岩崎愛 岩崎慧 インタビュー
『Brother & Sister』はとっても温かい音楽で、ふたりの体温が伝わってくるような歌でした。おふたりの呼吸、間の取り方のハモリぶり。また、ふたりの声はそれぞれにカラーを出しているのに、その色が溶け合ってひとつの色になっているような印象で、それはやはり兄妹だから成せる業だと感じます。
慧「そうですね。声が似てますよね、波長というか。小さいころから、僕が聴いてきた音楽を愛も聴いていたりするので、歌い方とか似てるんですよ。ボーカリスト同志の掛け合いとかハモったりすることがあるじゃないですか? それがナンバーワン、ダントツでやりやすいですよね、愛とは。何も打合せせずともいける感じがあっていいですね」
先に、愛さんにお話をお伺いしましたが、数々エピソードを聞いて、本当に良い兄妹関係で、憧れの兄妹像だなと思いました。
慧「そうですね(笑)。憧れの兄妹像だと思います。自負してますけど(笑)」
慧さんにとって、愛さんは小さいときからどんな存在だったのですか?
慧「いやもう、可愛くてね、小さいときは可愛かったですね。今も可愛いですけど。自分は兄貴なんで、どこ行くにも小さいときから愛は僕の後ろをついてきて、僕の友達の中にもスッと入っていける人懐っこさが昔からありましたね」
慧さんの買ってきたCDなどを、愛さんは漁って聴いたりしていたそうですが、慧さんはそんな愛さんをどう見守っていましたか?
慧「センスいいなと思っていましたね(笑)。そのころだと、今で言うところのアイドルソングみたいなものも流行ってはいたんですけど、ふたりともそっちには興味は示さず。どっちかっていうと、昔の音であったり、現代の中でも面白いことをやっている音楽家の方の音楽を好んで聴いていましたね」
慧さんは、早くから音楽の道に進まれたようですが、いつごろからオリジナル曲を作っていたんですか?
慧「16歳くらいからですかね。高校を1年生で辞めて、その後ずっと朝から晩までアルバイトをしながら音楽活動をしていたんですけど、夏くらいにアルバイトを1週間休んで日本を一人旅しようかなと思って青春18切符とギターとバックパックだけ持って電車に乗って、なんと京都辺りで財布を忘れたことに気付いたんです。でも“まっいいかな”と思って、財布を持たずそのまま行きまして、ストリートでギターを弾いて歌ったんですよね。そのころストリートミュージシャンがそこまで流行ってなかったから、物目ずらしかったかもしれないですけど、結構みんなお金を入れてくれて。それで1週間足らずですけど、旅の生計をたてたことがありまして」
財布を忘れて、自分の歌で稼いで旅の生計をたてるとは、すごい経験ですね。
慧「その経験は大きかったですね。“すごくやりたい”と思えるようになりまして。プロになりたいと思うきっかけになりました」
慧さんは、そのころ自分の作った曲を愛さんに聴かせたりしていたんですか?
慧「聴かせてましたね。当時、愛は12歳だったんで、そのころの愛ちゃんは音楽にあまり興味がなかったみたいですね、そのころは友達と遊ぶのが楽しい感じで。僕が、18、19歳位に今のバンド“セカイイチ”を始めて、そのころは曲を聴かせて“どう?”って感想をもらったりしてました」
その後、愛さんもギターを持って歌うようになったわけですよね。
慧「そうですね。確か、愛が中学3年生くらいで、僕が音楽を始めた年と同じくらいと記憶してますね。それで愛が16歳のころかな? ライブをやるってことになって。そのころ、僕はもう東京にいたんですが、そのことを聞きつけまして、“これは観に行きたい”と思って、新幹線に飛び乗って、こっそりとチケットを買って観に行きましたね」
東京から駆け付けたんですね。そのときの愛さんはいかがでしたか?
慧「最初のライブだし、そんな期待はしてなくて“がんばれ!”と思って観に行ったら、思いのほか良かったんですよね。そこの対バンに、僕が16歳や17歳の頃にライブハウスに出だした頃に対バンしてたすのうさんという方がいたんですよ(笑)。なんちゅう因果やと思いましたよ(笑)」
(笑)。愛さんが、初めてライブを観たのは“セカイイチ”のライブだということで。体験として、初めてのライブ、ライブハウスって、すごくドキドキするし、ずっと記憶に残ると思うんですけど、それがお兄さんっていうのは、また違うドキドキ感も重なって、不思議な体験だと思うんですよね。
慧「そうでしょうね。僕らのいとこに、高鈴っていうソニーからデビューしていた女性ボーカリストがいるんですけど、僕が初めて観たライブもそのいとこの高鈴だったんですよ。だから、愛と同じ気持ちを味わいましたね。しかも、その場所がジャズライブハウスで、すごく大人っぽい場所で居場所に困った感じを覚えていますね」
音楽環境には恵まれた家系ですよね。
慧「そうですね。そういう状況は、ラッキーだったなと思います」
その後、音楽を始めた愛さんに慧さんがアドバイスをすることはあったのですか?
慧「1stアルバムを作ったときかな、すごくいい作品なんだけど思うことがあって、バラードが多めだったので、ライブ映えする曲も作ってみたらと言ったんですよ。コソッと何の気なしに言ったんですよね。そしたら、こっぴどく愛に怒られまして(笑)。あれ!? 遅れてきた反抗期ってやつかなと(笑)。そこから、あんまり言わないようにしてますね」
愛さんが音楽活動を始めてしばらくは、慧さんの妹だということを隠していたと、おっしゃっていましたね。
慧「そうなんですよ。愛に“言わんといてや”って言われて、“わかった”って。僕としては、応援したいんやけどなと思ってはいましたけど。なんか、どっからともなくバレて、“もういいや”ってなったんですよね」
きっと、慧さんのフィルターをかけて見られるのも嫌だったんだろうし、自分は自分で勝負したかったんでしょうね。
慧「まあ、そうでしょうね。それがなかったら、しんどかったと思いますしね」
それぞれ別に活動されていたふたりが、お正月、お盆に帰省したときに開催していた“岩崎家お里帰りライブ”をきっかけは、共演するようになったんですよね。
慧「“お里帰りライブ”以前にも、何度か一緒にやったりはしていて。一番最初に愛と一緒に歌ったステージは、大阪のイベントで“OTODAMA”ってあるじゃないですか? そこなんですよ。そこにセカイイチがトリで出させてもらったときがあって、そのときは野音やったんですけど、愛が観に来ていて。そのとき、愛がデビューも何もしてなかったときなんですけど、“ちょっと妹が観に来てるんでコーラスで上げてもいいかな?”って感じで、一緒にコーラスしてもらったとを覚えてますね。あれは楽しかったですね」
そうなんですか!? それは、お客さんもみんなビックリしたでしょうね。
慧「みんなビックリしてましたね。愛が歌ってるって、みんな知らないころですからね」
“ただの妹にしては、上手すぎないか?”って、みんな思ったでしょうね(笑)。
慧「面白かったですね(笑)」
今回リリースとなる『Brother & Sister』が、兄妹では初めての作品ですね。愛さんから話を聞いたときは、ふたつ返事で「ええよ!」と快諾されたそうですね。
慧「はい。そういう話を持ってきてくれて、うれしかったですね」
『Brother & Sister』は、最初に愛さんが作詞作曲されたものを、慧さんに送ってというやりとりで作られたそうですが、最初のこの曲を聴いたときの印象は?
慧「Aメロの部分だけ出来てるっていうので、それを聴かせてもらって。愛っぽい感じやなと思って。兄妹してそうなんですけど、ブルースの街・大阪で育っているので、ほっとくとすぐ土臭くなってしまうので、それは少し押さえつつこの曲を作ろうと」
口笛も相俟ってポップで弾む楽曲になりましたね。
慧「そうですね。そういう感じで作ろうねって話しながら進めました」
『Eighteen Sister』『name』は、慧さんが作られた楽曲で、愛さんとの実話が描かれているようですね。
慧「そうですね、まさに。僕の片思いみたいなもんですよ」
兄の見守る視線にジンときました。
慧「完全に、星飛雄馬(漫画「巨人の星」)の姉さんみたいな立場ですね(笑)」
愛さんもこの『Eighteen Sister』を聴いたとき、うれしかったと、“ええやん!何も言うところがない”と、仰っていました。18歳の愛さんが自分と同じ音楽家という道を選らんだことについて綴られていますね。慧さんの2012年1月のブログに、愛さんについ書かれていた記事もありました。“今でもその気持ちをありありと思い出せる”と、ありました。
慧「あー、ブログ書いてましたね。18歳ころのその気持ち、ある種“ひとり立ち”じゃないですか。雛鳥が巣立っていくような気分といいますか、愛ちゃんのその想いをそういう気持ちで聞いていましたね。自分も誰かにそう思われてたんかなと思いながら。当時、自分の子どものように、愛に接していたように思いますね」
“相当タフな出来事も ハイになって越えて”と歌詞の中にありますけど、愛さんが仰っていましたが、慧さんが音楽の道に進むときに、お父様から“人と違う道に進むには人の3倍以上努力しなきゃいけない”と言われていたと。
慧「そうですね。親父は、結構真っ当な仕事に就いているんで、“大変な道だろうけど、大丈夫”って言ってくれて、ちょうどそれを妹も見ていて、自分の中に帰する想いもあったんじゃないですかね」
慧さんは、同じ道に進む愛さんをどうように思っていたのでしょうか?
慧「僕の後に続くから大変やろうなと思ってたけど、大丈夫だろう、この子ならと。マイペースだから、自分のペースを崩さずやるんだろうなと思ってました」
『Eighteen Sister』は、メロディが切ないながらも、微かに光を差しているような空気感もあって、サウンドの世界観が詞の世界に臨場感をもたらせていますね。
慧「ブルックリンの音楽っぽい空気感を出したいと思っていたんですけど、日本語を乗せるので日本人だよ俺達みたいな雰囲気も入れて、Bメロはそういうメロディの進行になっていると思います」
『name』は、慧さんのカウントと愛さんの声も頭に入って、“せーの!”で録った雰囲気がとても温かいですね。
慧「このレコード、最初は2曲収録でって言われてたんですけど、もう1曲あってもいいんじゃないかと思って。“愛の話まだあるで、こんな話もあるんですよ”って気持ちで作って。愛と事務所の方に聴いてもらったら、“これもいいので入れましょう”ってことになって」
これは、名前について愛さんが慧さんと話したときのお話ですね。名前の“愛”と“愛”の意味についてのダブルミーニング的な歌になっていて。兄妹の日常であった会話を、慧さんはすごく覚えていらっしゃるんですね。
慧「他のことは忘れやすいんですけど、そのときのことは覚えていますね。とてもいい感じだったですよ、若かりしころではないとそういう発想はできないと思うんですね。そういうのを、自分もおそらく通っていたんだろうけど、久しぶりにその気持ちにさせてくれる瞬間だったというか。そのことをよく覚えていますね」
“兄妹”がテーマになった1枚ですが、聴き手は自分の大切な人を思い出し、思い出があふれてくるような普遍的な楽曲が並んだ1枚になりました。ずっとずっと聴いていきたい楽曲ですね。
慧「そう言っていただけるとうれしいですね。ありがとうございます」
そして、5月からは北海道、仙台、東名阪を廻るリリースツアーもあります。兄妹で阿吽の呼吸で、その場その場でいろいろ起こりそうですね。
慧「そうですね。昔から何でもセッションしまくれる感じやったんで、ホントにそのとき思いついたこととか、お客さんの感じとかを見ながらアドリブで何でも出来そうな感じがしています。楽しみですね」
今回の作品は、RECORD STORE DAYにレコードでリリースとなります。この日、たくさんのミュージシャンの方がレコードをリリースされますが、気になる作品はありましたか?
慧「RECORD STORE DAYっていうことで、古き良きレコードをって気持ちもあって、マイルス・デイヴィスとかもいいなと思いましたが、 フレーミング・リップスが大好きなので、フレーミング・リップスを聴きたいなと思いました。自分の好きなバンドがRECORD STORE DAYに参加していて、そこに自分の作品を並べることがうれしいなと思います」
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岩崎慧 岩崎愛『Brother & Sister リリースツアー 〜ふたりは兄妹〜』
- 2015年05月06日(水) 北海道 札幌musica hall cafe
- 2015年05月09日(土) 大阪 西長堀cafe Room
- 2015年05月10日(日) 大阪 西長堀cafe Room
- 2015年05月16日(土) 愛知 大曽根Blue Frog
- 2015年06月04日(木) 東京 下北沢440
- 2015年06月14日(日) 宮城県 仙台 Bar and Event hole Tiki-Poto
⇒ 詳細は 岩崎愛オフィシャルサイトにて
- 2024.12.04
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