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MAJESTY SHREDDING
SUPERCHUNK

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jakagawa─2010.10. 3─

「ディグる」という単語はおそらく日本語ラップのシーンから出てきたものだと思うのだけれど、レコード棚の1枚1枚を音立てながら必死に探す風景が何となく想像できるような語感で、何となく好きな単語だ。
ミュージックラバーの愛情と滑稽さが同居しているというか。妙に温かさを感じてしまう単語だと思う。

さてスーパーチャンクの9年ぶりの新譜は「Digging For Something」という曲から始まる。僕らはまだ「何か」をディグっているんだよ、という曲。つまり好奇心についての曲かな。20年のキャリアのベテランバンド、しかもレーベルオーナーでもあるバンドが、さらっとこういうことを歌えてしまうというのは素敵なことだ。

曲自体も跳ねるビートに、ダミ声がばっちりはまる泣きのメロディが乗っかる「ザ・スーパーチャンク」な1曲で、そこから疾走する「My Gap Feels Weird」(僕のギャップは変な感じ)になだれこむ序盤はパワーポップ愛好家の琴線をこれでもかとついてくる珠玉の出来栄え。イントロのフィルインで一気に心が躍る「Crossed Wires」なんて最高だ。
昨年ライブを見たときも思ったのだけど、このバンドの疾走感はとにかくとてもカジュアルで、無理して速くしている感じがないのが好きだ。(疾走感がとかく大仰さとセットになりがちな日本のバンド勢、学ぶところ多いんじゃなかろうか。)
普通のおじさん達が、無理に顔を歪めたりすることなく普通に速い曲をやる。たぶん、音楽と生活がとても近いのだろう。とにかく自然で、生活感があって、当たり前のように速くて当たり前のようにキャッチーで当たり前のようにグシャっとしたギターサウンドが鳴っている。ほとんど9年振りの新作だなんてことは忘れてしまいそうだ。それでいて「いつものバンドがいつもの新作を出しました」的な退屈さもなく、フレッシュな2010年の音楽として成立させているのが素晴らしい。

彼らはたぶん今でもイチ・音楽好きのメンタリティを持ったまま、日常的に新しい音楽をディグって興奮しながら、自分達のペースで音楽をやっているのだと思う。だからArcade FireやShe&Himのような2000年代のバンドも、Dinasaur Jr.やTeenage Fanclub、さらにはBuzzcocks(!)のようなベテランも、安心して彼らに作品を預けているのだろう。(リンク:merge records http://www.mergerecords.com/

いうなればこれは、地に足のついたオルタナ・ジャイアントの自然なる傑作。
曽我部恵一BANDが15年後くらいに9年振りの新作を出すとしたら、こんな音が鳴っていてほしい。そんなことをふと思った。こういうリリースの仕方、こういう音楽のやり方をするバンド、もっとこの国にもいてもいいんじゃないかな。

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  • jakagawa(2010.10. 3)