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バーティカルJ.M.ヤーヤーヤードEP
0.8秒と衝撃。

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青野圭祐─2012.6.18─


僕としては初めて、以前レコメンドさせていただいたアーティストを新作と同時に再びレコメンドさせていただきます。

と言う事で、少し、リリースから時間が空いてしまって恐縮ではありますが、今回のレコメンドは0.8秒と衝撃。(改めて、「。」までがバンド名です!)の新作『バーティカルJ.M.ヤーヤーヤードEP』についてです。


前回の『1暴2暴3暴4暴5暴6暴、東洋のテクノ。』についてのレコメンドの際は、彼らもノリに乗り出してきた頃であったこともあり、0.8秒と衝撃。(以下、敬愛をこめて略称、「ハチゲキ。」と書かせていただきます)というバンドそのものをイントロデュースさせていただきながら、アルバムについてレコメンドさせていただきました(前回のレコメンドをきっかけに、ハチゲキ。をお聴き下さった方がおられましたら、ありがとうございます…!!)。

前回のレコメンド以降、僕はハチゲキ。のライブをまた数回観る機会に恵まれたのですが、その時に改めて、今、日本国内のシーンで最もライブがアツい新人アーティストの一つは、間違いなくハチゲキ。だ!なんて思っておりました。そして、その通り、ハチゲキ。は、前回のレコメンド以降、着実にリスナーさんが増えていってることも感じておりました。


 そして、彼らへの注目の熱が増してきた今ここでリリースされたのが、ミニアルバム『バーティカルJ.M.ヤーヤーヤードEP』です。
カラフルでテクノっぽくてアバンギャルドなジャケットがクールですが、実際の中身も前作よりさらにアグレッシブになっています。

 早速、リードトラック、「NO WAVE≒斜陽"」のMVをどうぞ!



前作の「Brian Eno」のMVと同様、妖しく光るライトに照らされる、塔山さんとJ.M.さん。

相変わらず塔山さんは終止、奇天烈なモーションをかまされていて、J.M.さんは美人さんですね(彼女の「美人さん」については、『〜東洋のテクノ』のレコメンドを参照していただけると幸いです…!!)。前作までのMVをご覧になっている方は、最早、言うまでもないかも知れませんが、今回のMVでも脱がれています(塔山さんが:笑)。

もちろん、ライブメンバーを招集されて、演奏されているシーンもあります!

ここで塔山さんが着られているバンドTシャツは、70年代末のイギリスの伝説的な大物ポストパンクバンド、Joy Division(ちなみにJoy DivisionはヴォーカルのIan Curtisが自殺してしまったことにより解散してしまいました。その後、残されたメンバーで結成されたのが、後藤さんも深く関係を持たれた、これも同じく後の世代の影響力すさまじい衝撃的なニューウェーヴバンド、New Orderです!)のものです。Joy Divisionについて書き出すと、めちゃくちゃなまでに長くなってしまいますが(かなり余談で申し訳ございませんが、個人的にJoy Divisionは大好きなのです…!!)、先にも書かせていただいたように、僕は何度かハチゲキ。のライブを観る機会をいただいているのですが、塔山さんはステージに上がられる際の衣装としても、Joy DivisionのシャツやIan Curtisがプリントされたシャツを着られていることがとても多いように感じます。ハチゲキ。の皆さんも、大きい影響を受けられたことが窺い知れるかも知れません。


そして、相変わらずタイトル!!

「ノーウェーブ」については、すごく簡単にかいつまんで紹介しますと、80年代の初頭に米国のニューヨークで起こった、ニューウェーブに対抗する、音楽だけでないパンク的なアートのムーブメントのことでしょう。ノーウェイブの音楽的に著名なアーティストは、DNAなのですが、そのフロントマンは昨年の今くらいの季節に、相対性理論のイベントで来日されていたArto Lindsayです、と書くとご存知の方もおられるかも知れません(ご興味のある方であれば、日本版のwikipediaで「ノーウェーブ」と検索したら簡単な詳細を確認できるかと思います)。そして、「斜陽"」は太宰治の同名の著書を思わせますね…!!

前作までの曲と同様に、アート好きな少年少女を一本釣りできそうな確信犯的なタイトルが痛快です!

肝心のサウンドの方も前作までのアグレッシヴな衝動をさらに突き詰めて爆発させたかのようなパワフルなものになっていて、さらに狂喜乱舞できる奇天烈なものになっていてこれまた痛快です。


他にもタイトルだけ見ても、「あなたがここにいてほしい」なんて、プログレッシヴロックバンド、Pink Floydのアルバム、『Wish You Were Here』(邦題は、『炎〜あなたがここにいてほしい』)を思い出さずにはいられない曲もあります。



では、続けて、2曲めに配された「ラザニア」のMVをどうぞ!、と言いたいところですが、残念ながら、このレコメンドを書いている現時点では、この曲のMVはお蔵入りしてしまったようです…ので、復活しない限りはパブリックでは観られません。と言う事で、映像として、紹介させていただける曲は「NO WAVE≒斜陽"」のみになります。

 曲としては5曲のみなので1曲ずつ言葉で紹介させていただくこともできますが、やはりonly in dreamsのレコメンドは映像を用いながら紹介させていただけるメディア、今まで通り、無骨に映像ナシで言葉を並べることはしないことにさせていただきます。

 アルバムを聴いた印象としては、どの曲も今まで彼らが持っていたエッセンスを塔山さんが自分自身にさらに向かい合って「深く」させたような世界が魅力だと感じます。それは歌詞も同じで、今までの塔山さんであれば、 ちょっとおふざけ気味に歌ってしまいそうな人間的で真摯な感情も、ストレートに強く出されているようで(特に「ポンゴとタブラ、駆け抜けるリズム。」は、塔山さんの独白のようで突き刺さるように切実な歌詞が痛烈です)、「俺たちはこれでいくんだ!」というような、彼らの「味」にさらに磨きがかかったような印象です。

サウンド的には、久し振りにフォーク、バラードっぽさ(ハチゲキ。の隠れた(?)魅力の一つは激しいバンドアンサンブルでなく、憂いの見え隠れするフォーク・バラードにもあると思います)を出されている「大泉学園北口の僕と松本0時」も最近、彼らを聴き始められたリスナーさんには新鮮に聴こえるかも知れませんし、他の曲もこれまでのニュウェーブっぽさ以外にもオルタナティヴなエッセンスをどんどんがむしゃらに取り込んでいっているようなパワフルさが頼もしいです。

 なお、初回限定盤にはthe telephonesのフロントマン、石毛輝さんがリミックスされた「ラザニア Joy Max Mix By Akira Ishige」が収録されていますが、これまた大胆なリミックスで、クラブでかかるとチルアウト(激しいアップチューンで踊り狂った後に、クールダウンできるような落ち着くこと、そしてそんな感じに落ち着ける曲調の曲です)できそうなくらい、曲自体のもつ正確でクールな面が強調されていて、素敵です。

長ったらしい引用で申し訳ございませんが、前作のレコメンドの際の締めの言葉として、「彼らを聴いていると、『芸術至上主義やナードな若者は肉を食わない(積極的に行動していかない、あるいは、内向きな姿勢である)」と言うのが最早、古いイメージであるとすら思えます。どんどん自分の趣味や嗜好に走りながら、「分かってる人だけのお遊び」で終わるのでなく、どんどん外に向けて「過剰に」発信していく彼らは、ナード少年少女の異端児なのか、新しいベーシックなのかどちらになるのでしょうか。面白いのは、先の「POSTMAN JOHN」で、塔山さんが傍観じみて口ずさんでいる"会いたいな。昔の仲間、大嫌いさ"という言葉なのですが、昔の仲間から一人目が覚めたのか、ハッタリで終わるのか。是非、見届けてみたいものです。背筋も凍るほどに無鉄砲な彼ら』なんて書かせていただきました。

新作を聴き、さらにそれを心待ちにされた多くのリスナーさんを見て、彼らが決してハッタリで終わらはしないことが更に強く打ち出されているように感じます。


少し余談的になりますが、特に興味深いエピソードとしては、過去のライブの際に、まだ当時はデモの段階の「ラザニア」を音源だけ流して、ステージ上ではメンバーの皆さんは踊るという画期的なステージングを披露されたと言うものです。そんな邦楽の一般のテーゼや枠組みに捉えられないアバンギャルドなアプローチは、海外のアーティストのようでもあり、かつ、日本の新人ゆえの新たなライブの可能性を見せつけるかのようで、とても痛快であると感じました。

彼らはこの新作を引っさげて、来月(7月)にツアーを敢行し、東京においては初のワンマンを開催されます。
それへの期待もこめて、前作のレコメンドの時とは、似ていながら違った言葉とともに締めさせていただきたいと思います。

これから酷暑をむかえるには、ハチゲキ。の過剰な表現の数々をダンスで踊り狂いながら一気に吸収して、暑い夏をさらにアツくなってしまうのも一つ、いかがでしょうか…!
 
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  • 青野圭祐(2012.6.18)