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Amok
Atoms For Peace

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後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)─2013.3.29─


『In Rainbows』のツアーだったと思う。国際フォーラム公演。その日はトム・ヨークの誕生日で、セットリストは埼玉スーパーアリーナ公演などに比べたら渋い選曲で、実際に現場で観ても「選曲が渋いなぁ」って思ってるだろうファンが多かったように記憶している。公演自体としてはとても満足したのだけど。

俺はセットリストよりもむしろ、フィルのドラムが同期(コンピュータなどから流れる音源のこと)とうまく噛み合ず、それにトムがイライラしているように見えて、この日の公演はなんとなく冷や冷やした。公演自体は素晴らしいものだったのだけれど、何曲かでそういった演奏上の齟齬があった。

それで、FUJI ROCK FES.で観たAtoms For Peace。



トム・ヨークはとても楽しそうだった。Radioheadの時よりも演奏時のストレスから開放されているように僕の目には映った。立川談志風のファッション(ヘアバンドだけかもしれないけど。笑)も相まって、こんなに開放されてるトム・ヨークを観るのは初めてだなぁと思った。そして、なんとなく「これは観ないでいいかな」と思ってフードエリアに引き上げてしまった。トクマル君が苗場食堂でクリープかなんかを適当に歌っていた。笑。

まあ、この間のFUJI ROCK FES.にRadioheadが出演した時も上機嫌だったのだけど。ただし、この日はフィルの他にサポートドラマー/パーカッショニストが居て、僕の聴いた感じでは外音のミックスはサポートドラマーのほうが大きかったと思う。これはリズムに対するストレスを軽減させるための編成なんじゃないかと思う。(でも、Radioheadのリズムの屋台骨を支えているのは、コリン・グリーンウッドだと思う。いつ観ても素晴らしい)

そして、話は本題のAtoms For Peaceのアルバム『Amok』。素晴らしい。というか凄い。



ソロ作の『The Eraser』の流れを組んでいる作品だと思うけれど(Atoms For Peaceはこのアルバムを再現するために結成されたのだから当たり前か。笑)、僕は近年のRadioheadの作品よりも好きかもしれない。プロダクションにそんなに差があるのか?って聞かれたら答えるのが難しいけれど(どちらもプロデューサーが同じだしね)、『LOTUS FLOWER』に感じるリズムというかドラムのタイミングのちょっとした揺らぎ(オーガニックとか、人間味とも言う)はRadioheadのものだと思う。リズムへのアプローチが違う。




僕の勝手な読みでは、Atoms For Peaceはトム・ヨークがより自由になるために、つまりバンドの演奏技術の制約を受けないで音楽を作るためのバンド/グループなんだと思う。で、それが新しいアルバムでは存分に発揮されている気がする。聴き入ってしまう。

Radioheadでの不機嫌なトム・ヨークも、“バンド”っていう本人でもコントールするのが難しいドラマ全体というかマジックというか、そういうものを楽しんでいるひとりのロックファンとしては、また観てみたいけれど。ね。笑。

いやしかし、なんか世の中のリリースペースからすると周回遅れみたいなタイミングでのレコメンドだけど。笑。忙しいので許して。 1

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  • 後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)(2013.3.29)