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(2020.12.24)

2020年ベストアルバム

2020年、今年リリースされたアルバムを中心にアーティストや音楽関係者にベストアルバムを選んでいただきました。

「Underneath」 - Code Orange

今年春頃にリリースされて以来、アルバムとしては1年を通してずっと聴いていた1枚。大げさに言うなら、この時代におけるヘヴィミュージックの領域を確実に広げた作品。前作までは脇役程度だった、インダストリアルやエレクトロニカのサウンドを、Nine Inch Nailsに在籍していたChris Vrennaをプログラミングアシスタントとして迎え飛躍的に前進させることに成功。ツインボーカルになったことで目まぐるしくかつユニークなコントラストを演出。出自であるヘヴィでスリリングなブレイクダウンやシュレッドギターも斬れ味抜群。
惜しくもCOVID-19の影響でリリースツアーやコーチェラフェスティバルへの出演など流れてしまいましたが、自ら配信ライヴやアコースティック盤のリリース、マーチャンダイズに至るまで徹頭徹尾、常にクリエイティヴであり続ける彼ら。グラミーノミネートによりマジで風向きを変えるような存在になりそう。 今年のベストアルバムです。

「POST HUMAN: SURVIVAL HORROR」 - Bring Me The Horizon

去年の大傑作『amo』が実験的な野心作だったのに対し、今作はかなり勢いで作ったのかなという印象。1曲目からメタルよろしくなギターソロや展開が、王道/原点回帰か?と思いきや、YUNGBLUDやNova Twinsら新世代勢とのコラボや既発シングルでグイグイ魅せつつ、まさかのBABYMETAL とのコラボもちゃんと両者の良さが共存してるという、本作で1,2を争うキラートラックだったり、EvanesenceのAmy Leeとのコラボはやや物足りない感じでしたが、「やっぱこいつら天才だった」とヒシヒシ感じた1枚。リモートでの制作風景がYouTubeチャンネルで公開されたり、 この状況下で曰く、バンド史上最もクリエイティヴな状態と言い切っちゃう感じも絶好調ですね。しかもこの『POST HUMAN』は連作だそうです。こっから続くなんてやっぱり天才だ…。

「ANTI-ICON」 - Ghostemane

この手のサウンドはメタルトラップやホラートラップと呼ばれてるんですが、そういった定型から逸脱した、このジャンルに置ける一つの到達点的アルバム。ゴシック/インダストリアルやブラックメタルなどを独自解釈で料理し、現行トラップのビートを基礎に置いた新旧いいとこ取り。見た目もそのまんまブラックメタルと全盛期のマリリンマンソンを今っぽくした感じ。ステートメント的にMayhemの超名曲”Freezing Moon”のメインリフをピアノで入れてきたり、全てにおいてお洒落すぎ。

「Van」 - Clown Core

去年だったか、Twitterで彼らの存在を知り以来夢中になっているデュオ。サウンド的には、激烈に高い演奏能力を武器に、エクスペリメンタルジャズ/前衛音楽、ゲームミュージックや8bit、そこにグラインドコアばりの悪魔のようなスクリームが入るブレイクダウンという情報量の多さに眩暈が…さらにMVが凝ってて、凝っててっていうかバカなんですけど、本作の場合は全てタイトル通りジャケの青いヴァンで撮影。
運転しながら。しかもそのヴァンを公式マーチとして販売しちゃうというバカさ加減強めの姿勢。公式サイトもキナ臭い奇怪な作りになってたりでもうめちゃくちゃ。ちなみに前作の『Toilet』では全編簡易トイレでした。
とにかくまだまだ謎が多い。疑問符の渋滞。けどちゃんと格好良いのが不思議な魅力のこのデュオ。文字で読んでも全くなんのこっちゃわからないと思うので百聞はなんとやら。

「Ghosts V : Together / Ghosts VI : Locusts 」 - Nine Inch Nails

トレント・レズナーが突如「正気でいるために」とファンに向けてステートメントを発表しドロップされた、アンビエントな連作アルバム。(オフィシャルで無料ダウンロードできます!)
対になっているというわけではなく、各々テーマがあるアルバムで、『V: Together』は「物事が全てうまくいくように見える時のためのもの」、『VI: Locusts』は「君自身で理解してほしい」だそうです。
ここ数年世界的に評価の高い映像作品、特に最近だと『Watchmen』やA24の『Waves』などでサントラを手掛け、トレント&アッティカス名義で参加しているNIN。そこでの経験や制作メソッドがこのシリーズでNINの名の下に見事に活きた形に。
推測ですが、きっと本人達も相当なストレスがあり、この状況を上手く飲み込めなかったのだろうなという雰囲気が読み取れる耳触りのある作品で、不穏でありながらあまりにも美しいサウンドスケープや余韻を含んだエンドロールのような終わりは、まるで、『2020年』という映画のサウンドトラックみたいでした。

「Mestarin kynsi」 - Oransi Pazuzu

フィンランド出身のブラックメタル/エクストリームメタルバンドの5枚目。ジャーマンプログレからレディオヘッドに至るまで様々な要素を混ぜたような、複雑な曲ばかりですが、どれも恐ろしく聴きやすいところがヤバい。
さらにブラックメタル黎明期のジャンル越境精神や傾向を受け継ぎながら、新しいブラックメタルを発明したかのような傑作。
安心していて気付いたら時既に遅し。後戻りの出来ない危険なところに連れて行かれるような感覚は、映画『ミッドサマー』に通ずるカルト感。そこが制作動機という話も2020年っぽくて◎

「Salvador」 - Sega Bodega

グラスゴー出身のプロデューサーのデビューアルバム。UKベース〜グライムなビート、哀愁漂うメロウでエクスペリメンタルな展開のアルバム。哀愁な部分はArcaにも通ずるような気も。
もっと話題になっても良いのにな〜。ポップで中毒性があって、尚且つ暗めで湿ったビートが好きな人はハマると思う。彼が主宰するクリエイティヴ・コレクティヴ<NUXXE>は今年良いリリースいっぱいあったので本作が好きな人は要チェックです。

「Inner Song」 - Kelly Lee Owens

ダンスミュージックのジャンルでは今年一番好きだったアルバム。いかにもフロアライクで、アップリフティングなキックが耳を引くテクノや、Bicepのようなハードさが際立つローファイトランス、ダウンテンポなRadioheadのカヴァーまで、先鋭的なミニマルテクノがぎっしり詰め合わさっているんですが、彼女のヴォーカルのドリームポップ/陶酔さがこのアルバムを只のミニマルテクノアルバムに留まらせない最大の魅力。
冷たい内省的なヴォーカルなんですけど、詩的なフレーズが沢山散りばめられているところ、テーマもアートやメンタルヘルスから環境問題まで色々あって、(曰くコンセプトは「誠実であること」)いつ聴いても深い体験に連れてってくれる感じが最高です。

「At The Beginning」 - THE NOVEMBERS

「クロスオーヴァー」や「ミクスチャー」という概念だったり捉え方は今や当たり前の時代で、ロックバンドがどんな音楽性に接続したり、深くなっても、その2つから解き放たれて新しい景色が見える瞬間が一番興奮しません?
ラルクやヴィジュアル系、メタル寄りのグランジ、電子音楽/インダストリアルビートなどなど、数え切れない異種配合を繰り返し、誰も聴いたことのない美しい異形なロックアルバム。まだまだ新しい景色が沢山見れそうです。

「I Let In And It Took Everything」 - Loathe

UK新世代ヘヴィネスを代表するバンド。「メタル」なんですが、形容するのがかなり難しいサウンドで、、、Deftones以降のモダンヘヴィネス、Deafheaven界隈のポストブラックメタル、The Dillinger Escape Planのようなハードコア・カオティックな要素だったり、 さらにはNothing界隈の新世代シューゲイザー色までも侵食。ここに独特なUK特有のアンビエント感、(Radioheadっぽい雰囲気って言うとわかりやすいかも)で、00年代エモみたいな甘めのボーカルメロディも。
列挙した数々の要素があり得ないスピードでごちゃごちゃに混ざって溶け合ったような作品。Code OrangeへのUKからの回答、とも言うべきか。20年代のメタル/ヘヴィミュージックはまじで面白そうです。

今年も参加させていただきありがとうございました!今年は去年ここに書いた「コーチェラフェスティバルに行きます」がポシャったのを皮切りにとても大変で退屈だった一年でした。とんでもない時代に生きているなと思ったりもしたんですが、不思議なものでこんな事にならないと出会わなかった人や音楽に出会えたりしたのが本当に救いになりました。音楽も今年は大変革期で、特に自分が好きな分野の音楽が本当に豊作で選ぶの大変だったなあと噛み締めています。活動面では、レギュラーDJしっかりやりつつ、この状況下で東京にも行けたし、知り合う人も増えたり、あと最近NAHAVANDとライヴ活動再開し始めたので、それが今一番楽しいかも。曲制作とかも始めたりだったり、なんだかんだ良いこと多くて最悪な一年だったけど、悪くない一年という中途半端な感想です(笑)来年は今年出来なかったこと含め、今やってる新しいことをもっと本格的に進めていきたいですね。

DJ KiM

DJ KiM

BIO
大阪生まれ、大阪育ちのDJ。2014年にDJ SEOと出会い、彼が主宰するGROOVER/ALTER-NITEに加入。2016年からは田中宗一郎が主宰するCLUB SNOOZER OSAKAのサポートも務める。2017年には同世代の仲間とGEEKS AND FREAKSを結成、これまでに4回同イベントを開催。2018年1月には、NAHAVANDと共に初主催のオールナイトパーティ"Vandalism"を主宰。これまでゲストとして小林祐介(THE NOVEMBERS)、Olive Oil(OILWORKS)、環ROY、mabanuaらを招聘した。2019年には新パーティ・”TwinTail”を真如 究と共に始動し大阪東京間で3回に渡って開催。東京編ではBAKU(KAIKOO)やJin Tanakaらを招聘した。
2018年11月よりNAHAVANDのLIVE DJとしてサポートメンバーに。2019年はアルバムリリースパーティーも共催。それ以降数本のライヴのみで活動が止まっていたが、2020年11月より再始動中。

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