INTERVIEW
"ミュージシャンとして、ひとりの人間として、今できることは?"をテーマに行ったTOSHI-LOWさんと後藤の対談。先に公開した対談の前半に、たくさんの方々から賛否両論のご意見をいただきありがとうございました。読んでくださったみなさんが、少しでも何かを考えるきっかけになったのなら・・・本望です。 前半に続く、後半戦をお届けしますー。(取材・文:石井恵梨子 撮影:三吉ツカサ)
後藤正文「僕は今、とにかく前向きに何かしてる人っていうのに惹かれ始めてるんですよね。その前向きな感覚に同調したいというか。やり方とかイデオロギーの話をすると、助けたい人でも微妙にズレていって喧嘩になったりしますよね。それがすごくつまらない。結局みんな世の中良くしたいとか、変えたいとかいう気持ちがあって、だったらそれだけでいいじゃねぇかって」
TOSHI-LOW「論争すると本質がどんどんズレちゃうよね。助けたいんだったら、そのゴールをあっち側に、要は自分ではない違う意識を持った人たちのもとに置くべきなのに、結局は自分の意識ばっかりが強い。って、俺みたいに自分ばっかりの人間が言うのもどうかと思いますけれど、俺が言うくらいだから日本も末期状態なんだと思うよ」
後藤「そんなことないですけど(笑)」
TOSHI-LOW「でも、何かをする時って自分を捨てたり消したりすることが必要なのね。自己犠牲じゃないけど、自分のことなんかどうでもいいから今こうしませんか? って言うことが今必要で。自分の家で一食抜いて、その食事を人にあげませんか? って言うことができれば、そういう人が増えれば、単純に復興は早くなる。すごいシンプルなの」
後藤「それって実際に被災地を見てきた人の強みですよね。最初は僕もオロオロしながら曲作って、呼びかけないと、お金を集めないとって思ってたけど。でもお金って分散された時の弱さがありますよね。何億の義援金が数千円になるみたいな。だったら1500円のパジャマを送って、それを毎晩着られることのほうが重要じゃないかって。だから冷静になった今は、物資を送ることが一番なんだろうなって思う。結局自分のやれることやろうとして、田舎からお米もらってきたりとか。でも、そうやって体使ってやったことってデカいんすよ。原発も行かずにネットで調べてるのは簡単だけど、実際行ってみたらすげぇ場所にあるんですよね。なんでこんなところにこんなもん作っちゃったんだろう? とか。それは体動かさないとわかんない」
TOSHI-LOW「うん。まぁ俺はネット上で思想論戦するより現場に行っちまったほうが早ぇな、って思うタイプだから。それですぐ被災地行ったんだけど」
後藤「実際に体でやるっていうのが一番自分でも実感できる。それはいろんな人を見習いながらわかったことですけどね。TOSHI-LOWさんとかKOさん(SLANG/札幌の重鎮ハードコア・バンド)とか」
TOSHI-LOW「俺はバンドを通してもともと知ってたからね。現場にいることの気持ちよさ。嫌んなるぐらい現場主義じゃん、もともと」
―ハードコアは現場が命だから、今回もハードコアの人の動きが一番早かった気がしますね。KOさんにしろ、RACCOさん(Idol Punch/岡山のファストコア・バンド)にしろ。
TOSHI-LOW「ハードコアの人とかバイカーの人だよね。ハーレーの軍団とか一番最初に行ってたもん。でもRACCOはね、俺が怒ったの。あいつ最初、岡山で物資集めてそのまま俺んとこに送りつけようとしてたの。"集めたんだけどどこ送ればいい?"みたいに電話きて、それで俺"ナメんなよ、てめぇ"って怒鳴って。何のためにどこに送るかもわかんねぇで物資集めるってどういうことだ? 届けたい人の顔がわかる、その手段なんていくらでもあるのに、それもわかんねぇで適当にやってんじゃねぇよ、って。そしたら"じゃあ行く。俺もやっぱ行くわ"ってなって。それで物資を持っていったんだけど、そこでRACCOが偉かったのは、自分が一番得意なことを全部連れていったこと。要はハンバーガー持って行ったことが偉くて。だってさ、自分の強みを活かせないと結局続かないから」
後藤「あぁ、そうですよね」
TOSHI-LOW「しかも一回持っていったら喜ばれるんだよね。あんな社会のクズみたいな奴がさぁ(笑)」
後藤「ひどい(笑)」
TOSHI-LOW「言ったらハーレー軍団とかも社会の「厄介者」でしょ。世の中の端っこにいてさ。そんなレッテルの人でも、いざ子供から婆ちゃんにまで喜ばれたら嬉しいんだって。音楽だって自分の自己満足だ、マスターベーションだと思ってやってるけど、なんだかんだ、"ほんとに大好きで、救われたんです"みたいなこと言われたら.........嬉しいじゃん?」
後藤「そうですよね(笑)」
TOSHI-LOW「はっきり言うよ! 嬉しいんだよ。そんなの関係ないですよって体でいますよ? いますけれども、我々ミュージシャンなんちゅうのは、その声が嬉しいもんですよ」
後藤「そうですよね、ほんとそう」
TOSHI-LOW「そうやって素直に喜ぶべきところを喜んでいけば、本来助けることにおいて混乱なんかしないと思う。もし物資を持ってって違う顔されたら、あ、違ったんだなって思って引っ込めてさ、また違うところに持っていけばいい。余った物資は別のところに回すとか、それだけの話だから。それは相手の顔見ればわかるんだよね。相手の顔も見ずに、自分がどうすべきかってウダウダ言うばっかりで、誰に? っていう話を初めの段階でしなかった。だから俺、けっこう早い段階から"被災地行ったほうがいいよ?"って言ってたんだけど、みんな自粛だ不謹慎だってムードで、"行くなんてどうかと思います"とか意見も言われたの。でも行って実際に聞いてきちゃえば早いのよ。何が必要ですかって注文聞いてきちゃえばいい」
後藤「カッコいいですよね。俺とか普段なんにもできない奴代表っていうか、こういうことになっちゃうと、もう何が自分の得意なことかがわかんない。で、考えてもわかんないから得意な人に頼ろうと思ったんですよ。たとえば、米を集めるっていう約束は取り付けたけど、よくよく聞けば米はもう余り始めてる。場所によってはもういらないっていう。それでどうしようと思ったら、たまたまKOさんが米募集のツイートしてて。面識ないし教えてくれないかもしんないけど、連絡してみたらすぐ助けてくれて。」
TOSHI-LOW「面識なくても関係ないんじゃない? 今、KOとゴッチってツイッター上では完全に繋がってるように見えるよ。あっちも信頼してる感じがする」
後藤「僕も、KOさんは絶対大丈夫っていう直感みたいなものがあって」
TOSHI-LOW「そのうち兄弟分だから同じガラ(=刺青)を入れろ、って言い出すよ(笑)。首までびっちりガラ入って」
後藤「それで眼鏡ってね、僕よけい怖いですよね(笑)」
TOSHI-LOW「もう眼鏡も刺青にしちゃえばいいじゃん(笑)」
後藤「眼鏡取っても眼鏡っていう(笑)」
TOSHI-LOW「でもそんなとこまで繋がってるっていうの、いいよね。最初は動き始めた人たち、みんな個々だったの。俺も変なプライドあって、俺は俺で動く、俺たちは南からやるし、SLANG KOは北からやれよ、みたいな気持ちもあって。だけど続けていくなかで、物資が余ったらどうしよう、じゃあKOのところに送ればいい、KOのとこで足りないものは俺も集めるっていう感じに変わってきて。そのほうが気持ちが良かったし、自分も無駄にならない。支援ってさ、トップバッターで現場にいく人だけが支援じゃなくて、そのバトンを繋ぐ人もすごく大事。要は間接支援もそうだし、何もできないって言う人だってツイッター上で応援してくれるだけでも最初はいいと思う」
後藤「うん、そうですよね」
TOSHI-LOW「"行ってください!"って。それだけで元気出るよね」
後藤「集めて持ってってくれる人たちの強さってあるけど、僕は車も運転できないし、それができない。だったら俺は、たとえば情報の拡散とか、そういうとこで役に立とうかなとか」
TOSHI-LOW「うん、すごい役に立ってる。SLANG KOを知ってる人がこの数ヵ月でどんだけ増えたかって考えたら......すごいことだよね。あんな、ススキノのヤクザも避けて通るようなアンダーグラウンドな男なのに(笑)」
後藤「だからもう紹介しまくって、感化される人を一人でも増やそうっていうか。それで今はまた別の繋がりから、違うネットワーク作っちゃってたりしてますけど」
TOSHI-LOW「あ、それはいいの。すごいいいこと。だって俺たちが見落としてるとこは絶対あるから、いろんな場所からいろんな手が入ればいい。100人あったら100通りのやり方あっていいと思ってて。自分のボランティアが正しいとか、このやり方が正しいなんて絶対ないもん。その人から見える位置から支援するっていうことが大事で。それを一本化しようとしてイデオロギーを作っちゃうボランティアの人とか、逆にダメだよね」
後藤「デカい力にしちゃおうとするっていう。それってボランティアに限らず、いろんなとこで感じられる話ですよね。デカい一個の力が一番気が利かない」
TOSHI-LOW -PROFILE-
BRAHMAN/OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのボーカル。オリジナル作としては、約3年半ぶりとなるBRAHMANのニュー・シングル『霹靂』を9/7(水)にリリース。同作を携えた『2011 TOUR 「霹靂」』を10/8(土)沖縄ミュージックタウン音市場からスタートさせる。 |
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
夢の跡発売中!! / TFCC-86353 / ¥1,600(tax in) / トイズファクトリー |
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