INTERVIEW
TOSHI-LOW「さっき、若い世代が案外否定的だっていう話があったじゃない? あの子たちの論調ってその大きな力に近い感じがする。"え、そんな決まってること破っていいんですか?"みたいな。"それは許可取ったんですか?"って言われても、許可ぁ? 市役所ごと鉄骨になってるぞって話じゃん(笑)。なんか大きなルールとか常識に縛られてるよね。縛られてるっていうか守られてるっていうか。そういう人たちは、なんでそのルールができたのかも考えてないから、破るっていうことも見つけ出せない」
後藤「ルール愛、みたいなのありますよね。そんなにルール好きなの? って言いたくなる。なんなんですかね、あれね。突然学級委員みたいなこと言い出すんですよね」
TOSHI-LOW「そんで普段は黙ってんだよね。確かにポイ捨てはいけませんと。でもなんでシルバーシートに座っちゃう人には注意しないの? って。みんな黙ってるくせにうるさいっていうか」
後藤「世間全体が潔癖ですよね。あと人の間違いが許せない、みたいな。それで僕の好きな大相撲もあんなことになっちゃって」
TOSHI-LOW「え、大相撲好きなの? 閣下みたいな?」
後藤「いや、閣下ほどマニアじゃないけど、普通に見に行くのが好きなんですよ。あの浮世離れしてる空間が好きで。昼から酒飲みながらオジちゃんとかオバちゃんが見てて、どんどん酔っ払ってく感じもよくて。変な物語の中にいるような、ちょっとフィクションっぽいノリになっていくんですよ。僕からすると、なんでこれにスポーツ感を求めてるんだろうって思う。別にこれ、ここに来ただけで面白いし」
TOSHI-LOW「力士で好きなのは?」
後藤「白鵬好きですね。白鵬は昔から応援してる」
TOSHI-LOW「白鵬いいよね。ちゃんとしてる。......でも震災ん時、全然役に立たなかったよね、相撲取り。一番初めに行くべきじゃないかと思うけど。みんな喜ぶじゃん、お爺ちゃんから子供まで」
後藤「ほんとそうっすね。技能審査場所とかやるくらいなら、ちゃんこ持って行けばいいのに。力あるから撤去もできるじゃないですか」
TOSHI-LOW「あの人達も若い頃からすごい教育され続けてるじゃん。タニマチから払ってもらって、ごっつぁんです、っていう世界。そこでは自分が何かを改革したり、何かを能動的に変えるっていう力を奪われ続けてるんだよね。なんか会長がいて、会長が言ったらそうなんですと。たとえ違うと思っても、大相撲はこうなんだよ、って教え込まれてさ。それがもしかしたら"八百長はこうやるんだよ"って話かもしれなくて、それがルールになってるんだよね。嫌なルールだけど、それを疑う力、自浄作用する力を奪われてきた。それって本当に嫌な意味での教育っていう気がする。でも国とか大きい力になればなるほど、考える力を奪うっていうやり方を選ぶんだよね。それは自分が批判されたくないから」
後藤「企業は従順な奴らを求めて、使いやすい戦士を作ってるわけですよね。この国のシステムってほんと凄くて。優秀な奴が東大に行って結局官僚になって、本当に勉強のできる奴らが動かしてる国がこれなのか、って」
TOSHI-LOW「うん。勉強できるってことと、本質的にいいってことは本当に別なんだっていう、簡単な結論なんだけどね」
後藤「そうそう。演算速度が早い奴と実際に動かせる奴は違うんですよね。営業すっごい上手だけどバカ、とかいますもんね。モノを渡したらどこでも売ってきちゃうけど、勉強はとにかくできないとか」
TOSHI-LOW「いるよ。俺の先輩でもパナソニックの偉い課長になった人がいて、でも現場ではジミーちゃんって呼ばれてて。その人じゃなきゃ嫌だっていう職人さんが何百人もいる。でも企画書とかそういうの書けないの(笑)。あと試験とかも落ちるから今より偉くなれないんだけど、茨城で何十億を動かしてるっていう。そういうの見ると素晴らしいなって思うよね」
後藤「人の能力ってそうですよね」
TOSHI-LOW「もっといろんな意味で能力が評価されるべきで。音楽でも感じない? いつの間にかさ、ピッチが外れないことやリズムが正確なことが求められてきて。バンドの本質的な部分、オリジナリティとか、そいつのやりたいこと、っていうのがだんだん消えていく気がして。それは聴いてるオーディエンス側もそうなんだよね」
後藤「みんな、上手い下手を言いますよね。ピッチとかすごい潔癖」
TOSHI-LOW「あそこの歌がちょっとズレてます......だからなんだ? って話だよ」
―そういえば私「ブッチャーズ(bloodthirsty butchers)って歌下手じゃないですか?」って言われて絶句したことがあるな。それが何?あなたどこを聴いてるの? っていう。
TOSHI-LOW「それって......梅干って酸っぱすぎないですか? みたいな話だよね、俺らからしたら(笑)。じゃあお前、あの歌にあのコードを当てることができんのか? って聞きたいよね。ヨウちゃん(吉村秀樹)のあのギターのさ、あのコードにどれだけの人が影響されてきたかっていう話で。コードも弾くのは簡単だよ、手の形覚えりゃいいんだから。でもあの歌にあのコード当てる、その最初をやる人間がどれだけ勇気があってどれだけ大変だったか。そこにオリジナリティがあるわけじゃん」
後藤「うん、リズムとかも、あのヨレがたまらないっていうの多いですもんね。結局上手いとか下手とか気にしてるうちに、オリジナリティって消えていきますよね。なんか音像とか似てきちゃう」
TOSHI-LOW「結局プロトゥールスで直せばボーカルも簡単じゃん。それで本当にいいんだったらね。だからアレじゃない? もう韓国みたいに口パク禁止法を作ってさぁ。それで全フェス見たら自分たちが信じてたものがどのくらいかっちゅうのがわかるよ。あとイヤモニもダメだね。あれ片っぽだけ塞ぐでしょ、障害起きるんだって」
後藤「やるなら両方やれって言われますね。僕もイヤモニ止めたんですよ。一回試したけど......これは自分の好きな音楽とは違うっていう気がして」
TOSHI-LOW「違うよ。だって耳塞いじゃったらオーディエンスの声とか空気感はどうやって感じるの? 目ぇつぶってんのと一緒じゃん」
後藤「そう、アンプが背中で鳴ってんのもわかんないし、コミュニケーション取れなくなっちゃう」
TOSHI-LOW「そこを遮断してまで、上手く歌う必要があるのかと俺は思っていて。まぁ俺が......下手が言っても説得力ないんだけど(笑)。でもなんかさ、見てるものが違うんだなって感じるよね。俺とか、もうベロベロで歌えないシェーン(ポーグス)を泣いて見てんだよ? その人がいるっていうだけで。存在感がもう凄くて。そうなると音楽なんか二の次になっちゃう」
後藤「酔っ払って立てないのを見れたのが良し、っていう」
TOSHI-LOW「それで涙ぐむ。涙ぐむっていうか完全に涙するからね(笑)。フジロックのホワイトでHR(バッド・ブレインズ)が立っただけで泣いてるから。クララかHRかっていう話だよ、マジで(笑)。もはや......何見てんだろうね? でもそんくらい面白いんだよ、音楽って。上手い下手で判断する聴き方は否定しないけど、音楽とかバンドが持つ面白さの何割かしか聴いてないんじゃないかなって思う。2〜3割でしょ、CDで出せる程度の面白さ」
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TOSHI-LOW -PROFILE-
BRAHMAN/OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのボーカル。オリジナル作としては、約3年半ぶりとなるBRAHMANのニュー・シングル『霹靂』を9/7(水)にリリース。同作を携えた『2011 TOUR 「霹靂」』を10/8(土)沖縄ミュージックタウン音市場からスタートさせる。 |
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