INTERVIEW
2020年ベストアルバム
2020年、今年リリースされたアルバムを中心にアーティストや音楽関係者にベストアルバムを選んでいただきました。
眞如 究 (Badlands/宝宝)
「Friday Forever」 - Everything Is Recorded
週末金曜日の夜9: 46PMからスタートし翌日11: 59AMで終わる今作が輝いて聞こえるのは、まさに2020年コロナ禍の状況だからこそかもしれません。このアルバムには夜遊びに向かう時の高揚感、クラブパーティーでの猥雑な雰囲気と開放感、ミラーボールの下で輝く名前も知らないコに恋してしまう感覚、酩酊状態での穿った考えがよぎった一瞬、音楽を通じて自身の内側に潜り込む感覚、朝4時から5時にかけてのキラキラとした一体感、朝帰りでの倦怠感など「一晩のクラブパーティーに恋する理由」が雄弁に描かれています。
BBC Sound Of 2021にも挙げられていたBerwynも参加。2020年のうちに聞けて良かった隠れた名作。
「Midwest Kids Can Make It Big」 - Lauren Sanderson
曲調はアゲ過ぎず、サゲ過ぎず。「インディーロックに寄ったKehlani」といった印象ですが、とにかくハスキーな歌声とメロディーがとにかくツボでした。
マーベル映画のサントラに使われていそうなくらい(ここがポイント)良曲揃いだと思うのですが、この例えで彼女の良さは伝わるのでしょうか・・・。
スケーターガールでハツラツとした彼女のファッションも最高なのでぜひMVもご覧になってください。
ことある毎に愛聴したのは「Bathroom Stall In Seattle」です。
「ULTRA MONO」 - IDLES
前作の音楽性を「Nick Cave & The Bad Seeds」と例えるならば、今作の音楽性は「2020年のOiパンク」でしょうか。
代官山Unitで観たライブの熱狂をそのままに真空パッケージしたような本作は速く軽やかに、そして賢く粋に2020年をハナから笑い飛ばしていくような疾走感があります。
こんなアルバムが初登場全英1位なんて去年ではありえなかった状況だったんじゃないでしょうか。
「俺はこんな感じでサイコーな気分なんだけど、お前はなんでそんなしみったれた顔してんの?」って言われているような、僕にとって勇気づけられるアルバムでした。ジャケットのダサさだけは勘弁してください!
「A Hero's Death」 - Fontaines D.C.
インディーヒーローからロックンロールバンドに風格が変わる瞬間ってなんとなく僕はある気がしてて、今作はその瞬間を切り取ったような、ロックンロールバンドになるぞ!という覚悟が感じられるアルバムだと思いました。
アルバム全編通してヒリヒリして冷ややかかつ熱狂的なのですが、タイトルトラック「A Hero's Death」の歌詞である「Life ain’t always empty」のクールで吐き捨てるような反復がこのアルバムを象徴しているような気がします。
この言葉が持つ意味の揺らぎや諦念や覚悟を、反復する何小節かで表現している気がしていつの間にか目頭が熱くなってしまうアルバムでした。
「 R.Y.C.」 - Mura Masa
前作ではトラップ~アフロバッシュメント~R&Bなどのポップミュージックに傾倒していたと思うのですが、今作ではポストパンク~ニューウェーブからの影響が濃く感じられて「2020年はポストパンクの年になるぞ!」とワクワクしてました。
(実際にそんなバンドが豊作でホッとしました。)
とはいえポストパンク一辺倒ではなくUKクラブミュージックのビート感覚(なのに音はスカスカ)やフューチャーポップの歪んだボーカル処理の味付けもされていて時代への目配せはさすがだと思いました。
客演のアーティストもディグるきっかけになりました。
「Cyberpunk 2077: Radio, Vol. 1 (Original Soundtrack)」 - Various Artist
もうこんな2020年になんていたくない、だったら2077年に飛んじゃえばいい・・・。
タイトル通りブレードランナーさながらのサイバーパンクなゲームで実際に流れる架空のラジオ局のサントラだが、サントラだからといって侮るなかれ。
Run The Jewels,Converge,SophieやShygirlなどが参加。
内容はサイバーパンクらしくアンビエント~インダストリアル~フューチャーポップ~ヒップホップ~ハードコアパンクなどバラエティー豊かな内容。
タフでサイバーパンクな世界では叙情的な音楽は要らないということなのか。
本ゲームは未経験なのですが、それでも大満足な内容だと思ってます。
Nina Kraviz(本人もゲームに登場するようです)やRat Boy,Grimes,Health参加のVol.2も聞いてね。
「Third Summer Of Love」 - ラブリーサマーちゃん
先行シングル「I Told You a Lie」を聞いて本作が名作になることを確認しました。
BlurとSuperorganismのミッシングリングのようなこの曲は「その手があったか~!」と脱帽してしまいました。
彼女の乾きつつもどっしりとしたギターの音色とハスキーな歌声が好きです。
早く海外デビューしてDirty Hitのアーティストたちと対バンしてください!!絶対に観に行きます!!
「Originalitos」 - Frankie Reyes
Stone Throwからリリースされたアナログシンセのみでラテンのスタンダードをカバーするプロジェクト?の二枚目。
ラテン音楽の持つサウダージが強調され、後期のゆらゆら帝国~坂本慎太郎ソロのような魅惑的で空虚な仕上がりで
誰かの忘れ形見のオルゴールなのか?もしくは世界が滅んだ後のサウンドトラックなのか?と錯覚するくらいフニャフニャな本作ですがコロナ禍である2020年にぴったりなBGMに。
平日の昼間に聞くことはオススメしません。
「CTV3: Cool Tape Vol. 3」 - Jaden
ジャケからも想像付くくらいサイケポップなヒップホップをアルバム通して展開しているのですが、エモトラップ、ボサノヴァの要素や某UKバンドさながらのオーケストラを忍ばせたりと地味ながらも押しつけがましくなく、通して聴くには最適な一枚に。
ウィル・スミスの息子さんがこんなアルバムを作るって誰も思ってなかったですよね。
「Man Alive!」 - King Krule
この人の音楽性はジャズ・ブルーズ・インディロック・ヒップホップ・アンビエントetc…とデビュー当初から一貫していると思うのですが、今作は底の見えない不気味さと心地よさが加わったような気がします。
jim jarmuschやDavid Lynchの映画を観ているような埃っぽくてどこか奇妙で捉えどころのない音楽へようこそ。
深夜散歩のお供にどうぞ。
眞如 究(Badlands/宝宝)
BIO
渋谷頭バーで瀬下 譲・村 圭史とともにRock’n’Roll DJ Party「Badlands」(奇数月第二土曜日開催)を、渋谷Tangleで瀬下 譲・KAOKERUZOとともに「宝宝」(偶数月第二土曜日開催)を主催するロックDJ。
2020年8月より瀬下 譲・村 圭史とともに「海外のインディミュージックをより楽しむためのYouTubeチャンネル」である「Indie倶楽部」を始める。
チャンネルURL▶
https://www.youtube.com/channel/UCuYBoWIw5QY_cHHPT8p5FNQ
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