梶原綾乃─2012.10. 4─
今回は、洋楽を聴かない人に向けてご紹介しようと思います。
アメリカ生まれ、ニューヨークで活動中。ブルックリンで”最重要バンド”とされるanimal collective。その音楽は、「英語なんて分からないから…」なんて思っている邦楽大好きリスナーに、ビビッと衝撃波を与えてくれると思います。歌詞はあとでもいいので、まずは直感で感じてみて。
前作『Merriweather Post Pavilion』(メリウェザー・ポスト・パヴィリオン) の中から「summertime clothes」です。
後ろを向いたら誰かいそうな、おどろおどろしくて不安な感じ。しかしそれに対して、メロディアスなヴォーカルと中毒性のあるループの融合。いろんな情景がごちゃ混ぜになって見えてくる彼らの音楽を一言でいうと、”コラージュ”なんだと思います。いろんなところから、沢山の要素を持ち合わせて1つのものを創っている彼らの曲は、1曲で沢山の景色を見ることが出来ます。一見異質な組み合わせでも、繋ぎ合せれば彼ららしい”アニコレ・ワールド”になってしまう、とても芸術センスの高いバンドなのです。
さてさて、今回レコメンドさせていただくのは、彼らの3年ぶりとなるアルバム『Centipede Hz』(センティピード・ヘルツ)。前作と比べて違うのは、シンプルなバンド・サウンドを意識したつくりになっていること。またタイトルにある「Hz」(周波数)がキーワードで、全体的にラジオっぽい音にインスパイヤされた音作りになっていますね。
歌い口はいつになく挑発的。「Moonjock」や「Monkey Riches」など、今にも食いついてきそうな早口のリリックが目立ちます。鉄骨剥き出しの機械音が鳴っているのに、野性的な肉体感を感じさせる。それはまるで「改造人間」のよう。科学の力と人間の力が混ざり合う先に、新しいアニコレの到達点が見出されました。
前作と聴き比べると、音の質だけではなく数が違っているのが分かると思います。相変わらずたくさんの音があって目まぐるしいのだけれど、それが次第に病みつきになる心地よさ、たまりません。その中毒性は今作でも変わらないのです。音の粒で溢れた海にダイヴしていく感覚、味わってみませんか?
Dirty ProjectorsやMGMT、Vampire Weekendなどの広がりを見せる、ブルックリンの音楽シーン。そしてその根底に立つanimal collective。彼らを知れば、音楽の幅が広がっていくこと間違いなしです。
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