源です。シンバルのマイクのフェーダーを上げると、スネアとギターが爆音で聴こえました。それでも、そこにはきっちりとバンドの魅力が納められていました。
ただ、ボーカルの録音がいい加減でした。変なエフェクトがガッチリかかっていました。これは歌に自信がないのかなと、直感しました。もしくは、自分たちでディレクションできないところが歌なのかな、と。『スーサイド〜』でも気になっていたところは、主に歌だったので。それで、僕のスタジオで歌だけ録音しなおして、僕がミックスしてリリースしたのが『
さよならティーンエイジ』のEPです。
本作は、ダウナーがやりたいことを、恐らく予算と方法としてベストなのではないかというやり方で録音しました。それを提供してあげることが僕の仕事でした。録音した時点で彼らのベストな“現在”をパッケージできたと思います。
メトロノームなしの一発録音。だからリズムはヨレます。でも、これがバンドの、4人がコレだ!と感じているビートでありタイム感です。死ぬほどズレたあとに奇跡のようにピタリとそろう瞬間があります。これが複数の人間で何かを成し遂げるということだと私は思います。
コンピューターやソフトを使うことによって平均化してしまうことが、表現にとっては最も恐ろしいことです。どちらかと言えば、メインストリームの音楽はそういう道を歩んでいます。リスナーもそれを求めている風潮があります。上手い下手とは、機械的に正確なことではありません。もちろん、音楽の魅力もそこだけにはありません。
社会からは何一つ恩恵と呼ばれるものを受け取っていない彼らが、真っすぐに音楽を信じて鳴らす姿、僕はそれだけで感動します。すべてに裏切られ続けている(と思っている)ヤツらを裏切らないもの、それが音楽なのです。なぜなら、それは猪股やケイタや星野や小石の中から生まれるもので、彼ら自身でもあるから。信じ続けるならば裏切られない。表現とはそういうものです。
以下、ダウナー写真展。撮影は
Satomi Itoです。
最後はオマケ。こんな顔して、ステージ上でイキたい。
『ライジング』是非聴いてみて下さい。
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