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1暴2暴3暴4暴5暴6暴、東洋のテクノ。
0.8秒と衝撃。

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青野圭祐─2011.8.10─


既にリリースされてから2.5ヶ月以上経っておりますが、酷暑が続くこの夏に、ふと思い出して、やはりレコメンドさせていただきたいと思いまして…遅ればせながら、紹介させていただきますのが、この0.8秒と衝撃。の『1暴2暴3暴4暴5暴6暴、東洋のテクノ。』。

早速、こちらのMVをご覧いただきたいです。アルバム1曲目を飾る「「町蔵・町子・破壊」」。




やかましいとすら思えるほどのド厚い音圧と男女混声でけたたましく吐き出される言葉の嵐、それに追従するような過剰な演奏…
映像もオカルティックな偏執的なシーンからアバンギャルドにどんどんシュールなシーンに突入していって…

もう音源でもライヴでもとかく「過剰さ」と「シュールさ」が目立つこの0.8秒と衝撃。(「。」までがバンド名です)。
MVで芸大生のようなメガネをかけて狂気爛漫とばかりに暴れ回っているのが、フロントマンでボーカリストの塔山忠臣さん、一緒に暴れてる美人のお姉さんがシンセサイザーと塔山さんと同様にボーカルを務めるJ.M.さんで、他の4人の方々はライヴ・メンバーですが、ほとんどサポートの立場を超えて活躍されています。ちなみにJ.M.さんを「美人」と称しましたが、彼女は、普段はお昼の仕事としてモデル業もされています。


敢えて、語弊を恐れずに言うと、こういった過剰で音圧もあって派手なバンドは、一時は心を鷲掴みにしても、それに持続性がなくてすぐに飽きてしまうこと(もちろん飽きがくること自体は悪いことではないのですが…)も少なくないと思いますが、0.8秒と衝撃。は、(主に塔山さんによる)バックグラウンドも豊富で、過去の色んな芸術シーンに触発された表現を「現代の感性」で鳴らすことで、非常に奥行きがあるサウンドを繰り広げることに成功しています。


彼のバックグラウンドなどを書き出すと、いささか評論チックになってしまうので、控えたいと思いますが、何はともあれ、次はこのMVをご覧ください。『1暴2暴3暴4暴5暴6暴、東洋のテクノ。』の前にリリースされていた『エスノファンキードフトエフスキーカムカムクラブEP』より「ビートニクキラーズ」です。





相変わらず勝手気ままに暴れたり脱いだりしているお二人(脱ぐのは塔山さんだけですよ!笑)ですが、注目したいのは、変わらず良い意味でやかましい過剰さとそのミニアルバムのそれも含めたタイトル!
『エスノファンキードフトエフスキーカムカムクラブEP』で「ビートニクキラーズ」なんて、一昔前の文学青年を見事に一本釣りできそうなまでに確信犯的ですよね。先の「町蔵〜」も、今では作家として有名な町田康がINUというパンク・バンドで活動していた時の町田町蔵というステージ・ネームを彷彿とさせずにいられません。

さて、続きましてタイトル通りJohn LennonならびにThe Beatlesに触発された面もあるという彼らのデヴュー曲、「POSTMAN JOHN」をどうぞ。





今回はシンプルにライヴっぽい演奏が映像のメインになっていますが、迫力、ありますよね。

思うのですが、一昔前まではインディー・ミュージックはインディーズとも呼ばれて、国内海外問わず「売れない美徳」みたいなものが、蔓延してた時代もあったと思います。そこで、葛藤しながらも売れていったインディー精神をもったバンドで、それをオルタナティヴだったりインディー・ロックと呼ぶちょっと曲がった見方すらもあったと思うのですが、昨今は、それよりもインディーでももっと伸び伸びと活動しているアーティストが圧倒的に多い感じがします。彼らも「売れたい」と言うより「俺たちは売れるぞ」くらいの大言壮語満々でもそういったスタンスを表明していますし、塔山さんはTwitterにおいても旧体制的なシステムに対して、どんどん喧嘩を売っていっている様も、良い意味でバカ正直な音楽好きの青年という感じで微笑ましいです。

最後に、戻って『1暴2暴3暴4暴5暴6暴、東洋のテクノ。』のリード・トラックである「Brian Eno」のMVを是非。





またまた確信犯的なタイトル(Brian EnoさんはRoxy Musicというバンドで70〜80年代にかけて活躍されていた方で、David BowieやTalking Headsなどのプロデュースもしていた奇才。ポストパンクからの影響も色濃い0.8秒と衝撃。とも密接な関係にありそうです)もかくや、レイヴ・パーティーといった具合のお祭り騒ぎも、これまた過剰でカッコ良いです。


彼らを聴いていると、「芸術至上主義やナードな若者は肉を食わない(積極的に行動していかない、あるいは、内向きな姿勢である)」と言うのが最早、古いイメージであるとすら思えます。どんどん自分の趣味や嗜好に走りながら、「分かってる人だけのお遊び」で終わるのでなく、どんどん外に向けて「過剰に」発信していく彼らは、ナード少年少女の異端児なのか、新しいベーシックなのかどちらになるのでしょうか。面白いのは、先の「POSTMAN JOHN」で、塔山さんが傍観じみて口ずさんでいる「会いたいな。昔の仲間、大嫌いさ」という言葉なのですが、昔の仲間から一人目が覚めたのか、ハッタリで終わるのか。是非、見届けてみたいものです。

背筋も凍るほどに無鉄砲な彼ら、その過剰な表現の数々を観ながら酷暑を乗り切るのも、いかがでしょうか。


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■RECOMMENDER

  • 青野圭祐(2011.8.10)