INTERVIEW
――一発録りはメンバーの希望だったんですか?
ケイタ「EPの時はそれしか方法がなかったからやってみたら、いいテイクが録れるってわかって、俺はフル作る時も一発録りでやりたいと思ってて。それで、後藤さんも、いいんじゃないかって言ってくれて」
――でも、さっき後藤さんが言ったようにハードルは高いわけですよね。
後藤「うん。でも、意識をどう持っていくかですけどね。今回はDr.DOWNERってバンドが録音できればよかったから。別にこの人らの綺麗な演奏が聴きたい奴らなんていないっしょっていう。いわゆるメジャーの作り方とは違う、"揃ってるか揃ってないかわかんないところもあるけど、死ぬほど揃ってるところもある"っていうのが素晴らしいと俺は思って聴いてましたけどね」
猪股「一発録りは時間が掛からないし」
――そこか。
後藤「でもね、予算的な問題もゼロでない。10曲を数日で録らなきゃいけないし、エンジニアは一流を選ばなきゃいけないっていうことで、お金を払って来てもらってるので」
猪股「そういうところと、バンドの一発録りがいいっていう部分が、上手く合わさったみたいな。オケ録りなんて、2日半だからね。10曲を2日半で録るって、リズム録って、重ねてってやってると、100パー無理なんですよ」
――じゃあ、苦労もあったでしょう。
猪股「同じところで何回も間違えると、よくない感じになってったりね(と小石を見る)」
星野「すげぇ見てる」
後藤「小石のメンタル問題じゃない? メンタル、すげぇ弱いから。高いマイクを叩くっていう事件があって」
――えええ!?
小石「あれはメンタルの問題でしたね」
後藤「30万くらいのマイクを叩いて凹ませて」
小石「マイクも凹んだけど、俺が一番凹んだっていう」
ケイタ「それで、その日は終わったね」
後藤「小石が金の話しかしなくなっちゃって」
小石「こんなことしてる場合じゃないって思っちゃって」
後藤「バイトのシフト入れなきゃって。小石は、もうちょっとドーンとしてないとね」
猪股「ドラムだしね」
――それ以外は順調でした?
猪股「はい。普段スタジオで練習することと一緒ですからね」
後藤「ただ、前よりも、エンジニアの腕がいいだけに、クリアに録れるから、そういう部分ではEPより演奏はシビアですよね。そのあたりは本人たちも演奏してて、"もうちょっといいはずだったんだけど? "って思ったところはあったと思うよ。その中で、もちろんベストなテイクは選んでいるけど」
ケイタ「うん。レコーディング終わって、レコーディングした曲を何回かライブでやってるんだけど、上手くなってるなって思う。あと、EPで『さよならティーンエイジ』録って、フルでも録った時に、結構速くなってたんです。この方が、カッコよくて気持ちいいなって」
後藤「へぇ、アルバムの方が速いっていうのは気づかなかった」
ケイタ「嘘ぉ!?」
後藤「シングルの方が速いと思ってた。何故ならシングルの方が音が凶暴じゃん。そういうイメージで勝手に」
――ちなみに、さっき猪股くんがいない間に話題にあがったんだけど、アルバムを作る前に何かしらの設計図は描いていたんですか?
猪股「ライブでやってなくて、フル・アルバムのために作っていった曲がほとんどなので、同じような感じの曲はあんまり入れたくないとは思っていましたね。ただ、バリエーションはあるけど、何やってもちょっと変な部分があるので......俺たちのノリっていうのかな。どんな曲をやっても結局うちのバンドになるんだっていうところは出したかったです」
――後藤さんとのやり取りで強く印象に残っていることはありますか?
猪股「曲作りとか歌詞自体には、ゴッチさんから言われたことはそれほどないんですよ。でも歌録りはねえ、かなりしんどかったよ。もう......もうね、"あー、明日もまた歌録りだ、頑張らなきゃなぁ"って思って、夜寝るんですよ」
ケイタ「酒飲んじゃダメって言われてるし」
後藤「相当甘やかしたつもりだけどね。もっとやろうと思えばいくらでもできるよ」
猪股「精一杯やりましたけどね」
後藤「まぁ、楽しくないと思いますよ、あんだけ録ったら。10曲を2、3日で録るわけだから、終わったと思ってもまたあるし、コーラスもあるし」
猪股「ダメって言われるし。でもよかったと思いますけどね。それくらいやらないと。歌が大事っていうことは、ずっと前から話してたから」
後藤「よく録れたでしょ? 」
猪股「そうですね。今回違うのは歌かな。頑張りました。俺と後藤さんと岩田さんが」
後藤「前作くらいから歌をちゃんとやろうっていうのはあったんだけどね。演奏がガーッてなってても歌はちゃんとあるっていう。それは『スーサイドソルジャーマン26』(09年にcosmicnoteよりリリースされたミニアルバム)でも思ったし。歌があるのに、結構適当にやってるなっていう。もうちょっと"ちゃんと歌えや"と思ってたので。ダウナーと一緒にやるなら、しっかりと猪股に歌って欲しいっていうのは思ってましたね。そうしたらもっといいバンドだと思われるだろうし、もっと自分たちが思ってもないような人が聴いていいって思う音楽になるんじゃないかなって。例えば日本語ロックを中心に聴いてる人とかも。そういうところにいいって言われつつ、ライヴハウスでパンクバンドと一緒にやるようなバンドになったら面白いし。つまり、基本的に関わりたいと思ったキッカケは、"音源が全然ちゃんとしてねぇな"って思ったからです」
星野「そこ」
後藤「ライブとかいいのにな、もったいないな、どうしたいのかなって。もういいキャリアっていうか、横須賀では猪股さん!とか言われていい気になってるクセに。"ちゃんとした音源作っておくべきじゃないの? "って」
――確かに、ダウナーの立ち位置って私も面白いと思います。何処にでも行けるというか。
後藤「変だよね、ダウナーって」
猪股「そうですね。逆に何処にも行けないですけどね。でも、何かやってやりてぇなっていうのはずっとあって。メロコアともやるし、ハードコアともやるし、幅広いバンドと対バンしてるバンドだと思うんで」
後藤「あと、ちゃんと血にJ-POPがあるんだよ」
猪股「あるね」
後藤「J-POPはクソだって言い切ってるバンドじゃあないから。そういうところがユニークなんじゃない」
猪股「そうだね。俺、aikoとか好きだもんね」
後藤「そうでしょ。俺もaiko好きだもん。悪口が見当たらない。そういうのが面白いんじゃないかな」
――J-POPへの反骨精神でパンクやロックをやってるんじゃないっていうか。
猪股「そうですね。パンクに向けては反骨精神があるんですよ」
後藤「逆に? 」
猪股「そう」
――歌詞でも、パンクを愛してるのか憎んでいるのかわからないような感情が入り乱れてますよね。
猪股「そうですね。嫌いだけど好き、みたいな」
後藤「大好きなんだと思うけどね」
猪股「でも、好きって言いたくない。みんなそういうふうに思ってるんじゃないかなぁ、わかんないけど」
後藤「歌詞、面白いよね」
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