INTERVIEW
後藤「そうですよね。話戻しますけど......っていうか全部繋がってると思うんですよ。その、今の時代の潔癖性は。多様性を認めないっていうか。それが変わっていけばいいですよね、音楽もそうだし、支援の活動もそうだし、社会とか政治への向き合い方もそうだし。なんか、みんな同じルールで同じことやんなきゃいけないっていうのが嫌で」
TOSHI-LOW「もともと嫌いだから、そんなの。みんなが右行けば左行くほうだから。初めっからそんなルールなんて信用してない」
後藤「そのルールの脆さもね、震災を経て明確になってきてる気がするんですけど」
―言い方悪いかもしれないけど、チャンスですよね。
後藤「うん、今世の中変わんないと変わんない。こんなに凄いことが、原発も震災も含めて2つも同時に起こってしまって。"でもまぁ、まぁまぁ、今まで通りでやっていきましょう"ってなるんだったら、もうダメだと思っちゃう」
TOSHI-LOW「原発もさ、俺なんか思うのは、エネルギーシフトするだけで、どんだけの企業がそこに参入できるかっていう。それでどう経済が動くのか考えただけでも、面白いチャンスではあるじゃない。電力が足りる足りない、原発が是か非かって言う前に、そのこと自体はすごいチャンスで。今回のことがなかったら参入の機会すらないわけじゃん。そうやって考えただけで面白いチャンスなのに、なんでみんな潰そう潰そうとするんだろう。それがわかんない。"原発なくすの無理だろう"って最初に言っちゃうのって、"音楽には何もできません"って白旗宣言するのと一緒。違うんだって、冷静に考えたらこんなチャンスはなくて。今までずっとあったもの、当たり前だと思ってたものがチャラになるって凄いよね。昨日までの価値観が変えられるっていうのはさ」
後藤「そうですよね」
TOSHI-LOW「昨日までの価値観が素晴らしいものなんだったらいいよ? 日本が江戸の末期ぐらい豊かで、100万人の人口に対して100人ちょっとぐらいしか警察がいなかった。なのに殺人もなく鍵をかけてる家もないっていう、そんな価値観があったなら変える必要もないと思うんだけど。でもまったく真逆じゃない。隣近所も知らないし信用できないし。そんなふうになってる世の中の、何を継続したいのかが俺よくわかんない」
後藤「そう。変えていこうっていう気持ちのなさをまず変えたいし、みんなでもっと前向きな、ポジティブな未来っていうのを考えていきたいですよね」
―わかりました。最後にTOSHI-LOWくん、この震災を経て自分の音楽は変わったと思います?
TOSHI-LOW「いや、歌うことは変わんないよ。歌いたいことは同じだから」
―ただ、最近はライブで自然にMCをするようになって。表現者として何か大きな変化があったんだなって思ったけど。
TOSHI-LOW「あの、なんで俺がずっとMCもしないで、わざと誤解されるようなことやってたかって、たぶん批判とかを受けることで自分のエネルギーを作ってたんだと思うの。もともと俺、こんなバンドで食っていけること自体に違和感があって。あと友達とか何人も死んでるけど、なんであいつが死んで俺が生き残ってるんだっていう罪悪感もあったし。そういう苛立ちとかパワーが10代とか20代前半はものすごいあって、みんな全員ファック! 自分さえファック! みたいな」
後藤「ふふふ。ありますよね、わかります」
TOSHI-LOW「そういうのが俺は特に強かったと思うし、そうやって怒り狂ってバンドやってたけど、でも、その謎の力みたいなのって気づけば薄れていくんだよね。で、ふと気づけばAIR JAMっていうブームの中にいて、千葉マリンスタジアムでやっててさ。やっぱり2000年のあれは頂点じゃん。でもあのステージに立ちながら、俺が泣いたり怒り狂ったりしながらやってきたことのゴールが、3万人集めてでっかい花火打ち上げてもらって、みんなからカッコいいです、って言われることなのか? って考えて。もう絶対違うっていう違和感を感じたの」
後藤「傍から見ててもBRAHMAN、居心地悪そうでしたよね。AIR JAMの中でも」
TOSHI-LOW「うん。で、それ以降、2001年からは敢えてアンダーグラウンドというか、売れてチヤホヤされるっていう場所から遠ざかることで自分の精神を保ってたんだと思う。たとえば中国で石投げられたりして、それを乗り越えることでバンドを続けてきたというか。MCもしないしプライベートは見せないし、それで"あいつはカッコつけてる"とか批判されることも自分の中でエネルギーになってて。要は仮想敵だよね。それを作らないとバンドを続けていけなかったっちゅうか。でもそうやってブレながらも10年やってて......今こうやって震災あって、それでも人前でライブが続けられてさ。あぁ、やってて良かった、って強く思った。続けてきて良かった。本当にありがたいなと思ったし」
後藤「うん、今のTOSHI-LOWさん、自然ですよね。OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDの新しいの聴かせてもらいましたけど、なんか包容力が全然違う。音楽がやってる人に近いっていうか、すごい人間っぽい感じがしましたね」
TOSHI-LOW「うん。でも......人間っていうワードが出たから最後に言うけどさ、震災以降の判断基準として、「人間」、っていうものを基準にもっかい考えればいいんじゃないかなって俺は思うの。別に買い占めしてもいいし分け与えてもいいけど、そのどっちが人間っぽいと思いますか? っていう。エネルギーの問題でも、こういうものとこういうものがあって、どっちがより人間らしいと思いますか? 経済だってそうでしょ。何億かき集めて幸せになりたいって言う人と、停電で暗い部屋だけど久しぶりに家族揃ってご飯食べられたっていう人。どっちが人間っぽいと思いますか? そういう価値基準で俺はいいと思う。で、どっちを選ぶかは自由。それこそ正しいのはどっちだって言い出すと、基準なんてありすぎるじゃない。正しい情報を探すことにみんな躍起になってるけど、逆に言ったら本当に正しい情報なんてないよ。だから、これからどうすればいいんだろうって迷ってる人たちは、どっちが人間らしいのか、それを自分に問いかければ、答えは出やすいんじゃないかな」
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TOSHI-LOW -PROFILE-
BRAHMAN/OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのボーカル。オリジナル作としては、約3年半ぶりとなるBRAHMANのニュー・シングル『霹靂』を9/7(水)にリリース。同作を携えた『2011 TOUR 「霹靂」』を10/8(土)沖縄ミュージックタウン音市場からスタートさせる。 |
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