nerisuke─2011.10.25─
先日、
「1985年のクラッシュ・ギャルズ」 (
柳澤 健 ・著)という本を読みまして。
この作者が以前書いた「1976年のアントニオ猪木」という本はこの1冊でアントニオ猪木とは何なのか、というかプロレスとは何なのかを描き切った超超名作で、個人的にはヴォネガットの「タイタンの妖女」に並ぶ奇跡のような読書体験でした。
今作も同レベルで素晴らしく、未だに体温が少し高いのを自覚するくらい興奮したわけです。
何故、クラッシュ・ギャルズだけがあの熱狂を作れたのか。10代の子がなぜあそこまで他の事をすべて捨てて心酔できたのか。完璧なエンターテイメントが作り上げられ、崩壊するまでのドキュメントです。
自分にもそんな事があったな、と思ったらそれがMetallicaだったんですよ。何の因果か洋楽処女膜をこのバンドに破られてしまった高校生の自分は、他のすべての音楽を呪ってMetallicaに心酔しました。まごう事なき一神教です。スマパンに出会ってグランジ→洋楽全般と聴き広げるまでのしばらくの期間のうなされるような熱は、今となってはケツの穴に唐辛子刺しても再現不可能でしょう。
今でも大好きなバンドでベーシストにトゥルージロが入ってからのライブも破格ですが、ここ10年の新作は完全スルー。自分とも、時代とも離れて、良くも悪くも我が道を行っていました。
そんなMetallicaが、何と何とあのLou Reedと一緒にアルバムを作ってしまったというのです。
全曲無料視聴が
オフィシャルサイトで開始されています。
ちゃんとYouTubeにもオフィシャルで曲があります。
CDに異常にこだわり、保守の権化と化していたMetallicaが無料視聴というだけでもビックリというか、感慨深いとうか。
今までは多分、作品に自信がなっかったんでしょう(キッパリ)。
だから固定客だけにCD買ってもらおうと必死だったんでしょう(ハッキリ)。
でも、無料で聴かせたい気持にもなるでしょう。こんだけの作品が出来れば。
もうね、色々ギリギリ過ぎるバランス。
Lou Reedが適当にブツブツ喋ってるようにしか思えない場所とかでも、なぜかゴリゴリとした曲にフィットしていくんですよ。ヘヴィーロックでラップとハードロックの相性が良いというのは解ってるんだけど、それともまた違うギリギリ感。線が切れそうで切れない、コッテリしつつも繊細この上ないヴォーカル。それを蹂躙するんじゃなくて、背景を足していくようにヘヴィーに、ロマンチックに、たまに猥雑に飾るMetallicaの演奏。
最近読んだ漫画だと
「25時のバカンス」 (市川春子・著)がそんな感じだったな。繊細な線で描かれる保守的ともとれる古風な少女マンガ的な画。しかし、展開するストーリーはハードコアなSFで、たまに吐き気がするくらいグロテスク。そんな両極端な要素が絶妙なバランスで絡み合ってポップな方向に転んでいく。
一見適当なくらいに見えて、実は完璧なミリ単位のバランス。矢沢永吉の無精髭しかり、満島ひかりの眉毛しかり。ギャップがあればあるほど、バランスが取れた時の破壊力はパないっす。
Metallicaの新譜、久しぶりに買おう。
1