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daydream ep
花泥棒

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梶原綾乃─2014.10.22─


昨年から、関西音楽シーンに面白さを感じている。というのも、私は東京生まれ東京育ち。昨年、初めて京都の手作りフェス「ボロフェスタ」に参加してみて、音楽のローカル性を肌で感じ、その虜になってしまったのだ。見るもの聴くものは名前も知らないインディ・ロック・バンドたち。ほぼ初めて触れる音楽たちに、日本にいながら新しい国に行ったかのようであった。フェス自体も、アーティストとスタッフ(学生ボランティア)とお客さんが平等で自由に楽しめる環境であり、初めてフジロックに行った時ほどの大きい衝撃を受けた。
 
そんなボロフェスタの中で見つけた数ある関西バンドのうち、この花泥棒に注目している。本人たち曰く『スピッツとbloodthirsty butchersを足して割ったような』バンドとのこと。他に補足すれば、渋谷系の流れを汲んだファッショナブルで、可愛らしい青春ギター・ポップというところだ。彼らは2012年に1st『ドーナッツ』を発売しており、去年は『渚』というむちゃくちゃカッコいいシングル曲をひっさげてボロフェスタに登場して、狭いステージをパンパンにする演奏をしていた。



中性に近い男声、抑揚ある豊かなメロディ・ラインは夏を想起させ、残暑におけるセンチメンタルな気持ちを代弁してくれるような音楽だ。8月に出たばかりの最新作『daydream ep』は、カントリーやブルーグラスのような雰囲気をまとわせたタイトル・ナンバー「デイドリーム」から、荒くノイジーなギターが爽快な「Sonic Youth in the house」まで、これまで以上に表現の幅を拡張させた全5曲。サウンドの路線を模索しつつも決定的な軸が見え隠れしていて、フル・アルバムが待ちきれないというところ。



ところで、どんな音が関西で、どんな音が関東なのか? それはまだ私にははっきりと断定することができないが、花泥棒はシャムキャッツの気まぐれ感とはちょっと違うし、ミツメのようなシニカルな視線も含まれていない。東京のビル群や人の波、時間間隔に追われて作られたものではない、東京へのカウンター精神ともとれる開放感がそこにあるように思える。
 
そんな花泥棒だが、現在は京都から東京へ活動拠点を移し、メンバーを募集しながら活動中とのこと。関西/関東両シーンをつなぐニューカマーとして、今一番ぐんと飛躍が期待される。


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  • 梶原綾乃(2014.10.22)