ニール・ヤングのアルバムの中で、僕が最も好きなのは『After the Gold Rush』だ。
なぜかと言われると、実は返答に困る。笑。ニール・ヤングのアルバムを全部聴いたわけでもない。だけれども、特に目的もなく潜り込んだ大学の軽音楽部のダニだらけの部室で、このアルバムを聴いて、一目惚れみたいにこのアルバムに恋してしまったのだった。
「Only Love Can Break Your Heart」を聴いたとき、なんて美しいメロディだと感じた。それから、言葉にしたら「切ない」とも「悲しい」とも言えないような、それでいて自分の心の中にもずっと宿っているような、そういうフィーリングを感じた。でも、同時にとても、これまた「世界」とか「いのち」とかでは言いあたらないような、自分の存在や存在するこの場所をそっと肯定してもらえたような気分にもなった。
それで、とにかくCDショップへ行ったわけだ。このアルバムを買いに。
今作は『After the Gold Rush』リリース当時、ワシントンで行われたライブの音源。1970年のことだから、今から45年近く前のこと。でも、これは録音芸術の素晴らしさのひとつなのだけれど、レコードに針を落としたり、CDを再生したりすると、僕らは1970年にタイムトリップできる(しかも、僕が生まれる6年も前の、僕の誕生日の音源だ)。僕はレコードで買ったけれど、本当に素晴らしいタイムマシーンだと思う。
70年代の音楽は、ある意味では古典化しはじめているのかもしれないし、膨大な音源が日々リリースされている現代では、マニアのためのものになっていくのかもしれない。ましてや、外国の音楽だしね。若い子たちや、僕と同世代の人たちでも、そこまで興味がないという人のほうが多いと感じる。
でも、このニール・ヤングのライブ盤は本当にオススメしたい。ここには僕の信じる「音楽」があるんだ。ピアノのミスタッチや、音量が上がったときにメーターが振り切って音が割れてしまうところや、人間的なゆらぎや、演者と観客の息づかいや、咳払いや、まあ、僕が音楽に求めることの全てが分離することなく丸ごと入ってるんだ。
洋楽なんて興味ないわ!なんて人にこそ、ちょっと聴いてみて欲しい一枚。真顔で推薦します。