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(2011.08.09)
五味岳久(LOSTAGE) ×後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)

五味「でも、チームでやる喜びってありますよね。今回あんまメンバーも手伝わなかったんですよ。みんな普段仕事してるし、僕に任せてくれてたし。それで僕は一人でやったけど、"できた!"っていう時の感動にメンバー間のズレがあって。完成した時の感動を同じように共有できなかった、それが寂しかったというか。だから、たとえば物販作るにも何人ものチームがいるような規模のバンド、その大きいチームをちゃんと回せてるバンドっていうのは、僕が知らない喜びのエネルギーがあるんやろうなって思う。だから今回は自分で全部やったけど、次はもうちょっと共有できるものにしたいっていうか、そっち側に行きたいなって思ったんですよ」

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後藤「信頼できる人とチームになってね。そういう意味ではアジカンは恵まれてる。なぜならキューンレコードっていう会社が、スタッフが、正直いいから。社長を含め、やっぱスタッフにちゃんと血が通ってんだよね。まぁソニーってまとめられちゃうと、いろいろ言われたりもするけど」

――そうやって多くのスタッフに任せて自分は音楽に専念するというスタンスで、後藤さんは満足していますか。

後藤「......満足してない部分もあるんだろうね。だからThe Future Times(後藤正文が編集長を務める新聞、webサイト)とか自分でやり始めたりしてて」

――満足しきってたら、五味くんの今回の動きにこれだけ食いついてないですよね。

後藤「うん。あと単純に興味があるのは、いろんなしがらみを一身に引き受けるはずなのに、曲が前よりも開かれてる印象があって。別に誰かに媚びたわけでもないはずなのに」

五味「そうなんすよね。それは僕も不思議なんすよ」

後藤「別に自分でやるから売れ線の曲書かなきゃ、って思ったわけじゃないでしょ。でもなんかスッと素直に『NEVERLAND』とか『楽園』みたいな曲が出てきたりするっていう」

五味「(苦笑)けっこう僕、昔から売れたいって気持ちはすごいあったんすよ、もともと」

後藤「でも、いつ見てもなんか猜疑心の塊みたいな印象あるよね(笑)」

五味「もう性格的なものなんでしょうけど。"こういう曲作ったらみんな喜んでくれるんちゃうかな?" "こうしたほうが絶対キャッチーになるやろう"、みたいなことも考えながら作るんですよ。でもそこで、やっぱ周りにいる人のことを考えてしまう。ディレクターとかマネージャーとか、そういう人たちとのやり取りの中で"これ売れると思って作ってる...と思われてるのがなんかイヤ"みたいな。変な屈折ですけど、そこに余計なエネルギー使ってて。でも今は誰もいてない。自分とメンバーしかいてない。そこで、一人でも多くの人に聴いてもらうためにどうすればいいかって考えたし、そこで開いたもんがストレートに出た感じがしますね。なんか僕、音楽でメシ食ってるレコード会社とかマネージメントとかに対して"こいつら何なんやろう?"みたいな感情がずっとあったんですよ。必要性はある程度わかったけど、たぶん今も思ってる。"この人らは音楽作ってない、作ってる人の周りにいるこいつらは一体何を考えてんのやろう?"みたいな」

後藤「でもそれはあるよね、確かに。俺も思う」

五味「でも、そう思うのも失礼やし、思ってる自分も嫌になるし。だったら自分でやってみて、同じ目線で話せたほうが近道なんじゃないかなって思う」

――あとは時代の変化も当然あって。昔は大勢のスタッフがいてもペイできるくらい、そしてバンドも充分食えるぐらいにCDが売れていた。それがこの10年くらいで本当にキツくなって、周りの人は給料が出てるのに音楽を作るバンドマンが食えてない、みたいな現実が出てきた。

五味「それはありますよね。だって印税が2%とかって、今の時代のパーセンテージじゃないじゃないですか。最初のほうに決まったんがそのままズルズル来てるわけでしょ? そこ変えてくれるんやったらね、俺らも会社の人と新しい道を作るために頑張っていこうって思えるけど。未だにわかんないですもん。なんで2%とか1%なのか。誰も説明してくれないし」

後藤「そうだよね。あとは著作権のシステムに登録することって何なんだろう? みたいな。もうずっとマネージメントと話してるんだけど、まずどうして出版社に印税の半分を取られるのか、そのパーセンテージの分け方は何なのか、って思うじゃない。なんでみんな一緒の分け方なのか、CDの値段もなんでみんな3000円なんだろうって。1枚ごとに労力も違えば中に入ってるものも違うし。全部をひとつのシステムにまとめてこうっていうのが、もう間違ってるよね」

五味「はっきりズレが出てきてんのに、無理やり押し込めて今までやってきて。それで何とかなってた時代もあったんでしょうけど、もう無理ですよね。たぶん、僕みたいにじゃあ自分でやりますっていう人、これからめっちゃ増えてくると思いますけどね」

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後藤「そうだよね。でも、だったらなんでCDだったのか、っていうことも聞いてみたいな」

五味「発売するメディアが、ってことですか?」

後藤「うん。たとえば七尾旅人くんがやってる『DIY STARS』とか、ものすごくよくできてるじゃない。マスタリングしたらすぐに販売できて、アーティストの取り分はものすごく多い。ジャケットにして流通させるっていうやり方は、今の話でいえば旧態依然としたレコード会社のシステムを襲踏するわけで。そりゃなんか、しがらみの中に自分から突っ込んでいくようなことが生まれると思うんだよね」

五味「わざわざCDっていうモノにする時点で」

後藤「そう。もう俺は常に迷ってるんだよ、最近。CDで出す意味なんだろう、なんでTシャツに曲がついてちゃいけないのかな、とか。逆に五味くんだったら絵が描けるんだから、自分で描いたアートワークに曲がついててもいいじゃない? Tシャツとかマグカップに曲がついててもいいし。俺、アニマル・コレクティヴの靴にテープがついててびっくりしたもん」

五味「あぁ......でも、やっぱり音楽に対して対価を支払ってほしい、っていうのは最後までなくしたくないというか。昨日僕Twitterで言ってたんですけど、今回特典をいろいろ作ってて。タワーはこれ、ユニオンでこれ、フレイクではこれ、みたいな。でもそれって音楽じゃないところがメインになってないかと。もちろん音楽に対価を支払ってもらってる、っていう感覚が得られるなら何でもいいんですよ。レコードで聴きたいっていう人に対してはレコード作るし、パッケージとかいらんっていう人には配信で売るし。ただ、その、靴にダウンロード・コードを付けるようなやり方だと靴を買ってるみたいな気がしてしまう。そう自分で思ってしまうから、たぶん作らないだろうし」

後藤「なるほどね。TシャツだったらTシャツ買うっていう」

五味「まぁ、CDっていうメディアにデータの入れ物以上の価値があんのかって言ったら、ないと思うんですよ。いくらアートワークがどうのって言ってもね。それはわかってるけど、なんで今回CDなんかって言ったら、僕がCD世代やから。自分がいろいろ吸収してきた時代がCDで、だからCDで出したかった。ただそれだけのことなんちゃうかなぁ」

――今回の『CONTEXT』は歌詞カードを読めば気付くことがあるし、やっぱりCDというパッケージにすることへの意地があるんじゃないですかね。後藤さんの場合は『マジックディスク』に同じ意地を込めたと思うんだけど。

後藤「うん、確かに」

五味「うん、意地みたいなのはありますね。もう意地でやってるとしか思えない(笑)。まぁCDだから問題はね、勝手に流出したりとかもありましたけど」

後藤「あの流出事件はショックで」

五味「もう思い出したくもないですけど(苦笑)。あれはでも......やっぱ悔しかった」

後藤「友達とかにしか配ってないわけでしょ?」

五味「そうっすね。バンドの友達と、あとは知ってるライターさんとか。直接自分で送ってたんで」

後藤「そこで流出するってすごいよね」

五味「だから故意にやられたとは思ってないです。うっかりどっかから出たんやろうなって......思うことにしたんですけど。これ誰がやった、とか言い出してもしゃあないし、そんなことしても全然生産的じゃないし」

後藤「でも、この問題って付き合っていかなきゃいけないよね。CDで出したら、もう次の日には誰かがアップする。そういう時代になってしまったっていう」

五味「どうしようもないなぁと思いましたね。これ絶対なくならんし、逆にもっと増えて、酷くなってくだけやろうなって」

後藤「でも音楽は最終的にタダになるのかっていうと、俺はならないと思う。幻想なのかもしれないけど、録音芸術っていう表現も充分に魅力的だと思うんだよね。今この環境でしか作れないものってあるでしょ。たとえばLOSTAGEが奈良のNEVERLANDっていうライブハウスで録って、今すごく親交のあるアチコさんたちをコーラスに呼んで録音するっていう。誰でも使えるスタジオで、どうでもよく録ったもんじゃない。この時代のこの人たちの音でしょ、っていう意味」

五味「そこにも価値はもちろんありますよね」

五味岳久 -PROFILE-

2001年地元奈良にて五味兄弟を中心に結成。現在も奈良在住、地元を拠点に精力的に活動中。 90年代のあらゆるロック的なものに影響を受け、地方発信、地域密着をモットーに独自の活動を展開。結成当初はツインギターの4人編成であったが、幾度かのメンバーチェンジを経て前作『LOSTAGE』から3人編成にて活動。 2011年、結成10年目を節目に過去いくつかのレーベルからのリリースを経て独立。自主レーベル「THROAT RECORDS」立ち上げる。8月3日にリリースしたミニ・アルバム『CONTEXT』を携え8月5日より"CONTEXT TOUR"をスタート、ファイナルは9月23日(金)新代田LIVE HOUSE FEVER。また、Twitter上で五味岳久の描く「五味アイコン」が話題を集め、アイコンイラスト集『五味アイコンBOOK #oshare in DICTIONARY』を9月23日(金)に発売する。

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2011.8.3 ON SALE!!/ DDCZ-1763 / ¥1,680(tax in) / THROAT RECORDS

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